Love Letter(らぶれたー)は、1995年公開の日本映画。雪の小樽と神戸を舞台にしたラブストーリー。テレビドラマやCMなどで活躍していた岩井俊二の劇場用長編映画監督第1作である。※第19回日本アカデミー賞にて、作品が優秀作品賞を、秋葉を演じた豊川悦司が優秀助演男優賞と話題賞(俳優部門)を、少年時代の藤井樹を演じた柏原崇と、少女時代の藤井樹を演じた酒井美紀が新人俳優賞を、REMEDIOSが優秀音楽賞を受賞した。一人二役を演じた中山美穂は、ブルーリボン賞、報知映画賞、ヨコハマ映画祭、高崎映画祭などで主演女優賞を受賞した。1995年度『キネマ旬報』ベストテン第3位、同・読者選出ベストテン第1位。
Love Letter 映画批評・評価・考察
Love Letter
脚本:37点
演技・演出:17点
撮影・美術:19点
編集:9点
音響・音楽:10点
合計92点
岩井俊二のセンス溢れる映像の美しさとそこに合わせる音楽が素晴らしい。切ないラブストーリーと映像の美しさ、演出の巧みさ、邦画ラブストーリーでは傑作。撮影監督の篠田昇の映像美が堪能できる映画の一つで、コレクションにはブルーレイがおすすめです。
Love Letter あらすじ(ネタバレ)
神戸に住む渡辺博子は、山の遭難事故で死んでしまった恋人・藤井樹の三回忌の帰り道、彼の母・安代に誘われ、彼の家で中学の卒業アルバムを見せてもらった。その中に樹の昔の住所を発見した博子は、今は国道になってしまったというその小樽の住所に手紙を出してみることを思い付く。数日後、博子の手紙は小樽に住む藤井樹という同姓同名の女性のもとに届いていた。「拝啓、藤井樹様。お元気ですか? 私は元気です」という手紙に心当たりのない樹は、好奇心から返事を書いてみることにした。来るはずのない返事が届いたのに驚いた博子は、樹の登山仲間でガラス工房で働いている秋葉茂に事情を打ち明ける。博子に秘かな恋心を抱く秋葉は、天国の樹から返事が来たと喜んでいる博子に心を痛めるのだった。博子はさらに返事を送り、二人の間で何度かの手紙のやり取りが続いた。
樹が気味悪く思い始めた頃、藤井樹本人であると証明できるものを送れという新たな手紙が樹に届く。それは博子の名をかたった秋葉の仕業だった。怒った樹は免許証の拡大コピーを送りつけ、奇妙な文通を終わらせると宣言する。同姓同名の、しかも性別の違う藤井樹の存在を知った博子は、嘘でもいいから信じていたかったと落胆した。秋葉は博子に樹への思いをふっきらせるために、小樽へ行こうと誘う。小樽に着いた博子と秋葉は樹の家を訪ねるが、彼女は留守にしていた。博子は恋人の樹が死んだことだけを隠して、ありのままに事情を説明した置き手紙を残して帰って行く。
博子の手紙を読んだ樹は、中学の時に同級生に同姓同名の藤井樹という男子生徒がいたことを想い出した。博子と秋葉が小樽を発つ日、博子は街角で自分と良く似た女性と擦れ違う。何かを感じた博子は「藤井さん」と声をかけるが、一瞬振り向いた彼女の姿はすぐに雑踏の中に消えていった。しばらくして、博子と樹の間で新たな文通が始まり、樹は博子に請われるままに少年・樹との中学時代の想い出を綴っていった。同姓同名というだけで何かと冷やかされ、笑いのタネにもされ、揃って図書委員に祭りあげられたりした樹にとっては、それは決して愉快なものばかりではなかった。少年・樹は他人が読まない本ばかり借りては、図書カードに自分の名前を書いて喜んでいる少年だった。樹はそんな彼を呆れた目で見ていたのである。
ある日、樹は博子に頼まれて、少年・樹が陸上部員として走っていたグラウンドの写真を撮るために母校を訪れた。樹はそこでかつての担任の先生から、彼が山で死んでいたことを聞かされる。その夜、樹はひどい高熱で倒れ、猛吹雪で救急車が到着できないことを知った樹の祖父・豪吉は、樹の父・慎吉が風邪をこじらせて死んだ時のことを思い出しながら、吹雪の中を樹をおぶって病院まで向かうのだった。その頃、博子は秋葉とともに樹が遭難した山に登ろうとしていた。博子は山に近づくにつれて次第に勇気を無くしていく。二人は途中にある、樹の登山仲間だった梶の山小屋に一泊した。明け方、熱が下がった樹は病院のベッドで目を覚ます。
ちょうどその頃、秋葉から樹が遭難した山を指し示された博子は、「お元気ですか? 私は元気です」と何度も何度も山に向かって叫び、嗚咽するのであった。風邪も治り退院した樹は、少年・樹との別れを博子への手紙に綴る。三年生の冬休み、父を亡くしたばかりの樹の家を訪ねてきた少年・樹は、図書館に返しておいてくれと一冊の本を樹に預けた。新学期が始まってしばらくして、ようやく樹が登校したときには、彼はすでに転校してしまっていたのだ。それが樹の最後の想い出であった。その後の博子からの返事には、今まで樹が送った手紙が同封されていた。これは樹の想い出だから、樹が持っているべきだというのだ。
数日後、樹の中学の後輩たちが一冊の本を持って彼女の家を訪れた。それは、少年・樹が転校する前に彼女に託した本だった。後輩たちに促されて図書カードの裏に目を移した樹は、そこに鉛筆で中学の頃の自分の顔が描かれているのに気付く。少年・樹の秘めた思いを知った樹は、恥ずかしそうに微笑むのだった。
Love Letter スタッフ
監督・脚本・編集・原作:岩井俊二
音楽:REMEDIOS
オリジナルサウンドトラック:REMEDIOS(キングレコード)
イメージソング:the pillows「ガールフレンド」(キングレコード)
撮影:篠田昇
照明:中村裕樹
美術:細石照美
記録:白鳥あかね
助監督:行定勲
撮影助手:北信康、福本淳
ポスプロプロデューサー:掛須秀一
編集助手:今井剛、大竹弥生
AVIDエンジニア:小島俊彦
音響効果:今野康之
現像:IMAGICA
協力:小樽市、日本エアシステム ほか
製作者:村上光一、重村一、堀口寿一
エグゼクティブ・プロデューサー:松下千秋、阿部秀司
プロデュース: 小牧次郎池田知樹長澤雅彦
アソシエイトプロデューサー:河井真也
制作協力:ROBOT
製作:フジテレビジョン、 ヘラルド・エース
上映時間 117分
Love Letter キャスト
渡辺博子:中山美穂
藤井樹:中山美穂(二役)
秋葉茂:豊川悦司
藤井晶子:范文雀
藤井剛吉:篠原勝之
藤井精一:鈴木慶一
藤井慎吉:田口トモロヲ
樹(少女時代):酒井美紀
樹(少年時代):柏原崇
藤井安代:加賀まりこ
阿部粕:光石研
及川早苗:鈴木蘭々
梶親父:塩見三省
浜口先生:中村久美
利満:うめだひろかず
春美:長田江身子
鈴美:小栗香織
治夫:神戸浩
運転手:酒井敏也
担任:山口晃史
阿部粕の妻:山口詩史
学年主任:山崎一
男:徳井優
看護婦:武藤寿美
図書委員 遥香:藤村ちか
図書委員 恵子:市川さき
図書委員 真理:林美恵
図書委員 優子:高原遊
図書委員 彩:園田亜季子
図書委員 智加:木村絢