プレデターは、1987年のアメリカ合衆国のSFアクション映画。屈強な軍人 “ダッチ”(アーノルド・シュワルツェネッガー)率いる特殊部隊が、中央アメリカの架空の国バル・ベルデでゲリラたちの手から捕虜を救出する任務に就いた後、正体不明の高度な技術を持つ地球外生命体・プレデターに狙われるという物語。スタン・ウィンストンによってクリーチャーが考案された。「predator」は動物学用語で、「捕食動物」や「天敵」を意味する。この名称は、あくまで視聴者・制作者の用いるメタ視点での呼び名であり、本作に登場するクリーチャーの作中設定の種族名ではない。
プレデター 映画批評・評価・考察
プレデター(原題:Predator)
脚本:30点
演技・演出:20点
撮影・美術:20点
編集:10点
音響・音楽:10点
合計90点
全米で公開されたとき、評論家に酷評されていたものの、現在では80年代を代表するパイオニア的作品のひとつに挙げられている。今作が企画され、作品になるまでの過程が面白い。
『ロッキー4/炎の友情』公開後の数ヶ月間、ハリウッドではあるジョークが出回っていた。それはロッキー・バルボアの闘う相手はもう地球上にはおらず、次の対戦相手は異星人になるだろう、というものである。脚本家のジムとジョン・トーマスはこのジョークを真に受け、それを基に脚本を執筆した。トーマス兄弟の書いた最初の脚本の題名は『ハンター』(Hunter)だった。1985年に20世紀フォックスにこの脚本が選ばれ、製作のジョエル・シルバーに引き渡された。シルバーは『コマンドー』での経験から、予算をこのSFアクション映画に回すことを選択した。彼は元上司のローレンス・ゴードンを共同製作にし、ジョン・マクティアナンを監督に雇った。ニュージーランドのジェフ・マーフィーも監督の候補に挙がっていた。
スタン・ウィンストンによって考案された初期のモンスターのデザインと、完成版とではかなり違いがある。当初はジャン=クロード・ヴァン・ダムがクリーチャーを演じる予定だったが、彼は初期版のスーツを用いたテスト撮影をした後、「スーツは動きにくく暑すぎる」と主張した。加えてプレデターがシナリオの都合上クロマキーとなるシーンが多い事、得意のマーシャルアーツをシェイファー役のシュワルツェネッガーとの対戦で披露するつもりだったが、その場面もない事を不満としてヴァン・ダムは降板。最終的にケヴィン・ピーター・ホールが演じ、敏捷かつタフな生命体として描かれることになるが、ヴァン・ダムがスタジオを去った直後は、企画が行き詰っていた。マクティアナンはシュワルツネッガーからスタン・ウィンストンを紹介され彼と相談する。そしてフォックス・スタジオに向かう飛行機でモンスターのスケッチをしていたウィンストンは『エイリアン2』の監督ジェームズ・キャメロンと一緒になる。キャメロンは節足動物の下顎を参考にすることを提案した。これが後にプレデターを象徴する特徴となる。
今作の個人的に好きなところは、癖の強いマッチョな俳優の共演がしつこいくらい男臭くて面白い。特にロッキーでアポロを演じたカール・ウェザースとビル・デュークの黒人俳優の二人の存在感溢れる演技とセリフがとてもカッコ良くこの映画のハイライトに必ず思い出すシーン(死に方)でもある。ダッチ役のシュワルツェネッガーは、今作が一番カッコ良かったし、ハマリ役だった。幻になってしまったけど、ヴァン・ダムが演じるプレデターも見てみたかった。
プレデター あらすじ(ネタバレ)
とある異星人の宇宙船が地球の大気圏に突入し、ポッドを放出した。それからしばらくして、アラン・”ダッチ”・シェイファー少佐はゲリラ部隊によって捕獲された政府の要人とその側近を救出するため、エリート・チームを率いて中央アメリカの架空の国バル・ベルデに到着する。このチームはマック・エリオットとブレイン・クーパー、ビリー・ソール、ホルヘ・”ポンチョ”・ラミレス、リック・ホーキンスたちで構成されている。ダッチの元戦友で、現在はCIAで働いているジョージ・ディロンも仲間として加わる。チームはヘリコプターでジャングルに降下し、任務を開始する。
