ギルバート・グレイプは、1993年公開のアメリカ合衆国の映画。ピーター・ヘッジスの同名小説の映画化。名匠ラッセ・ハルストレムが家族の絆を描く爽やかな感動作。ある田舎を舞台に家族愛を描いた、ジョニー・デップ、ジュリエット・ルイス、レオナルド・ディカプリオ共演で贈る感動の人間ドラマ。レオナルド・ディカプリオがアカデミー賞にノミネートされた。
ギルバート・グレイプ 映画批評・評価・考察
ギルバート・グレイプ(原題:What’s Eating Gilbert Grape)
脚本:35点
演技・演出:17点
撮影・美術:15点
編集:7点
音響・音楽:7点
合計81点
ジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオ、ジュリエット・ルイスと唯一無二の若手俳優が揃って出演している映画になった作品でもありますが、ギルバート(ジョニー・デップ)の友人役も意外と豪華だったりしますので要注目です。
脚本の素晴らしさとディカプリオが象徴している若い世代の聡明な演技力に心が動かされます。ジュリエット・ルイスのセリフにある”カマキリ”の話がこの作品のテーマにも感じ取れるんですが、主人公ギルバートを取り巻く環境にも例えられるものです。
この作品にリアリティをもたらしたのは、ディカプリオだけでなく、母親を演じたダーレン・ケイツの存在が大きいと思います。彼女はCGや特撮でもなく、等身大の自分を”まんま”演じています。
世代を問わない普遍的なヒューマンドラマでお薦めです。
テキサス州で生まれ育ったダーレンは、12歳の時に両親が離婚したことをきっかけに、食べることに癒やしを求めるようになりました。この頃の肥満は深刻ではなく、14歳の時に出会ったロバートと15歳で結婚し、18歳で長女シェリを出産、その後2人の子宝に恵まれます。しかし、夫のロバートが海軍に所属していたために各地を転々としたり、ロバートが海外に滞在中は1人で子育てをしたりしているうちに、寂しさや不安から食べ物に頼るようになって肥満化が進行していきました。30代のときには体重が185kgを超えており、1981年には減量のために胃を縮める手術を受けて、45kgのダイエットに成功したものの、抗うつ剤などを服用していたにも関わらず、寂しさや引きこもりがちな生活、慢性的なうつ病によって、体重は250kgにまで増量してしまいます。この頃にはベッドに寝たきりになり、外出が必要な際には車イスに乗っていたようです。女優デビューするきっかけとなったのは、トーク番組の『Too Heavy to Leave Their House (重すぎて家から出られない)』というコーナーへの出演し、長女のシェリとインタビューに答え、肥満や病気との闘い、家族への想いを話し、観客や視聴者の涙を誘いました。この放送を見た脚本家ピーター・ヘッジス氏が女優経験のないダーレンの才能を見出し、映画『ギルバート・グレイプ』のオーディションに呼んだことから、母親役でデビューすることになりました。
ギルバート・グレイプ あらすじ(ネタバレ)
ギルバートは、食料品店で働きながら重い知的障害を持つ弟アーニー、夫の自殺から7年間も家から出たことがない肥満で過食症の母、そして2人の姉妹たちとの生活を支える。アイオワ州の小さな町を生まれてから一度も出たことがないギルバートは、家族を置いて自分だけ町を出るわけにも行かず悶々としながら日々を送る。次の日曜日に行うアーニーの誕生日パーティーの役割を家族で話し合うがゴタゴタしてしまいギルバートも気が滅入る。ギルバートは食料店の馴染み客の人妻と大人の“火遊び”をしたり、ボニーの肥満体型を見たがる子供を手伝い窓から見せて心のバランスを保とうとする。
ある時ギルバートが目を離したすきにアーニーが町の給水塔によじ登ってしまい、以前にも同じことがあったため兄が警察から警告を受ける。そんな時ギルバートは、旅の途中でトレーラーが故障し、ギルバートの町にしばらくとどまることになった少女・ベッキーと出会う。ギルバートはある時はベッキーと数時間に渡って様々な会話をしたり、ある時はアーニーと3人で遊ぶなどして交流を深めていく。ベッキーから願い事を聞かれたギルバートは「僕は、いい人になりたい」と本音で語り、その後人妻との関係にピリオドを打つ。
そんな中アーニーが再び給水塔に登って騒動を起こして留置場に入れられたため、彼を助けるため家族と共に7年ぶりに家から出るボニー。無事アーニーを連れて帰ることになったが、太ったボニーの姿を見に留置場前に集まった人々の失笑と共に好奇の目に晒されてしまう。このことは家族全員がショックを受け、ボニーは自宅の庭で開かれる誕生日パーティーについて、招待客にも顔を出さず室内で過ごすと伝える。
