マッドマックス2は、1981年公開のオーストラリアの映画。石油パニックに陥った退廃的な社会を背景に凶悪化したハイウェイの殺し屋たちに挑む一匹狼の警官マックスの活躍を描くアクションで「マッドマックス」の続篇。前作のヒットを受け、約10倍の費用をかけて製作されたバイオレンス・アクション映画。大国同士による戦争後の荒廃した舞台設定、モヒカンヘアーで暴れまわる暴走族などを描いた世界観は、1980年代全般のSF映画をはじめ、『北斗の拳』など多くの作品に影響を与えた。監督のジョージ・ミラーは本作を作るにあたり、世界各地の英雄神話を研究した書物であるジョゼフ・キャンベルの『千の顔を持つ英雄』を参考にしている。
マッドマックス2 映画批評・評価・考察
マッドマックス2(原題:Mad Max2:The Road Warrior)
脚本:38点
演技・演出:18点
撮影・美術:18点
編集:9点
音響・音楽:9点
合計92点
シリーズ最高の面白さだと思える人生に刺激を与えた一作です。数十年の時を得ても未だに面白く、荒廃化した世界観は未だに核戦争が起こればこうなってしまうんじゃないかと思えます。また、マックス以外の個性派キャラが複数登場し、短い映画にも関わらず強烈なインパクトを残す演出はすごいものです。今作品が北斗の拳に代表される後の多くの作品への影響度はかなりのものです。
物語序盤のマックスがドッグフードの缶詰を食べるシーンが、男心をくすぐるのかシーチキンの缶詰で真似しちゃう男子が何人いたことだろう。世界中合わせたら1億人くらいいてもおかしくないw
主人公マックスが勧善懲悪のヒーローではなく、一作目で心を壊してしまった人間であり、世界も彼の心のように荒廃してしまっている。肉体的に超人ではなく、過去のトラウマと善悪、葛藤の中で生きる人間。最期は正しい方に付く。彼は常にコイントスしながら生きていそうだが、彼のコインは必ず善側を向く。彼が望んでいることだからだ。
今作品はU-NEXT で見ました。
マッドマックス2 あらすじ(ネタバレ)
視力も衰え、記憶が覚束ない老境に入っても尚、幼い頃を鮮明に思い出し、「マックス」という名の過去に出会った一人の勇者についての記憶を呼び覚ます北部民族長老(子供の頃はフェラル・キッド)の回想から物語は始まる。
前作の直後に二大国間で勃発した世界大戦により文明は崩壊、戦争の影響で多くが枯渇した石油を巡り、凶悪な暴走族が略奪を繰り広げる荒廃とした砂漠の世界へと変貌した。元警官マックスは、前作で家族を失ったショックから生きる希望と目的を失い、相棒である犬(オーストラリアン・キャトル・ドッグ)と共に、改造を施した愛車V8インターセプターに乗ってひたすら走り続ける日々を送っていた。
ある日、マックスはインターセプターの燃料を狙って追い回していたウェズ率いる暴走族のグループを追い払った後、道中で1機のオートジャイロを見つける。そこでオートジャイロのパイロットのジャイロ・キャプテンの襲撃を受けるも返り討ちにし、命乞いする彼から近くに石油精製所があることを教えられる。マックスはジャイロ・キャプテンの道案内で周辺区域を縄張りとするヒューマンガス率いる暴走族の襲撃に日々脅かされている石油精製所へと辿り着き、その暴走族の中に自身を追い回していたウェズの姿も見つける。