ダッチらは墜落したヘリの残骸を発見した後、皮膚をはがされて木に逆さ吊りにされた、特殊部隊隊員たちの死体に出くわす。ゲリラの陣取った村を襲撃して女性兵士のアンナを除く全員を殺害し、非武装の彼女を捕虜にいたダッチらが村を漁っていると、とある機密資料が見つかる。それについてディロンを問い詰めると、彼は要人の正体が自身の部下であり、その死を承知のうえでゲリラ襲撃のために部隊を編成したこと、隊員たちの死体の正体は前もって派遣されていたCIAエージェントであることを告白する。ディロンの変わりように激怒かつ呆れながらもダッチらは脱出ポイントへ向かい始めるが、彼らの動向はサーモグラフィーを使う未知の異星人から監視されていた。
脱出ポイントへの道中、脱走を試みたアンナをホーキンスが追跡して捕えるが、その直後に彼は光学迷彩で透明化した異星人に惨殺され、死体を持ち去られる。アンナは自分も殺害されると恐怖するが、異星人は彼女を攻撃せずに移動する。その後、プラズマキャノンでブレインも殺害され、彼の死体に駆け寄ったマックは前方に怪しく輝く2つの目を目撃し、絶叫しながら銃を乱射する。皆も乱射するが、異星人には軽傷を与えただけに終わり、見失った。しかし、傷をつけられる相手なら殺すこともできるだろうと恐れを捨てたダッチらは、多数のワナを仕掛けて待ち伏せる。その合間、アンナは「人間を狩り、その頭蓋骨でトロフィーを作る悪魔」の言い伝えを物語るが、異星人はワナからプラズマキャノンで脱出したうえ、ポンチョに重傷を負わせる。逆上したマックとディロンは異星人を追跡し、2人とも殺害される。このままでは全滅すると判断したビリーはダッチらの脱出の時間を稼ぐために単独で異星人に挑むが、身体能力も圧倒的だった異星人に殺害される。異星人はダッチたちに追いつき、プラズマキャノンでポンチョも殺害する。異星人が非武装者や弱者を相手にしないことを見抜いたダッチは、アンナだけを脱出ポイントまで先に走らせる。その後、異星人から逃げる途中で滝つぼに落ちるも運良く生き延びたダッチは岸に上がると、一息ついて冷たい泥の中に突っ伏すが、その直後に異星人も滝つぼに飛び込む。
ダッチは、光学迷彩が解けた異星人の不気味な姿に息を殺したうえにレーザーの照準を当てられ、死を覚悟する。だが、異星人はダッチの近くにいた小動物を撃ち、彼の姿を見失ったまま立ち去る。異星人の光学迷彩が水に濡れることで解け、生物の発する赤外線を探知する能力が泥に遮られることを悟ったダッチは体中に泥を塗り、サバイバルナイフで木を削って弓矢や投げ槍などさまざまな武器を作ると、人が1人通れるくらい狭いくぼ地にカウンターウエイトを利用したワナを仕掛け、異星人との最終決戦に備える。日没後、準備を整えたダッチは異星人を引きつけるため、雄叫びをあげる。
弓矢や投げ槍などでさらに負傷して光学迷彩装置を破壊された異星人は、主な装備を捨てて素顔をさらして身体能力でダッチを圧倒するが、彼はワナのある場所まで異星人を誘い込み、カウンターウエイトを落として致命傷を負わせる。瀕死の異星人はダッチの問いかけに鸚鵡返しで答えると、手首の装置を起動する。大声で笑い始めた異星人からダッチは自爆のカウントダウンを悟り、走り出す。それからまもなく、森林が丸ごと吹き飛ぶほどの大爆発が起きる。
アンナを乗せた救出ヘリの乗員が大爆発の煙が晴れてから見たものは、奇跡的に難を逃れたダッチの姿だった。
プレデター スタッフ
監督:ジョン・マクティアナン
脚本:ジム・トーマス,ジョン・トーマス
製作:ローレンス・ゴードン,ジョエル・シルバー,ジョン・デイヴィス
音楽:アラン・シルヴェストリ
撮影:ドナルド・マカルパイン
編集:マーク・ヘルフリッチ,ジョン・F・リンク
製作会社:ローレンス・ゴードン・プロダクションズ,シルバー・ピクチャーズ,デイヴィス・エンターテインメント
配給:20世紀フォックス
プレデター キャスト
アラン・”ダッチ”・シェイファー少佐:アーノルド・シュワルツェネッガー
部隊指揮官。元グリーン・ベレーの隊員で、ディロンとは元戦友。屈強な体格と優れた身体能力はもちろん、過去に数々の困難な作戦を成功させ、百戦錬磨の優秀な指揮官として内外から絶大な信頼を得ているが、その一方で「自分たちはレスキュー部隊であり殺し屋ではない」というポリシーを持ち、暗殺などの作戦は引き受けない。ただし、作戦遂行時には手段を問わず、相手を壊滅させることも厭わない。葉巻愛好家で、戦場でも吸っている。早くからプレデターの存在を察知し、これに勝利しなければ全滅は免れないことを悟る。プレデターとの戦闘の中で相手の決定的な弱点を発見、ほぼ全ての近代的な武装を失いながらも策を巡らせ、弓矢や槍などの原始的な武器や罠を用い、死闘の末に勝利した。