誕生日パーティーの前夜、ギルバートが買ってきた誕生日ケーキをアーニーが勝手につまみ食いしたため、カッとなってつい弟に手をあげてしまう。その後ベッキーと会って冷静さを取り戻したギルバートは父の死について打ち明け、2人で体を寄せ合い朝を迎える。誕生日パーティーが行われる中アーニーと和解したギルバートは、1人で2階にいた母にも謝罪すると逆に不甲斐ない母になったことを謝罪される。その後ギルバートは、この日で町を去るベッキーにたった数日間だけだったが一緒に過ごせたことを感謝し、アーニーと2人で彼女を送り出す。
ギルバート・グレイプ スタッフ
監督:ラッセ・ハルストレム
脚本:ピーター・ヘッジス
製作:メイア・テペル,バーティル・オールソン,デヴィッド・マタロン
製作総指揮:アラン・C・ブロンクィスト
音楽:アラン・パーカー,ビョルン・イスファルト
撮影:スヴェン・ニクヴィスト
編集:アンドリュー・モンドシェイン
製作会社:J&Mエンタテインメント
配給:ブエナビスタ,シネセゾン
ギルバート・グレイプ キャスト
ギルバート・グレイプ – ジョニー・デップ
グレイプ家の次男。ただし、長男は独立済みで父親は亡くなっているため、実質上は一家の大黒柱。普段は小さな食料品店であるラムソンの店で働く。家族からは頼りにされており、特に障がいを持つアーニーとは多くの時間を共に過ごし、面倒を見ている。家族の世話におわれる日々に自分の将来の夢を考える余裕もなく、精神的肉体的に家や小さな町に縛られる生活を送る。
アーニー・グレイプ – レオナルド・ディカプリオ
ギルバートの弟。知的障害がある少年で、作中で18歳を迎える。家のそばの大きな木などの高い所に登るのが好き。また、隠れんぼが好きでいつも木の上に登っては、家族が自身を探す様子を楽しんでいる。バッタを数匹飼っている。ちなみに障害の影響なのかは不明だが、時々自分が耳にして気に入った言葉を何度も繰り返すことがある。水が苦手で川などには入らないとのこと。
ベッキー – ジュリエット・ルイス
個性的な価値観を持った若い女性。両親が幼い頃に離婚し、2人の間を行ったり来たりあちこちの土地に引っ越しを繰り返しながら育てられる。出会ったアーニーともすぐに打ち解け、ギルバートに新しい風を吹きこむような存在。
ギルバートの家族
ボニー・グレイプ – ダーレン・ケイツ
ギルバートの母。17年前に最愛の夫を亡くしたショックで食べ続けてかなりの肥満体型になり、その後7年前から家から一歩も出ない生活をしている。普段は暗く大人しい性格だが、時々感情が高ぶってしまうことがある。過去に最愛の夫が突然亡くなったことが原因で、このような心身状態になったことを本人も悩んでいる。ギルバートによると若い頃は、町一番の美人だったとのこと。
エイミー・グレイプ – ローラ・ハリントン
ギルバートの姉。心身ともに疲れている母親の代わりに日常の家事を担っている。以前は小学校の食堂に勤務していたため料理がそれなりに得意。
エレン・グレイプ – メアリー・ケイト・シェルハート
ギルバートの妹。高校1年生。反抗期でイライラしていることが多くちょっとしたことで突っかかったりするなど言動が荒い。所属するブラスバンドではトランペットを担当。
ギルバートの父
既に故人で、17年前に自宅の地下室で自殺している。ギルバートによると生前、大人しい性格であまり感情を表に出すタイプではなかったとのこと。亡くなった時も遺書はなく、悩んでいる素振りもなかったため家族にとって突然の別れとなっている。
タッカー – ジョン・C・ライリー
ギルバートの友人。電化製品や床などを直す仕事を細々とやっている。『バーガーバーン』というハンバーガー屋がお気に入りで、町に新しく店ができると知って求人募集に応募する。
ボビー・マクバーニー – クリスピン・グローヴァー
ギルバートの友人。葬儀屋らしき仕事をしている。仕事柄死体に触れる機会が多く、ギルバートとタッカーとの会話も死体に関する話をする。プライベートでも霊柩車に乗る。
ベティ・カーヴァー – メアリー・スティーンバージェン
カーヴァーの妻。ラムソンの店からギルバートに買い物の配達を依頼し、家に訪れた時にキスなどの浮気行為をする。小学生ぐらいの男の子2人の母親。
ケン・カーヴァー – ケヴィン・タイ
カーヴァー保険会社を経営している。ベティとギルバートが不倫していることを知っているかは不明。ギルバートに電話で話がしたいと申し出る。
ラムソン
ギルバートの雇い主。妻と2人で小さな食料品店を経営している。最近町に大きなスーパーマーケットができて客が減ったため、ライバル視している。ちなみにギルバートが働いている間は、アーニーも店で過ごしているため彼とも顔見知り。
ベッキーの祖母 – ペネロープ・ブランニング
自身が運転するトレーラー(キャンピングカーのように車内で寝泊まりができる)でベッキーに誘われて放浪の旅をする。ギルバートが住む町を通りかかった時に車が故障したため、車が直るまでの数日間をこの町で過ごす。