ディック・スミス(Dick Smith 本名:Richard Emerson Smith 1922年6月26日 – 2014年7月30日)は、アメリカ合衆国のメイクアップアーティスト。
ニューヨーク州ラーチモント出身。イエール大学卒。当初は歯科医志望だったが、19歳の時に「ブック・オブ・メイクアップ」を読んで、メイクアップアーティストを志すようになる。大学では演劇部のメイクを担当していた。卒業後は陸軍に入隊し、第二次大戦に従軍。
1945年、NBCテレビが開局すると、テレビ界では初めてとなる常勤のメイクアップアーティストとなる。当時のテレビドラマはすべて生放送だったが、スミスは出演者の老けメイクを即興でこなして名を上げた。
その後映画界へと進出、フォームラテックス (液状の特殊ゴム素材=ラテックスをミキサーで撹拌・発泡させた後、オーブンで焼き上げ、柔らかいスポンジ状にした物)製のマスクを小さなパーツに分解する“オーバーラップ・アプライエンス”という手法を映画で初めて使用して注目を集める。
『小さな巨人』(ダスティン・ホフマン)や『エクソシスト』(リンダ・ブレア、マックス・フォン・シドー)、『ゴッドファーザー』(マーロン・ブランド)、『タクシードライバー』(ロバート・デ・ニーロ)でのメイクが有名で、繊細でリアリスティックなメイクを得意とした。1984年、『アマデウス』で老サリエリ(F・マーリー・エイブラハム)の老けメイクを担当して、第57回アカデミーメイクアップ賞を受賞した。
黒沢清監督のホラー映画『スウィートホーム』のメイクを担当したほか、1992年から2000年まで代々木アニメーション学院特殊メイク科で講師を務めた。
2011年、第84回アカデミー名誉賞を受賞した。弟子にディック・スミス、辻一弘(カズ・ヒロ)らがいる。
2014年7月30日に老衰で死去した。92歳没。