アラバマ物語は、1962年公開のアメリカ合衆国の映画。人種差別が根強く残る1930年代のアメリカ南部で、白人女性への性的暴行容疑で逮捕された黒人青年の事件を担当する弁護士アティカス・フィンチの物語。物語はアティカスが担当した裁判を中心に展開するが、この作品は単なる法廷ドラマに終わらず、子供の視点から見た大人の世界や、周囲の人々に対する純粋な好奇心などをノスタルジックに描いている。1962年12月25日に公開され、大ヒットを記録した。同年度のアカデミー賞では作品賞を含む8部門の候補となり、そのうち主演男優賞、脚色賞、美術賞(白黒部門)の3部門で受賞した。
アラバマ物語 映画批評・評価・考察
アラバマ物語(原題: To Kill a Mockingbird)
名優グレゴリー・ペックがアカデミー主演男優賞に、5度目のノミネートにして初めて輝いた名作。1930年代のアラバマ。あるアフリカ系男性に暴行の容疑がかった裁判で、ペック扮する白人弁護士フィンチが弁護を担当することに。フィンチはアフリカ系に偏見を持つ人々の反感と闘いながら、正義と真実を貫こうとする。映画はそんな父親を見守るフィンチの幼い子どもたちの視点から描かれ、人間のあるべき姿を世に問う、社会派ドラマの秀作。受賞当時47歳のペックは円熟した実力と魅力を絶賛され、名優の評価を不動に。またフィンチの役は2003年、米映画協会によって映画史上のヒーロー第1位に選ばれました。
キャスティングについて
プロデューサーのアラン・J・パクラたちは映画の新鮮味を保つために、主演のグレゴリー・ペックを除き出来るだけ観客に馴染みの薄い俳優を起用することにしました。特に子役は慎重にオーディションが行われ、関係者が候補者を求めてアメリカ南部を駆け回ることになりました。映画のヒロインであるスカウトを演じたメアリー・バダムは映画監督ジョン・バダムの実妹です。バダムは殆ど演技の経験はありませんでしたが、この作品で見せた演技で助演女優賞にノミネートされました。授賞式の時点でバダムは10歳と141日であり、これは1974年にテータム・オニールが10歳と106日で受賞するまでこの分野における最年少ノミネートでした。
“ブー”と呼ばれる不気味な青年を演じたロバート・デュヴァルは、本作品が映画初出演です。
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アラバマ物語 あらすじ(ネタバレ)
1932年、アメリカは不況のドン底だった。アラバマ州メイコムという小さな町に、男やもめの弁護士アティカス(グレゴリー・ペック)は住んでいた。家族は彼と幼い子供たち、息子のジェム(フィリップ・アルフォード)、娘のスカウト(メアリー・バーダム)、それに家事全体を切りもりしている家政婦の4人だった。一家は静かな幸福な日々を送っていた。
近所には狂ったブー・ラドレーが父に監禁されていた。ある日、農夫ボブが、娘が黒人の作男トムに強姦されたと保安官に訴えた。判事は罪を否認するトムの弁護人に、アティカスを指名した。町の人々は黒人を弁護したらただではすまぬと、アティカスに警告した。アティカスは不正と偏見を嫌い、何よりも正義を重んじる男だった。ジェムとスカウトは、気狂いのブーを見ようとラドレー家へ忍び込んだ。しかしブーに発見され逃げ帰った。そのうちにスカウトとジェム宛ての贈物が、ラドレー家の前の木の穴に置かれるようになった。このようにして月日は過ぎていった。
危害を避けるため、ほかの町の留置場に入れられていたトムはメイコムに戻された。いよいよ裁判の当日。アティカスは必死の弁護を行って被告の無罪を主張したが、陪審員は有罪と決定した。アティカスには、控訴審で判決をくつがえす自信があったが、トムが脱走してしまい殺された。トムの家族にこのことを知らせに行った帰り、アティカスはボブに会った。ボブは彼に必ず裁判の仕返しをすると言うのだった。
スカウトの学校で学芸会が催された。その帰りの夜道でジェムとスカウトは、ラドレー家の附近で何者かに襲われた。そこへ突然、第2の人影が現れ、襲った男をつかまえた。襲ったのはやはりボブだった。彼は胸にナイフを刺して死んでいた。2人を助けてくれたのは、ブー・ラドレーだった。ブーの行動は明らかに正当防衛だった。スカウトはブーを連れてきてジェムに合わせ、それから白髪の彼をもとの隠れ場所へと送っていった。ふたたびアティカス一家の平和な生活が始まった。
アラバマ物語 スタッフ
監督:ロバート・マリガン
脚本:ホートン・フート
原作:ハーパー・リー
製作:アラン・J・パクラ
音楽:エルマー・バーンスタイン
撮影:ラッセル・ハーラン
編集:アーロン・ステル
配給:ユニバーサル映画
アラバマ物語 キャスト
アティカス・フィンチ:グレゴリー・ペック
正義感溢れる弁護士。妻に先立たれた後、男手一つで二児を育てる。
スカウト:メアリー・バダム
フィンチ弁護士の娘。本名ジーン・ルイーズ・フィンチ。原作者のハーパー・リーがモデル。
ジェム:フィリップ・アルフォード
フィンチ弁護士の息子。スカウトの兄。本名ジェレミー・アティカス・フィンチ。
ディル・ハリス:ジョン・メグナ
フィンチ兄妹の友達。トルーマン・カポーティがモデル。
ヘック・テイト:フランク・オーヴァートン
町の保安官。
モーディ・アトキンソン:ローズマリー・マーフィ
フィンチ家の向かいに住んでいる女性。
デュボース夫人:ルース・ホワイト
いつも不機嫌なフィンチ家の隣家に住む老婦人。
トム・ロビンソン:ブロック・ピーターズ
白人の娘を暴行した容疑で起訴された黒人。
キャルパニア:エステル・エヴァンス
フィンチ家に家政婦として通って来る黒人女性。
メイエラ・バイオレット・ユーエル:コリン・ウィルコックス
トムに暴行を受けたと主張する白人の娘。
ボブ・ユーエル:ジェームズ・アンダーソン
メイエラの粗暴な父親。黒人を弁護するフィンチ一家に敵意を隠さない。
アーサー・ラドリー:ロバート・デュヴァル
“ブー”というあだ名で恐れられるフィンチ家の不気味な隣人。
ジーン・ルイーズ・フィンチ(語り):キム・スタンリー
大人になったスカウト。物語の語り手。