石油精製所に近づく方法を模索するため張り込みを始めて数日、石油精製所から数台のバギーが出発し、暴走族に捕まる光景を目撃。鎖で拘束したジャイロ・キャプテンを野放しにしたマックスはウェズの手により重傷を負った精製所の男性を精製所に搬送し、施設内に入る事に成功するも直後に男性が息を引き取ってしまった為、リーダーのパッパガーロとの物資取引は頓挫、愛車も差し押さえられてしまう。直後、ヒューマンガスら暴走族が精製所から出た住民を車両に磔にしながら接近すると「精製所を手放して立ち退けば命は保証する」という妥協案を突き付けて立ち去っていく。
ヒューマンガスの要求に精製所の住民らが徹底抗戦か脱出かで意見が割れる最中、マックスはパッパガーロの計画に協力すると申し出、路上に放置されていたトレーラーの調達を請け負い、取引は成立。道中、ヒューマンガス達の妨害を受けるも、精製所に住む野生児のフェラル・キッドや放置していたジャイロ・キャプテンの協力を得てこれを遂行、住民たちが所望していたトレーラーを精製所に運び込み、信頼を得ることに成功する。
その夜、ヒューマンガスが報復として捕虜の処刑を行う中、住民から脱出遂行への共闘と旅の仲間になるよう持ちかけられたがマックスはこれを拒否し、夜明けと共に精製所を後にする。直後、精製所から出発したのを知ったウェズの追撃を受けてインターセプターは大破・爆発してしまい、マックスは負傷、犬も撃ち殺されてしまう。瀕死の所をジャイロ・キャプテンに救出され再び精製所へと戻り手当を受けることとなる。
蘇生したマックスは一度は断った作戦だが、取引と関係無く住民が目指す「太陽の楽園」へと向かう脱出行の手助けを決意、作戦の要となるトレーラーの運転を任されパッパガーロ、ジャイロ・キャプテンら護衛のメンバーと共に精製所を出発。それと同時に精製所を爆破した。
牽引する燃料タンクに一斉に群がるヒューマンガスの部下を迎撃していくも、パッパガーロら護衛のメンバーは次々と討たれ、空から援護していたジャイロ・キャプテンも撃ち落され、マックスも深手を負い窮地に陥ってしまう。死と暴走の果てにマックスの運転するトレーラーはフロントバンパーにしがみつくウェズもろともヒューマンガスの車両と正面衝突し横転してしまう。暴走族のメンバーがヒューマンガスとウェズの死を察して立ち去っていく中、辛うじて助かったマックスは運転席から這い出すが、横転によりタンクの蓋が破損し、中身が流出してしまっていた。しかしそれは燃料ではなく砂であった。マックスは囮に利用されていたのだった。マックスがヒューマンガスらを引き付けている間に、燃料はドラム缶に小分けにされ別ルートで脱出した住民が乗るバスで運び出すことに成功していた。作戦の全貌を知った直後、墜落から九死に一生を得たジャイロ・キャプテンと再会しマックスはかつて失っていた安堵の笑みを浮かべるのだった。
その日、陽が没した路上で佇む傷だらけのマックスの姿を、フェラル・キッドは目的地へと向かうジャイロ・キャプテンが運転するバスの後部から見送っていった。
マッドマックス2 スタッフ
監督:ジョージ・ミラー
脚本:テリー・ヘイズ,ジョージ・ミラー,ブライアン・ハナント
製作:バイロン・ケネディ
音楽:ブライアン・メイ
撮影:ディーン・セムラー
編集:マイケル・マルソン,デイヴィッド・スティーヴン,ティム・ウェルバーン
配給:ワーナー・ブラザース
マッドマックス2 キャスト
マックス:メル・ギブソン
前作からの主人公。M.F.P.所属だった元警察官。前作で守るべき命である家族を目の前で失ったショックから心を閉ざしており、同じく前作で持ち出した愛車、V8インターセプターで行く宛の無い旅を続けていた。寡黙で意固地且つ利己的な性格だが、最終的には世の理不尽に抗うパッパガーロ達に無償で手を差し伸べる等、他人への優しさを完全には失っていない。前作からの愛用品であるストーガー水平二連式ソードオフ・ショットガンで武装し、全身を黒いレザースーツで固める。前作での負傷によりやや不自由となった左足に金属製補助器具を装着している。
