HOUSE ハウスは、1977年公開の日本映画。ファンタジータッチのホラー・コメディ作品。大林宣彦監督の劇場映画デビュー作で、現在もカルト的人気を得ているファンタジック・ホラー。本作の登場は一種の”映画革命”をもたらしたと評された。
HOUSE ハウス 映画批評・評価・考察
HOUSE ハウス
脚本:29点
演技・演出:15点
撮影・美術:17点
編集:7点
音響・音楽:8点
合計76点
大林監督の劇場映画デビュー作にして、もっとも個性とエネルギーが溢れている作品です。新人女優をいとも簡単に脱がしてしまう魔法はここで生まれたのでしょうか。ともかく脱ぐ必要のない場面でも脱がされている。セクシーとかエロとかそういう演出でもないのに脱がされています。そこが今作の見どころの一つかもしれませんが、合成映像に古さも感じますが、新しさも感じられる不思議な映像になっています。コメディパートがあるのでコメディ映画とされる向きもありますが、受ける印象は中盤から終盤にかけてのホラー演出のはちゃめちゃ具合が印象に残り、それなりに怖いと思います。気持ち悪さと得体の知れなさがあるんですよね。
HOUSE ハウス あらすじ
闇夜に姿を現す美女の幽霊。幽霊の正体は女子高生のオシャレ(本名・木枯美雪)。音楽家を父に持ち、東京郊外のお嬢様学校に通う彼女は、お嬢様然とした風貌に反し、金持ち呼ばわりを嫌う明朗快活な現代っ子。演劇部のエースとして「化け猫伝説」の練習に励んでいたのである。親友で同じ演劇部のファンタもオシャレの勇姿を撮影していた。
夏休みが近いある日、オシャレは突然帰国した父から再婚相手を紹介されショックを受ける。夏休みに父や再婚相手と軽井沢に行きたくない彼女は、いつも演劇部の合宿先に利用していた旅館が一時休業になったと知らされ、代わりの合宿先に長年会っていなかった“おばちゃま”の家を提案してしまう。慌てた彼女は後からおばちゃまに訪問したい旨を手紙で伝え、許可をもらう。
そして、オシャレとその仲間達は羽臼屋敷に向かう。しかし東郷先生が出発前に事故で遅れてしまい、部員だけで行くことになる。電車の中でオシャレはおばちゃまの悲劇を仲間に伝える。未来を約束されたはずだった最愛の婚約者に赤紙が届き、婚約者は戦地へ行ったきり帰らぬ人となってしまう。悲しみにくれるおばちゃまに追い討ちをかける様に、妹(オシャレの実母)の結婚式が行われる。
電車からバスに乗り換え、更に徒歩で羽臼邸に到着。7人はおばちゃまに歓迎されるが、その後降り掛かる惨劇の事は予想だにしていなかった――。
HOUSE ハウス スタッフ
監督 – 大林宣彦
製作者 – 大林宣彦、山田順彦
原案 – 大林千茱萸
脚本 – 桂千穂
助監督 – 小栗康平
撮影 – 阪本善尚
美術 – 薩谷和夫
録音 – 伴利也
照明 – 小島真二
殺陣 – 伊奈貫太
音楽 – 小林亜星、ミッキー吉野、ゴダイゴ
ピクトリアルデザイン – 島村達雄
製作 – 東宝映像
HOUSE ハウス キャスト
オシャレ – 池上季実子
本編のヒロイン。幼い頃に母を亡くし、現在は父と父方の祖母との三人家族である。
外見は容姿端麗な典型的お嬢様だが(池上は当時18歳)、実際は金持ち扱いされることを嫌う、少々甘えん坊だが明朗快活な現代っ子。
所属する演劇部では花形女優として活躍している。
ニックネームはファッションやメイクに対して関心が高いことに由来。ちなみに本名は木枯美雪で、おばちゃまとの手紙のやり取りの中で判明する。
大好きな父の突然の再婚話に反発しており、新しい母親と軽井沢の別荘に行かずに済むように、部活仲間に夏休みの合宿先を羽臼邸にする事を提案する。
池上は共同プロデューサーの山田順彦からの紹介。無名の新人の中に、少しだけ演技経験のある子を入れようと抜擢された。
ファンタ – 大場久美子
オシャレの一番の親友。夢見がちで少々ドジっ子だが、明るく人懐っこい女の子。写真撮影が趣味で、常にカメラを携帯している。
東郷先生に好意を持っており、しばしば白馬にまたがる東郷先生の妄想を見る。
ニックネームの由来は英語で空想を意味する「ファンタジー (fantasy)」から。同じ語源のドイツ語Fantasieにもとづく清涼飲料水の「ファンタ」も掛け合わされている。
大場はそれまで端役程度の演技経験はあるが、レコードデビュー(映画公開の前月)と合わせてこの時期から本格的な売り出しが始まった新人であり、この年の後半から翌年にかけて一挙にトップアイドルの一人に駆け上った。撮影当時は13歳だった。
