カールじいさんの空飛ぶ家は、2009年公開のアメリカ合衆国の映画。妻に先立たれた老人が、風船で家ごと大空へ冒険に旅立つというファンタジックな物語を通じて、愛と人生の素晴らしさを伝える。世界のCGアニメーションをリードしてきたピクサーによる10本目の長編で、初の3D作品。監督は「ファインディング・ニモ」のピート・ドクター。同時上映は短編アニメーション『晴れ ときどき くもり』(原題: Partly Cloudy)。TVシリーズでもカール役を担当するエドワード・アズナーは2021年8月29日に亡くなったためこれが遺作となった。
カールじいさんの空飛ぶ家 映画批評・評価・考察
カールじいさんの空飛ぶ家(原題: Up)
脚本:37点
演技・演出:18点
撮影・美術:18点
編集:9点
音響・音楽:9点
合計91点
ディズニー/ピクサーが2009年に放ち、第82回アカデミー賞で長編アニメ映画賞に輝いた秀作。妻を失ったカールじいさんは気球のような家に乗って、少年と冒険の旅へ。
ディズニー/ピクサーの「ウォーリー」に続く長編。妻に先立たれたカールじいさんが妻との約束を果たそうと伝説の場所に向かって旅立つ愛の物語であるとともに、子どもがいないカールじいさんが孫のような少年と絆を深める、友情のアドベンチャー。見せ場の冒険がスリリングに展開するのも魅力的で、笑いあり興奮あり感動ありというディズニー/ピクサーらしい傑作となりました。特にカールじいさんと妻エリーの思い出を描く導入部は映画史に残る名場面。ピクサー初のディズニー・デジタル3D作品として劇場公開されました。
今作品はAmazonプライムで見ました。(吹替版はこちら)
カールじいさんの空飛ぶ家 あらすじ(ネタバレ)
10歳のカール・フレドリクセンは、有名な探検家チャールズ・マンツに憧れています。マンツ氏は南米パラダイスの滝から巨大な鳥の偽骨格を提示したとして告発された後、生きた標本を持ち帰って汚名を晴らすと誓って滝に戻った。カールはマンツのファン仲間であるエリーに会い、彼女の「クラブハウス」(近所の廃屋)をパラダイス滝を見下ろす崖の上に移転したいという願望を打ち明ける。大人になって、カールとエリーは結婚し、改装された家に引っ越します。カールは風船のセールスマンとして、エリーは動物園のツアーガイドとして働きます。エリーはその後流産してしまいます。夫婦はパラダイス フォールズへの旅行に備えて貯金を始めることにしましたが、より緊急の必要に応じて貯金を使わなければならなくなることが繰り返しありました。数年が経ち、カールがエリーを驚かせてパラダイス・フォールズのチケットを贈ろうと計画したその日、彼女は体調を崩して入院し、すぐに亡くなってしまう。
しばらくして、カールは現在退職し、70代後半となり、周囲が高層ビルに建て替えられていく中、頑固に家の中で頑張っている。カールが事故で建設作業員に怪我を負わせた後、裁判所は彼を公共の脅威とみなして、福祉施設への移転を命じた。しかし、カールはエリーとの約束を守ることを決意し、家にたくさんのヘリウム風船を取り付けて、パラダイス・フォールズへ飛ぶつもりでした。高齢者支援に対する最後の功績バッジを獲得するためにカールを訪れた8歳の「荒野探検家」ラッセルは、誤って密航してしまう。カールが着陸してラッセルを家に送る前に、激しい嵐が家を南米に飛ばしてしまいます。
家はパラダイス滝の反対側のメサの上にあります。カールとラッセルは、まだ浮いている家に自分たちをつないで、メサを渡って歩き始めます。ラッセルは色とりどりの巨大な飛べない鳥に遭遇し、それをケビンと名付けます。次に、彼らは、思考を英語に翻訳する装置が付いた特別な首輪を着けているゴールデンレトリバーのダグに出会います。カールの反対にもかかわらず、彼は彼らの旅行に加わります。