ジャイロ・キャプテン:ブルース・スペンス
小型オートジャイロを囮に強盗を働いていた男。自身のオートジャイロに近付いたマックスを先手で襲撃するも返り討ちに遭い許しを請い、殺害を免れる事を条件に油井施設がある場所までの案内役を申し出る。飛行帽と日除け付き飛行眼鏡、襤褸のコートに紫のマフラーを巻き、黄色の肌着にシューズといった風体。食材兼ジャイロ番の毒蛇、弩で武装。下卑た話を一人で延々と喋り、油井施設から取引を委託されたマックスを勝手に「パートナー」と呼び、成り行き上、暴走族との戦いにジャイロに乗って火炎瓶を武器に空から加勢する事となる。ヒューマンガス一味との戦いの最中に落命したパッパガーロの後任としてグループリーダーに就き「太陽の楽園」を目指した。
パッパガーロ:マイク・プレストン
石油精製所のリーダー。強い意志を持つ理想家であり、策略家でもある。暴走族に屈しそうになるメンバーに、人間としての誇りを守ることの大切さを説き、徹底抗戦を主張する。終盤の脱出作戦ではヒューマンガス一味から奪い取ったザ・ローン・ウルフに乗ってマックスの乗るトレーラーの護衛にあたるも、作戦が成功してフェラル・キッドをザ・ローン・ウルフに乗り移るよう促している所をヒューマンガスの投げた槍が命中、戦死してしまう。
ヒューマンガス:ケル・ニルソン
配下から「Lord(君主)」「ロックンローラーのアヤトラ(伝道師)と称され、精製所の石油をつけ狙う暴走族の首領。半裸で筋骨隆々、命令を無視して単独行動に出るウェズを絞め落とす腕力を持つ。Cooper HM6 ホッケーマスクで顔面を覆い、劇中で素顔が晒されることはない。演説に長け、強力なカリスマを発揮し、石油精製所の一部の面々からも「話の通じる相手(a reasonable man)」と認められてもいる。スコープ付きS&W M29と実弾5発入りケースを所持、ケース内には何らかの家族と思しき集合写真も同梱されているが本人との相関関係は劇中では不明。マックス達の脱出作戦では自身の乗るトラックに備えていた槍を使ってパッパガーロを討ち取り、マックスにも槍を投げようとしたがジャイロ・キャプテンの火炎瓶攻撃に遭い、戦線から一時離れてしまう。亜酸化窒素ボンベで加速してトレーラーに追いつこうとしたところ、Uターンしてきたトレーラーと正面衝突して、トレーラーのフロントバンパーにしがみついていたウェズもろとも木っ端微塵に吹き飛んでしまう。
ウェズ・ジョーンズ:ヴァーノン・ウェルズ
族の中で際立って好戦的で凶悪な一員。常にゴールデン・ユースをオートバイ後部座席に乗せ、黒い羽毛で装飾した衣装を纏い、頭髪を赤く染めたモヒカン刈りの暴徒。一味のボスにあたるヒューマンガスですら手を焼くほど凶暴な性格でヒューマンガスの制止を振り切り単独行動に出た事により鎖で拘束され行動を制限される。マックス達の脱出作戦の際に戒めであった鎖の捕縛を解かれ追撃に加わり、水平4連ダートガンで女戦士を射殺。マックスが運転するトレーラーの走行阻止と殺害を謀るべく朝星球を振り回し窮地に追いやるも最後はトレーラーとヒューマンガスのトラックの正面衝突の間に挟まれ激突死する。「革鎧を身につけたモヒカン頭の凶悪なバイク乗り」という造形は、以降のサブカルチャーにおける世紀末的世界観に大きな影響を与えた。イギリスの映画雑誌エンパイアによって、「映画史上最高の、悪の手下(henchman)」に選ばれている。また、ウェズを演じたヴァーノン・ウェルズも本作がきっかけで脚光を浴び、後に「コマンドー」でベネットの役を熱演する事にもなった。