ジョージ・ディロン:カール・ウェザース
ダッチの元戦友。現在は軍を退役し、CIA職員を務めている。部下の搭乗機がバル・ベルデのジャングルに墜落したため、機密書類の漏洩を防ぐべく、グリーンベレーのホッパーやダッチとその部隊を現地へ派遣し、書類確保のために自分も随行する。兵士としても優秀だが、現役時代に比べて若干衰えがある描写がされている。また互いに仲の良いマックとブレインからは嫌悪感を持たれており、表向きの救出作戦を疑われていた節がある。物語の後半でマックとともにプレデターを追跡するが、逆に待ち伏せされプレデターのプラズマキャノンによって右腕を撃ち落とされる。なお応戦を試みるが、腹部をリストブレイドで貫かれ断末魔の絶叫をあげながら絶命した。
アンナ・ゴンザルベス:エルピディア・カリーロ
ゲリラに所属する女性兵士。事件に関する重要な証人としてダッチの部隊に捕囚され、随行することになるが、徐々にダッチを信頼し協力するようになる。一同の中で最初のプレデター目撃者。当初はスペイン語しか話せないふりをしていたが、実は英語でも普通に会話できる。現地の先住民の末裔で、ダッチらに古くから部族に伝わる「蒸し暑い夏に現れ、人間の頭蓋骨をトロフィーにする悪魔」の伝説を教えた。ポンチョが殺害された際に彼の銃で応戦しようとするが、プレデターが「武器を持たない者を殺さない」ことを見抜いたダッチに阻止される。ダッチと共に生還を果たす。
マック・エリオット:ビル・デューク
黒人の軍曹。ベトナム戦争ではブレインと同じ小隊に属し、共に過酷な戦場を潜り抜けてきたため、彼とは「兄弟」と呼び合うほど仲が良い。ディロンに対して好意的ではなく、行軍中に足を踏み外した彼を激しく恫喝した。アンナの次にプレデターを目視し、射撃で傷を負わせる。プレデターに殺されたブレインの復讐を誓い、ディロンとともに追跡するが、光学迷彩で接近してきたプレデターに気づけず、プラズマキャノンで頭部を撃ち抜かれ死亡した。
ブレイン・クーパー:ジェシー・ベンチュラ
かつてベトナム戦争でマックと同じ小隊に属し、その小隊が2人を残して全滅するという激戦から生還した屈強な兵士。噛みたばこを常用し、ぼろぼろのスローチ・ハットを被っている。ディロンのことを快く思っておらず、行軍のヘリコプター内で彼の靴に唾を吐き、挑発した。7.62mmミニガンを愛用し、ホーキンスの死体の捜索中、背後からプレデターのプラズマキャノンで撃ち殺される。
ビリー・ソール:ソニー・ランダム
ネイティブアメリカン・スー族の末裔。鋭い第六感を持ち、プレデターの存在を最初に察知した人物。ダッチらが退避する時間を稼ぐため、丸木橋の上でマチェテのみでプレデターを迎え撃つが、目前に現れたプレデターにあえなく殺され、頭蓋骨をトロフィーにされる。
ホルヘ・”ポンチョ”・ラミレス:リチャード・チャベス
チカーノで、スペイン語に堪能。グレネードランチャーを装備。終盤、負傷してダッチに担がれて退却する途中でプレデターのプラズマキャノンで頭を撃たれ、死亡する。
リック・ホーキンス:シェーン・ブラック
通信兵。大きなワイヤー眼鏡がトレードマーク。猥談の要素を含んだジョークとコミックが好き。ゲリラの拠点から回収ポイントに向かう途中、逃走を図ったアンナを追跡した際にプレデターの襲撃を受け、部隊の中で最初の犠牲者となると、死体は内臓を引きずり出されて樹上に逆さ吊りにされた。
ホーマー・フィリップス少将:R・G・アームストロング
ダッチの部隊を派遣させた後、ヘリコプターで彼を救出した少将。ダッチの部隊を派遣させた後、ヘリコプターで彼を救出した少将。
ロシア人顧問:スヴェン=オーレ・トールセン
バル・ベルデのゲリラ部隊を支援するため、ソ連から送られた無名のロシア人の顧問。ゲリラ陣地の小屋で捕虜の人質を銃殺した後、捕虜を救出しに来たダッチたちのグレネードランチャーの攻撃で死亡する。
プレデター:ケヴィン・ピーター・ホール,ピーター・カレン(声)
外宇宙からやってきた異星生物種族。人類を遥かに凌駕する身体能力と技術力、高い知能を持ち、「強い生命体を狩ること」を生き甲斐とする好戦的な種族。しかし反面、強くない・武器を持っていない生命体は歯牙にもかけずに見逃す。光学迷彩とプラズマ兵器を用い、赤外線を探知する。