悪は存在しないは、2023年公開の日本映画。東京に近い自然豊かな町を舞台に、アウトドア施設の建設を巡る地元住民の葛藤を描く。第80回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員大賞)を受賞。
悪は存在しない 映画批評・評価・考察
悪は存在しない(英題:Evil Does Not Exist)
第80回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員大賞)と国際映画批評家連盟のFIPRESCI 賞を受賞。
映画批評集積サイトのRotten Tomatoes(ロッテン・トマト)では、15件のレビューを対象にこの映画の支持率は93%、平均点は7.7/10となっています。 加重平均を使用するMetacriticは、9 人の批評家に基づいてこの映画に 100 点中 81 点のスコアを割り当て、「普遍的な評価」を示しました。
濱口監督は、環境問題がテーマか?という記者の問いに、監督は「語る立場にはないが」と断ったうえで「自分はすべては視覚的に考えるところからはじめ、それに今回の石橋さんとの調和を意識し、その間に自然がある。その自然に人間をおくと必然的に環境問題という言葉が出てくるが、それは大きな問題というより日常的な問題で、その解決には対話が必要だが、しかし今の社会は対話を尊重しておらず、それを映画にした」と答えています。
また、記者から「悪は存在しない」というタイトルに込めた意味を聞かれ、「そんなに含みはない」と答えつつ「シナハン(シナリオハンティング)をしているときに浮かんだタイトル。それがそのままプロジェクトのタイトルになり、この映画をご覧になった人が実際に“悪が存在するかどうか”をどう感じるのかはお任せします」と話し、観客が息をのんだというラストシーンの真意を問われ、「そんなに難しいことはないと思ってまして、何が起きたかは明白。それを考えたい人は考えていただきたいと思います」と答えています。
悪は存在しない あらすじ
山奥の小さな集落「水挽町」で暮らす寡黙な男・巧と、その一人娘・玲花。集落の人々は美しい森と澄んだ雪解け水に支えられて静かな暮らしを守ってきた。ある日、そこへ企業からキャンプ場建設の話がもちこまれる。企業はホテル施設を備えたキャンプ場「グランピング」の設置をうたっていた。これが実現すれば東京から多くの観光客を呼び込むかもしれないが、そこに置かれる浄化槽は、集落が誇りとする自然水を汚染するだろう。そしてこれはコロナ助成金目当てのずさんな計画らしい。ざわめきはじめる集落の人々。
住民説明会へやってきた事業側の男女に、集落の人々は理を尽くして反論する。この集落はもともと都会からの移住者ばかりだし、ここへ新たに加わりたいときちんと考えた計画なら反対する理由はなにもない。しかしその前に、この土地の人にとって自然水がどんな意味をもつのか、そこで暮らすことがどんな責任を負うことなのか、どうか一度よく考えてほしい。集落の人々のおだやかな姿勢に、事業側の男女は「地元の人は決して愚かではない」と態度を改め、計画のいいかげんさに気づくようになる。
しかし親会社は、助成金の申請期限が迫っているし、ガス抜きの説明会が済んだ以上、予定どおり設置をすすめればよいと方針を曲げない。説明会に出た男女は板ばさみとなって困惑し、集落から信頼を得ているらしい巧に協力をあおぐことを思いつく。そしてふたたび集落を訪ねるうち、森と山の自然が人間にとって善でも悪でもなく、ただ人間の世界とは別にそこに並立している存在だとかすかに気づき始める。そんな中、巧の娘・玲花の様子がしだいに変わりはじめる。
悪は存在しない スタッフ
監督:濱口竜介
脚本:濱口竜介
企画:濱口竜介,石橋英子
プロデューサー:高田聡
撮影:北川喜雄
録音:松野泉
整音:松野泉
音楽:石橋英子
編集:濱口竜介,山崎梓