トーディー:マックス・フィップス
暴走族のメンバー。ウェズが投げた鋼鉄製のブーメランを、素手でキャッチしようとして右手の指を4本失う。マックスがインターセプターで石油精製所を離れた際、ウェズと共にこれを追跡、インターセプターを大破させてガソリンを奪おうとするも、インターセプターに搭載されていた自爆装置を作動させてしまい、爆死する。端役ではあるが出演者としてはギブソン、スペンス、プレストンの次(4番目、5番目はウェルズ)という順のクレジット表記となっている。
女戦士:ヴァージニア・ヘイ
クロスボウを携え石油精製所を守る女性戦士。当初は無法者然としたマックスに辛く当たるが、約束を守ってトレーラーを持ってきた事から考えを改め、終盤ではマックスと共にトレーラーへ乗り込む。しかし、ウェズが撃ち込んできた4連ボウガンで致命傷を受けて戦死、トレーラーのタンクに括りつけられた有刺鉄線に引っかかった亡骸はヒューマンガスの部下によって路上に投げ落とされてしまう。
ゼッタ:ウィリアム・ゼッパ
石油精製所を守る戦士。サブリーダー的存在。終盤ではトレーラーへ護衛として乗り込み、火炎瓶とボウガンでヒューマンガス一味に応戦する。しかし、仲間達の中で真っ先に死亡する。
メカニック:スティーブ・J・スピアーズ
石油精製所で車両の整備士をしていた躄(いざり)の男性。精製所内では即席のクレーンカーに吊られた状態でいる。マックスが届けてきたトレーラーを整備、補強を行い自身もトレーラーの護衛として乗り込み、火炎瓶でヒューマンガス一味に応戦する。しかし、ベアクロウ・モホークの放ったボウガンで自爆し火が燃え移ってしまう。これを必死に消火して戦死した女戦士を助け上げようとするも、ヒューマンガスの部下に女戦士の死体もろとも路上に投げ落とされて死亡する。
ジャイロの彼女:アーキー・ホワイトリー
石油精製所の若いティーンエイジャーの娘、施設内看護班、単にLusty Girlとも呼ばれている。脱出前の夜、ジャイロ・キャプテンの懇意で秘密裏に二人だけで施設を抜け出ようと誘われたものの、直前に翻意して今まで暮らしてきた仲間を見捨てる事は出来ないとし、行動を共にする。
カーマジャン:シド・ヘイレン
石油精製所で暮らしていた老人で、茶色の軍服とアーミーヘルメットを被り、常に日本刀を持っている。ヒューマンガスが和平を申し出た際、ヒューマンガスとの話し合いを提案する。楽観的な性格で、精製所から脱出して「太陽の楽園」を目指す旅に出ることに魅了されていた。
野生児(フェラル・キッド):エミール・ミンティ
鋭く砥がれた鋼鉄製のブーメランを自在に操る野生児。親は分からず言葉も話せないが、刃の付いたブーメランを素手で扱ってはいけないことや他人のしゃべることは理解しているなど知能や知識は十分にある。「誕生日の歌」の音色を奏でるオルゴールをマックスから貰って以降、彼に懐くと共に強い憧れを抱く。犬の鳴き真似が得意。脱出作戦の際も周りの大人が危険と判断してマックスからキッドを引き離そうとするも頑なにこれを拒み、マックスの運転するトレーラーに同乗する。マックスと別れた後、成長してジャイロ・キャプテンの跡を引き継ぎ、北部民族のリーダーになった。実はこの物語の語り手であり、劇中序盤と終盤のモノローグは年老いたキッドが語っているもので、本作がキッドの回想録でもある。なお、「フェラル・キッド(Feral Kid)」というのは英語で「野生児」という意味。