ガリ – 松原愛
メガネが特徴の優等生で委員長タイプ。本当は美少女なのだが、ど近眼のためメガネを外すと何も見えなくなってしまう。
少々口うるさいものの、しっかり者で仲間の面倒見も良い。
演劇部では彼女が部長兼脚本担当で、偶然発見した「化け猫伝説」を劇にして発表すべく奮闘している。
ニックネームの由来は、「ガリ勉」と「ガリ」を掛け合わせたもの。
松原は映画『愛と誠』の主題歌オーディションで合格し歌手としてデビュー。大林が手掛けたTOTOのCM「お魚になったわたし」に起用されたのが縁で抜擢された。松原のみ前年のラジオドラマ版にも出演し、映画化にあたっても、松原のみオーディションではなく、大林から直接出演オファーされた。
クンフー – 神保美喜
メンバーの中でも長身で、ニックネームの通り空手の達人。武闘派で正義感が強い一方で、友達思いで明るく気さくな性格の持ち主。
屋敷内でのタンクトップとブルマーといういでたちと、その人柄故、当時の男子中高生の間で断トツの人気を誇った。
ニックネームの由来は「クンフー」で、オシャレ同様食べ物に由来しない。
神保は『スター誕生!』出身の実力派アイドル。前年に巨匠今井正監督の大作『妖婆』で準主役をつとめており、池上と並んで演技実績のあるキャスト起用であった。当時お嬢様タイプで売り出していた彼女は、実はオシャレ役をやりたかったようだが、クンフー役を体当たりで演じ好評を博した。スタントのほとんどは神保自身がつとめた。大林がその後神保の主演で映画を企画したが実現しなかった。
マック – 佐藤美恵子
陽気で天真爛漫な、気のいい女の子。とにかく食いしん坊で、どの場面でも必ず食べ物を手にしている。
制服姿の時は一応髪を二つに結っているが、メンバーの中でも髪が短めで、判別がしやすい。
ニックネームの由来は英語で「胃袋」を意味する「ストマック (stomach)」と、「マクドナルド」の通称から。
スウィート – 宮子昌代
ふんわりカールのヘアスタイルに、当時流行だったガーリーなファッションを好む、乙女チックな女の子。
甘ったれでか弱いが、アットホームで大変優しい性格の持ち主。また、綺麗好きで家事は万能。
甘いを意味する「スウィート (sweet)」がニックネームの由来。
宮子は大林が長年構想していた”さびしんぼう”のヒロインに近いイメージを持っていた。国鉄のCMで柳川に一緒に行ったとき、いつか映画をやろうと約束していたことが本作の出演につながった。この映画のあと人気も出たが、当人に欲が全くなく『瞳の中の訪問者』出演後、結婚を機に引退した。大林が1998年、講演の為に山形を訪れた際に宮子が和装で大林を訪問し、20年ぶりの再会を喜びあった。当時宮子は某名家に嫁いでおり、義父が長く病床にあるため、「監督がこの街に来てると聞いて、お姑さんに15分だけお許しをもらって会いに来ました」と話したという。結婚して旧い家に食べられてしまった映画を地でいく運命を辿っている。
メロディー – 田中エリ子
音楽が大好きで、特技はピアノ演奏。
基本的には明るく良い子だが、今で言うところの天然系かつ不思議系キャラで、しばしばスベリギャグを口にする。
ニックネームの由来は音楽を意味する「メロディー (melody)」と、商品名がそれに由来する当時不二家から発売されていたチョコレート。
田中は大場久美子と同じ事務所で「うちにもうひとり、こういう子がいますから」と紹介され選ばれた。また、テレビ版『愛と誠』でも池上と共演している。設定だけでなく、実際にピアノは得意で、後に出演した映画でもピアノ演奏を披露している。
東郷圭介先生 – 尾崎紀世彦
7人が通う女子高の先生で、演劇部の顧問。明るく優しいがおっちょこちょいで少々頼りなく、部員からは呆れられている。ただしファンタからはベタぼれされており、予告編で白馬に乗り颯爽と登場する姿は実は彼女の妄想である。
階段で白い猫を避けようとして足を踏み外して転倒、軽傷だったものの尻がバケツに入ってしまい、病院で診てもらっていた為に出発が遅れてしまう。そのため屋敷までの道順が分らなくなってしまい、7人を追って珍道中をする羽目になる。
オシャレの父 – 笹沢左保
職業は音楽家。仕事柄、海外を飛び回ることが多い。イタリアで意気投合した涼子を連れ突然帰国、家族に再婚する事を報告し、オシャレを困惑させる。結果的にとは言え、事件の元凶となった人物。
役名の名字は「木枯」だが、これは笹沢の代表作「木枯し紋次郎」に由来している。
オシャレの母 – 池上季実子(一人二役)