同じような首輪をつけた猛犬の群れが、カール、ラッセル、ダグを飼い主であるチャールズ・マンツ(現在は高齢)のところへ連れて行きます。彼は彼らを飛行船「スピリット・オブ・アドベンチャー」に招待します。そして鳥の狩猟について話します。カールは、マンツがその鳥を捕まえることに執着し、気が狂い、自分たちのために鳥を探していると疑った無実の旅行者を殺害するところまでになったことに気づきました。ラッセルが骸骨がケビンに似ていることに気づくと、マンツは彼らを泥棒とみなして敵対的になる。犬たちは、ケビンが彼らを救うまで、カール、ラッセル、ダグを追いかけます。追いかけてきた犬の一匹が、逃げるケビンさんの足に噛みつき、ケビンさんは自力で立つことができなくなるほどの怪我を負ってしまいました。ラッセルはカールに、ヒナたちと再会できるようにケビンが家に帰るのを手伝ってほしいと頼み、ケビンも同意するが、マンツが彼女を捕らえてしまう。彼はカールの家の下で火事を起こし、カールは家を救うかケビンのどちらかを選択するよう迫られます。カールは自分の家を選び、ラッセルはひどく動揺する。
カールはエリーの子供時代のスクラップブックを調べ、空白のページの一部に結婚生活の写真と、「冒険」に感謝し、新しい冒険をするよう励ますメモが書かれていることを発見した。元気を取り戻した彼は外に出ると、ラッセルが落ち葉吹き機といくつかの風船を使ってケビンを追って出発するのを見ました。カールは家具や思い出の品を捨てて家を軽くし、再び空を飛べるようにしました。マンツはラッセルを捕らえますが、カールとダグは飛行船に乗り込み、彼とケビンの両方を解放します。マンツが二人を繋留小屋まで追いかけると、カールはチョコレートを使ってケビンを飛行船におびき寄せる。マンツは彼らを追いかけますが、足が風船の紐に引っかかって転落死してしまいます。家は雲の下に隠れて見えなくなる。
カールとラッセルは、マンツの飛行船で家に戻る前に、ケビンと雛たちを再会させます。ラッセルは「高齢者支援」バッジを受け取り、カールはエリーが初めて会ったときにカールに贈ったグレープソーダのボトルキャップをラッセルにプレゼントし、彼はそれを「エリーバッジ」と名付けた。一方、カールは知らないうちに、家はパラダイスの滝の横の崖の上に着地し、エリーとの約束が果たされました。
カールじいさんの空飛ぶ家 スタッフ
監督:ピート・ドクター,ボブ・ピーターソン
脚本:ボブ・ピーターソン,ロニー・デル・カルメン
製作:ジョナス・リベラ
製作総指揮:アンドリュー・スタントン,ジョン・ラセター
音楽:マイケル・ジアッキーノ
編集:ケヴィン・ノルティング
製作会社:ピクサー・アニメーション・スタジオ,ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ
カールじいさんの空飛ぶ家 キャスト
カール・フレドリクセン:エドワード・アズナー:飯塚昭三
主人公。無口で頑固な78歳の老人。冒険好きだった少年時代に同じ冒険好きの少女エリーと出会い、結ばれる。本来は口数が少ないが子供好きの優しい性格でエリーと初めて出会った家を新居にして幸せに暮らしていたが、エリーを病気で亡くすと、エリーとの思い出が詰まった家を守ろうとするあまり頑固な性格になる。最近は足腰が弱くなって来た為、階段は普段電動椅子で昇降し、テニスボールがクッション代わりの4つ足の杖を使っている。偶然工事関係者がポストを壊した事で、これに怒ってその工事関係者を杖で殴り怪我をさせてしまい、裁判で立ち退きの判決を受けるが、これを機にエリーとの約束を果たすため、風船をつけた家と共に旅に出る。当初は妻との約束である目的を果たす事のみに執着し周囲に冷たく当たっていたが、ラッセルと旅をする内に本来の自分を取り戻していく。
チャールズ・F・マンツ:クリストファー・プラマー:大木民夫
