グリーンブックは、2018年公開のアメリカ合衆国の映画。ジャマイカ系アメリカ人のクラシック及びジャズピアニストであるドン”ドクター”シャーリーと、シャーリーの運転手兼ボディガードを務めたイタリア系アメリカ人の警備員トニー・ヴァレロンガによって1962年に実際に行われたアメリカ最南部を回るコンサートツアーにインスパイアされた作品である。第91回アカデミー賞では作品賞・助演男優賞など三部門を受賞した。本作は、シャーリーとヴァレロンガに対するインタビューや、劇中にも登場したヴァレロンガの妻宛ての手紙に基づき、監督のファレルや、ヴァレロンガの息子であるニック・ヴァレロンガによって製作された。題名は、ヴィクター・H・グリーンによって書かれたアフリカ系アメリカ人旅行者のための20世紀半ばのガイドブック「黒人ドライバーのためのグリーン・ブック」にちなんで付けられている。
グリーンブック 映画批評・評価・考察
グリーンブック(原題:Green Book)
脚本:40点
演技・演出:20点
撮影・美術:20点
編集:10点
音響・音楽:10点
合計100点(満点)
差別や偏見のある世界の中で愛と友情の成り立ちをユーモラスに描いたドラマ映画。見終わって、トニーの奥さんドロレスが主人公の二人を取り持っていたことに気づき、トニーの変化を誰よりも喜んでいたのはドロレスだった。この辺りはオープニングのトニーとラストのトニーの変化、その変化に気づいているドロレスの姿に注目して欲しいです。トニーに良い変化を与えたドクターにドロレスは感謝しますが、ドクターを救ったのはトニーでありドロレスでした。
グリーンブック あらすじ(ネタバレ)
舞台は1962年のアメリカ。ジム・クロウ法の真っただ中、トニー・“リップ”・ヴァレロンガはニューヨーク市のナイトクラブで用心棒をしていた。ある日、彼が働いているナイトクラブ「コパカバーナ」が改装工事のため閉鎖されてしまう。新しい仕事を探している矢先に、アメリカ中西部、ディープサウスを回る8週間のコンサートツアーの運転手を探しているアフリカ系アメリカ人のクラシック系ピアニスト、ドン・シャーリーとの面接を紹介される。ドンは、トニーの肉体的な強さや、物怖じしない性格を見込んで彼を雇うことにした。トニーは妻と子供2人の家庭を持っており、親戚も多いため、クリスマス・イブまでに自宅に帰るという約束のもと、ツアーに出発する。ドンのレコードレーベルの担当者は、アフリカ系アメリカ人の旅行者がモーテル、レストラン、給油所を見つけるためのガイドである「グリーンブック」1冊をトニーに提供する。
旅の始まりに早速ドンとトニーは衝突してしまう。ドンはトニーの粗野な性格や行動にうんざりし、彼の行動や言動を直すよう口を酸っぱくして注意するが、トニーはドンの言う「洗練された行動」をとるよう求められることに不快感を覚えていた。しかしツアーが進むにつれて、トニーはドンの類稀なるピアノ演奏の才能に感銘を受ける。ところが、ステージから下りたドンに対する彼の招待主と一般の人々から受ける差別的な扱いに、彼は改めて動揺してしまう。ツアー中にドンが入店したバーで彼が白人男性のグループにリンチされた時には、トニーが彼を救い、ツアーの残りの間、トニーはドンに1人で外出しないように叱責する。
旅の間中、ドンはトニーが妻に手紙を書くのを助けていた。トニーはドンに、離別した兄弟と連絡を取るように促すが、ドンは自分の職業柄と名声によって兄弟と離別し、妻とも別れたことを話す。南部ではドンがYMCAプールで同性愛者の白人男性と出会ったところを警官に咎められたが、トニーはドンの逮捕を防ぐために警官に賄賂を贈り事なきを得る。ドンはトニーが彼らの逮捕を無かったことにするために警官に「報いた」ことに憤慨した。その後、2人は日没後に黒人が外出していることを違法とされ警官に取り押さえられてしまう。車から引きずり出されたトニーは、ドンを侮辱した警官を殴打してしまい、2人は逮捕される。収監されている間に、ドンは彼の弁護士に電話したい旨を警官に伝え、外と連絡を取ることに成功する。だがドンが本当に電話したのは当時の司法長官ロバート・ケネディで、自分たち2人を解放するよう警官に圧力をかけて貰うことに成功する。