おばちゃまにとっては実の妹に当たる。若くして亡くなっており、写真(遺影)でだけ登場。オシャレと瓜二つ。
西瓜を売る農夫 – 小林亜星
半袖シャツに半パン、麦藁帽子で「裸の大将」を彷彿とさせる格好をしたひょうきんな巨漢。
東郷先生に「スイカよりバナナが好き」と言われてショックを受け、何故かガイコツになってしまう。
小林は本作の音楽も一部担当している。
写真屋さん – 石上三登志
ベレー帽に芸術家髯で、いかにも芸術家といった出で立ちの男性。
オシャレの母の結婚式の記念撮影を担当。姉妹だからということで、白無垢姿で幸せまっただ中のオシャレの母と黒っぽい服で寂しげな表情のおばちゃまを一緒に撮影してしまう。
江馬涼子 – 鰐淵晴子
オシャレの父の再婚相手。オシャレの父とはイタリアで出会った。
職業は宝飾デザイナー。そのせいかメイクもファッションも派手で、必ず長いスカーフを巻いている。
陽気で気が良く料理上手だが、世間知らずで超鈍感。それでなくても父の再婚など考えもしていなかったオシャレには快く思われていない。
何とかオシャレに気に入られようと、よせばいいのに後から羽臼家を訪れ、やはり食べられてしまう。
大林が本作以前に本格的にやろうとして脚本まで完成していた檀一雄原作の『花筐』の主人公の叔母役を「あなたでやるよ」と声をかけていたため、代わりにオシャレの母親役として出演した。
羽臼香麗(おばちゃま) – 南田洋子
オシャレの母方の伯母。地元でピアノ講師をしていた。上品な感じの初老の女性で、オシャレ達ハウスガールズがやって来た時は車椅子に乗って出迎えたが、途中から何故か歩ける様になっている。
実は本編開始より数年前に既に死去しており、屋敷と一体化して若い女性を餌食にする化け物と化している。屋敷そのものが彼女の体となっており、屋敷に存在する家財道具などのあらゆる物体を操って若返りのために少女たちを餌食にしていく。
名前は「はうす かれい」と読む。由来は、『ハウス食品』のカレー。
寅さんに似た男 – 原一平
東郷先生が道中で出会った、車寅次郎のそっくりさん。中盤のコメディリリーフの1人。
ラーメン屋の客 – 広瀬正一
東郷先生が中盤で出会うギャグメーカーの1人。熊が営んでいるラーメン屋でラーメンをすすっていた。映画『トラック野郎』シリーズのパロディであるらしい。
村の老人 – 大西康雅
中盤のコメディリリーフの1人、東郷先生が屋敷への道のりを聞くも、チンプンカンプンな解答ばかりする。
オシャレの祖母 – 津路清子
オシャレの父方の祖母。母が亡くなり、父も海外へ行くことが多いオシャレの面倒を見ている。
青年(おばちゃまのフィアンセ)- 三浦友和 (友情出演)
おばちゃまの最愛の人。医者で羽臼医院の跡取り(婿養子)としても羽臼家から期待されていたが、ある日赤紙が届いてしまう。おばちゃまに戦地から戻ったら結婚すると誓うも戦死。その事実を受け入れられないおばちゃまは、彼を待ち続けることになる。
彼の軍服姿の写真がおばちゃまの鏡台に置かれているのを、軽い好奇心でおばちゃまの部屋に入ったオシャレが発見する。
三浦は併映作『泥だらけの純情』に主演(山口百恵とのコンビ6作目)しており、翌年には南田・大林と『ふりむけば愛』で組むことになる。
女教師 – 檀ふみ (友情出演)
7人が通う高校の先生。近日中にお見合い結婚することになっている。そのためか夏休みの計画を話す生徒達を見て、「いいなあ、夏休み!」と羨ましがる。
大林が本作以前に本格的にやろうとして脚本まで完成していた檀一雄原作の『花筐』が縁で特別出演。
東京駅の若者 – ゴダイゴ (友情出演)
出発前の7人の内、先にホームにいたオシャレを除く6人と何故か意気投合する。
ゴダイゴは、小林と共に本作の音楽を担当している。
以下ノンクレジット
靴屋のおじさん – 薩谷和夫
東郷先生が暮らす下宿先の1階で、靴屋を営んでいる。気だてが良く、東郷先生を始めとする住民達と仲がいい。
靴屋の女の子 – 大林千茱萸
おじさんの傍らで仕事を手伝う。
ホームで別れる恋人 – 大林宣彦
彼女との別れのひと時を、7人に邪魔される。いつまでも彼女に未練を持っていた模様。
ホームで別れる恋人 – 大林恭子
彼女が電車に乗る方。彼氏と別れてから結構サバサバしており、明るい表情で花束を持って客室に乗り込んでいった。
電車の乗客 – 桂千穂
派手なアロハシャツを着ており、その隣になぜかシロが座っていた。セリフ等は一切無いが、妙に存在感がある。
シロ – アカ
おばちゃまが飼っている白いペルシャネコ。