ハード・ターゲットは、1993年公開のアメリカ合衆国の映画。ジョン・ウー監督がハリウッドに進出した初の映画。ベトナムで心に傷を負いホームレスに落ちぶれた父の行方を探す女性弁護士。彼女に協力する、職にあぶれた船員を好漢ヴァン・ダムが、得意のマーシャル・アーツを駆使してタフに演じる。2016年には監督をロエル・レイネが務め、ヴァンダムと共演の多いスコット・アドキンスが主演で続編が製作された。
ハード・ターゲット 映画批評・評価・考察
ハード・ターゲット(原題:Hard Target)
脚本:28点
演技・演出:17点
撮影・美術:17点
編集:8点
音響・音楽:7点
合計77点
今作品は劇場公開時に見に行きました。『キックボクサー』『ユニーバーサル・ソルジャー』ですっかりヴァン・ダムの魅力に夢中でした。
ヴァン・ダムの格闘アクションにジョン・ウー監督の演出とカメラワークが加わり、良い意味でのハリウッド版香港映画なのが今作。終始男臭い、実に男臭い空気感が漂った作品です。ヴァン・ダムといえば美しい飛び後ろ回し蹴りや寸止め上段蹴りなどキレのある格闘術が代名詞になりましたが、ジョン・ウーの演出だとさらにそれが際立つものとなっています。
また、ランス・ヘンリクセンが重厚な悪役を演じているので浮つきを感じないこともあり、緊張感がラストまで続く作品です。
この映画はジョン・ウーが『ハードボイルド/新・男たちの挽歌』を作った翌年に製作された映画です。当時のユニバーサル・ピクチャーズの会長であるトム・ポラックが、『狼 男たちの挽歌・最終章』を見た後でジョン・ウーに白羽の矢が立てました。しかし、当時英語があまり話せない監督がこれほどの大作に参加するのは不安であると判断してもいたため、サム・ライミにウーの動向を監視し、万が一の時は監督を引き継ぐように指示を出しました。しかしサム・ライミ自身はウーの香港時代の映画の熱狂的なファンであり、ウーの腕に信頼を置いていました。また、ライミは「ウーが70%の力を出す時、それはアメリカのアクション映画監督の100%の力に当たる」と評しています。
ハード・ターゲット あらすじ(ネタバレ)
寂れたニューオリンズの街でホームレスの男が殺し屋集団に追われ殺害された。その数日後、弁護士のナターシャ・ビンダーは音信不通となった父ダグラスを心配して単身ニューオリンズを訪れるが、ダグラスが借りていたアパートの大家から、彼が勤務先の石油掘削会社をリストラされ、家賃を滞納したまま姿を消したと告げられる。地元の警察に失踪届を提出しに訪れたものの、警察署では折しも警官たちが待遇改善要求を掲げてストライキを起こしており、応対に出た女刑事ミッチェルも、ホームレスの失踪など日常茶飯事とまともに取り合わない。
やむなく単独で父親探しを行おうとスラム街をさまよううち、自分をレイプしようとするチンピラに絡まれてしまう。そこに若くたくましい男が現れ、すさまじい格闘術でチンピラたちを撃退する。男はチャンス・ブードローといい、かつてアメリカ海兵隊武装偵察部隊で活躍した凄腕の軍人だった。退役後は商船員として働いていたが、香港で横暴な船長を半殺しにしたため、船員組合に睨まれて船員資格停止処分となり、失業中の身であった。父親探しに危険が伴うと判断したナターシャはチャンスをボディガードとして雇い入れようとするが、久し振りに船員の仕事に復帰できそうだった彼はナターシャの申し入れを断る。だが組合費滞納のため資格停止処分が解除されないことが判明し、船が出港する2日以内に滞納分の組合費を稼ぐため、ナターシャの依頼を引き受ける。
2人の調査が核心に迫ろうとした矢先、父親の焼死体が発見された。警察は死体を事故と断定したが、チャンスは遺留品のドッグ・タグの不自然な破損から、何者かによる殺害と判断する。やがて、チャンスの友人の黒人ホームレス、エライジャ・ローパーが、フランスの富豪エミール・フーションとその側近の南アフリカ人傭兵ピク・ヴァン・クリーヴの組織する殺し屋集団の追跡に遭い、嬲り殺された。フーションとヴァン・クリーヴは人間を標的としたハンティングを楽しみたい上流階級のセレブたちを高額な手数料でゲームに参加させ、ホームレスの中から特に軍や警察の特殊部隊出身といった経歴を持つ選りすぐりの標的をピックアップしては、警察組合のゼネストで警察の機能が低下しているニューオリンズでセレブたちにハンティングをさせていたのだ。
ニューオリンズでのハンティングもそろそろ潮時と判断した二人は、検死報告を捏造させるために買収した監察医のモートンや標的をピックアップさせていた手配師のランダルを口封じに殺害すると、自分たちの組織の存在を嗅ぎまわっているナターシャとチャンスを標的とした最後のハンティングを開始する。こうして、チャンスの反撃が始まる。
ハード・ターゲット スタッフ
監督:ジョン・ウー
脚本:チャック・ファーラー
製作:ジェームズ・ジャックス,ショーン・ダニエル
製作総指揮:サム・ライミ,ロバート・タパート,モシェ・ディアマン
音楽:グレーム・レヴェル
主題歌:「Born on the Bayou」クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル
撮影:ラッセル・カーペンター
編集:ボブ・ムラウスキー
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ,UIP
ハード・ターゲット キャスト
チャンス・ブードロー:ジャン=クロード・ヴァン・ダム
エミール・フーション:ランス・ヘンリクセン
ナターシャ・”ナット”・ビンダー:ヤンシー・バトラー
ピク・ヴァン・クリーフ:アーノルド・ヴォスルー
カーマイン・ミッチェル刑事:ケイシー・レモンズ
アンクル・ドゥヴェー:ウィルフォード・ブリムリー
ダグラス・ビンダー:チャック・ファーラー
エライジャ・ローパー:ウィリー・C・カーペンター
ランダル・ポー:エリオット・キーナー
ミスター・ロパッキ:ボブ・アピサ
フリック:ダグラス・フォーサイス・ロイ
フラック:マイケル・D・ライナート
モートン監察医:マルコ・セント・ジョン
イズマエル・ゼナン:ジョー・ウォーフィールド
マリー:レノア・バンクス
ウェイトレス:バーバラ・タスカー
職場代表:ランディ・チェラミー
刑事:ロバート・パヴロヴィッチ
ステファン:スヴェン=オーレ・トールセン
ジェローム:トム・ルポ
ピーターソン:ジュールス・シルヴェスター
通行人:テッド・ライミ