アラバマ州バーミンガムでのツアーの最終公演の夜、ドンは演奏するために招待されたカントリークラブの、白人専用レストランへの入場を拒否されてしまう。ドンは「このレストランで食事を取る。それが出来ないのなら今夜、演奏はしない。」とオーナーに言い放つ。オーナーはトニーに100ドルを提示し「ドンを説得してくれ」と頼むが更に侮辱的な発言をしたためトニーは殴りそうになるも、ドンの言葉で思いとどまる。ドンはトニーに「君が演奏しろというのなら今夜演奏する」というがそれに対してトニーは「こんなクソなところはやめよう」とクラブを後にする。トニーはドンを黒人のためのブラックブルースクラブ「オレンジバード」で夕食をとらせるために連れて行く。ドンの高級な服装は他の客の疑惑と好奇の視線を集めた。2人はそれを無視しカティサークと「今日のスペシャル」を頼むとウエイトレスは白人と黒人のコンビから「あなた、警官?」と訊くが、トニーは「そんなことあるかい」と答えドンが世界一のピアニストであると伝える。すると、ウエイトレスは「言葉より聴かせて」とステージのアップライトピアノを指す。ドンはショパンの練習曲作品25-11を弾き、演奏が終わると客は拍手をもって絶賛し、お店の箱バンドがステージに上がりブルースを奏で始めるとドンも合わせてアドリブを披露する。
トニーとドンはクリスマスイブまでに家に帰ろうと家路を北に急ぐ。途中で彼らは警察官に止められるが、警官は彼らのタイヤのパンクを指摘し助けようとしたのであり、彼らに対して嫌がらせはしなかった。その後、トニーは眠気と戦いながら「モーテルで休ませてくれ」というもドンは「あと少しだ」と励ます。そしてNYに帰って来た車を運転していたのはドンであった。ドンはトニーを自宅前で降ろし帰宅する。執事が「荷物をほどきましょうか?」と訊くと「いや今夜は家に帰れ」と促し、執事は微笑んで「メリークリスマス」と挨拶する。
トニー家では帰宅したトニーに「どんなことがあったか」を皆が訊く。1人が「あのニガーはどうだった?」と言うとトニーは「その言い方はやめろ」と諭し、その姿を見てトニーの妻ドロレスは微笑む。8週間の旅で夫の黒人に対する偏見は減ったのだ。旅立つ前に時計を預けた質屋の夫婦が「トニーの親戚に御呼ばれした」とパーティーを訪ね、一同は歓迎して迎える。そしてドアを閉めようとしたトニーがふと気付きドアを開けるとそこにはシャンパンボトルを持ったドンがいた。トニーは「ようこそ!」と喜んで2人は抱きあう。トニーはダイニングにいる親戚一同に「紹介する、ドクター・ドン・シャーリーだ」と紹介すると親戚一同は一瞬固まるも「彼の席を作れ!」と歓迎の意を表す。そしてドンとドロレスは紹介し挨拶の抱擁をする。そしてドロレスはドンの耳元で「手紙をありがとう」とお礼を言い、ドンは少し驚き、お互いに見つめあいながら微笑んで、もう一度挨拶の抱擁をする。
グリーンブック スタッフ
監督:ピーター・ファレリー
脚本:ニック・ヴァレロンガ,ブライアン・ヘインズ・カリー,ピーター・ファレリー
製作:ジム・バーク,ニック・ヴァレロンガ,ブライアン・ヘインズ・カリー,ピーター・ファレリー,クワミ・L・パーカー,チャールズ・B・ウェスラー
製作総指揮:ジェフ・スコール,ジョナサン・キング,オクタヴィア・スペンサー,クワミ・L・パーカー,ジョン・スロス,スティーヴン・ファーネス
音楽:クリス・バワーズ
撮影:ショーン・ポーター
編集:ポール・J・ドン・ヴィトー
製作会社:ドリームワークス・ピクチャーズ,アンブリン・パートナーズ,パーティシパント・メディア,コナンドラム・エンターテインメント,シネティック・メディア
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ,ギャガ
グリーンブック キャスト
トニー・“リップ”・ヴァレロンガ:ヴィゴ・モーテンセン
ドクター・ドナルド・シャーリー:マハーシャラ・アリ
ドロレス・ヴァレロンガ:リンダ・カーデリーニ
オレグ:ディメター・マリノフ
ジョージ:マイク・ハットン
ルディ:フランク・ヴァレロンガ
キンデル:ブライアン・ステパニック
ロスクード:ジョー・コーテス
アミット:イクバル・セバ
ジョニー・ヴェネス:セバスティアン・マニスカルコ
チャーリー:ピーター・ガブ
モーガン:トム・ヴァーチュー
ボビー・ライデル:ファン・ルイス
プロデューサー:P・J・バーン
アンソニー:ルイ・ベネレ
ニコラ:ロドルフォ・ヴァレロンガ
フラン:ジェナ・ローレンゾ
ルイ:ドン・ディペッタ
リン:スハイラ・エル=アーター
フランキー:ギャビン・ライル・フォーリー
カーマイン:ポール・スローン
マイキー:クイン・ダフィ
ポーリー:ジョニー・ウィリアムズ
ゴーマン:ランダル・ゴンザレス