30年代に活躍した冒険家で子供時代のカールやエリーが憧れていた存在。現在は94歳。実は本作のディズニー・ヴィランズである。「パラダイスの滝の怪物」とされる怪鳥の骨が偽物と断定されたことで、冒険家協会の協会員資格を剥奪され、名誉挽回のために「怪物を生け捕りにするまで戻らない」と宣言し、南米へ再び旅立ってからは、洞窟に飛行船を置きアジトとし、犬軍団を従えて怪物(ケヴィン)を探し続けていた。長らく捕らえられずにいた怪物に執着しており、さらに過去の出来事から疑心暗鬼になっている。旅の途中のカールと対面し、最初は意気投合するが、誤解により彼らが怪物を手に入れるために南米に来たのだと勘違いした挙句、ケヴィンを手に入れるのに邪魔な彼らを始末しようとまで企む。最終的にはカール達との熾烈な対決の末に飛行船から雲の下に落下する最期を迎える羽目になった。その後、伝説の鳥(ケヴィン)を捕える必要がなくなった為、マンツの犬軍団は解散した。
ラッセル・キム:ジョーダン・ナガイ:立川大樹
好奇心旺盛なボーイスカウトの少年。肥満体型の8歳。仕事にかまけて一度も会話をしたことがない父親と話すべく「お年寄りの手伝いをする」という任務を遂行し、“お年寄りのお手伝いバッジ”の授与式に父を出席させるため、何かできないことはないかとカールに付きまとっていた。父親の再婚相手である義母に心を開けないでいる。カールの旅立ちの際に家に紛れ込み、旅に同行することになる。父親に会う為だけにボーイスカウトのバッジが欲しいだけなのでマナーや実地訓練はほとんど受けていないに等しく、テントの張り方は知らず、位置確認はGPSで済ますだけだったり、野生動物であるケヴィンに平気でチョコレートを与えてしまったり、ペットとして飼いたいと思う等普通の少年とそれほど大差ない。更にロープ昇りが出来ないなど体力や運動能力も良くはない。マンツに捕獲されたケヴィンを救出すべく、自身も数個の風船を付けて手持ち送風機を動力に飛行し、マンツの飛行船に立ち向かう。
ダグ:ボブ・ピーターソン:松本保典
首輪に犬語翻訳機をつけた犬。マンツの犬軍団の一匹で命じられた任務を遂行しようとしていたが、仲間達からは落ちこぼれ扱いされており、常に一匹で行動している。カール達と行動を共にするうちにカールを主人として慕うようになる。大勢いる犬の中で彼だけがデフォルメされて描かれている。短編アニメでカールたちとの出会いまでの物語が描かれており、二人と出会った日が彼の誕生日であることが判明した。
アルファ:ボブ・ピーターソン:大塚芳忠
マンツの犬軍団のリーダーであるドーベルマン。命じられた任務を忠実に遂行する。彼の犬語翻訳機は本来は低めの声だが、故障しておりちょっとしたショックで声が高くなったりしている。ベータやガンマなどの部下の犬達も犬語翻訳機をつけている。彼らマンツの犬たちは戦闘機の操縦をするなど賢い一面もあるが根は普通の犬と同じ習性を持ち、ボールを追いかけたり、「リスがいる」と言われた方向に注意が向いたりする。カール達の対決後、マンツの犬軍団は解散し、エンドロールでは新しい飼い主達と幸せに暮らしている様子。
ケヴィン:ピート・ドクター
マンツが生涯を賭けて捜し求めている伝説の怪鳥。体長12フィート(3m65cm)で、カラフルな羽毛をもつ。足跡の形状と外見からラッセルからはシギだと思われている。ラッセルと出会い、彼が偶然与えたチョコレートが好物となり、人にもなつくようになる。ラッセルを放り投げて遊ぶほど首と脚が強靭で、カールとラッセルを乗せて走れる。ラッセルがオスだと思って名付けたが実は雌で、巣には子供もいる。彼女の巣は入り込むと脱出不可能な石の迷宮の中にある。
ベータ:デルロイ・リンドー:檀臣幸
ガンマ:ジェローム・ランフト:高木渉
トム:ジョン・ラッツェンバーガー:楠見尚己
アナウンサー:デヴィッド・ケイ:垂木勉
エリー(子供時代):エリザベス・ドクター:松元環季
カール(子供時代):ジェレミー・レアリー:吉永拓斗
イディス巡査:ミッキー・マッゴーワン:梅田貴公美
スティーブ:ダニー・マン:小形満
看護士ジョージ:ドナルド・フュリラブ:多田野曜平
看護士AJ:ジェス・ハーネル:朝倉栄介
ストラウチ:ピート・ドクター:滝知史
オメガ:ジュシュ・クーリー:三宅健太