キューブは、1997年公開のカナダ映画。立方体(キューブ)で構成されトラップが張り巡らされた謎の迷宮に、突如放り込まれた男女6人の脱出劇を描く。「ワンセット物で登場する役者は7人」という低予算作品。終始張り詰めた緊張感の中で物語が進んでゆく。ビデオ版、DVD版に収録されているナタリ監督の短編映画「Elevated」が本作の原点である。後に売れっ子になるテレビドラマ『スターゲイト・アトランティス』のロドニー・マッケイ役デヴィッド・ヒューレットや『スーパー・ナチュラル』のデス(死)役ジュリアン・リッチングスが出演している。
キューブ 映画批評・評価・考察
キューブ(原題:CUBE)
脚本:38点
演技・演出:17点
撮影・美術:16点
編集:9点
音響・音楽:6点
合計86点
90年代後半に登場したカルト映画キューブ、テイストは80年代風のSF映画なんですが、現在の主人公(登場人物全員が主人公)がいないリアリティ番組を見ているような感覚があり、無機質で閉鎖的な空間が舞台だからこそ登場人物に感情移入してしまう作品です。オープニングのデス(スーパーナチュラル)のイメージが強い名優ジュリアン・リッチングスの解体ショーが衝撃的でした。このシーンは、『バイオハザード』『ゴーストシップ』などに影響を与えるというかほぼ丸パクリされています。オープニングが衝撃的過ぎて出オチしちゃってる感じですが、この映画の秀逸なところは人間ドラマにあります。過去の経験から自信過剰なタイプ、暴力的で根拠もなく感情に訴えるタイプ、黙々と理論立てて結果を注視するタイプ、正義感が強いものの融通が利かないタイプ、極限状況でも無気力なタイプ、〇〇〇〇だけど実は数学の天才だったキャラクターなど登場人物が実に個性的です。サバイバル・リアリティ番組になっていて視聴者がずっと観客的視点で登場人物を見守る感覚になってしまいます。肩書や職業といったもので人を判断してはいけないことや敵対することのデメリットが見て取れる作品で、短時間の中でよくも表現できたなと思える素晴らしい脚本でした。
※キューブの続編は、キューブ2とキューブゼロが正式な続編ですが、監督が異なることから一作目の面白さが無いので評価が低いです。また、続編に見せかけたキューブ〇〇〇といった偽物が多数あるので要注意です。
キューブ あらすじ(ネタバレ)
ある日突然、立方体の部屋の集合体である異空間に、理由も不明なまま閉じ込められた人々。警察官のクエンティン(モーリス・ディーン・ホワイト)をリーダーに、数学を専攻する少女レヴン(ニコール・デボアー)、中年の女医ハロウェイ(ニッキー・ガーダグニー)、この建造物の実体を知らされぬまま外壁だけを設計させられたというワース(デイヴィッド・ヒューレット)らが脱出を図る。彼らは各部屋の面ごとに6つあるハッチを通って移動しながら出口を探すが、まず有名な刑務所脱獄犯レン(ウェイン・ロブソン)が仕掛けられたトラップの餌食に。途中、精神障害者の青年カザン(アンドリュー・ミラー)が加わり、レヴンが安全な部屋を確認する法則を発見。彼らはようやく外壁まで到達するが出口はない。焦燥の中、クエンティンは仲たがいしたハロウェイをひそかに始末、レヴンだけを連れて行こうとしてワースと争う。さらに、いつの間にか彼らは出発地点の部屋に戻ってしまっていた。戦慄する彼らだが、ここでようやく部屋の謎が解ける。元々いた場所は立方体の中に存在する巨大な船橋を一定の時間ごとに移動しており、そこに戻ることができれば、出口が見つかるはずなのだ。その法則を解く因数の数は計算機なしには解けないはずだったが、なんと実は天才的な計算能力を持っていたカザンのおかげで一同はいよいよ脱出を開始。凶暴さを増すクエンティンを置き去りにしてようやく太陽射す出口にたどりついた3人。だがそこでレヴンは追いついたクエンティンに殺され、ワースはカザンだけを脱出させてクエンティンを道連れに果てた。光の中、カザンは歩み出す……。
キューブ スタッフ
監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ
脚本:ヴィンチェンゾ・ナタリ,グレーム・マンソン,アンドレ・ビジェリク
製作:メーラ・メー,ベティ・オア
製作総指揮:コリン・ブラントン
音楽:マーク・コーヴェン
撮影:デレク・ロジャース,スコット・スミス
編集:ジョン・サンダース
配給:シネプレックス・オデオン・フィルムズ,トライマーク・ピクチャーズ,ポニーキャニオン,クロックワークス
キューブ キャスト
クエンティン:モーリス・ディーン・ウィント
肉体派黒人男性。3人の子供がいるが、妻とは別居している。警察官という職業柄、その行動力でメンバーを牽引する。しかし、極限状態の中で次第に利己的な性格が露呈し、凶暴な独善者へと変貌する。ハロウェイとレンの死亡後、レブン、ワース、カザンと決裂し移動する部屋に置き去りにされてしまう。その後も執拗に一行の追跡を続け、出口に続く部屋にたどり着いた3人を襲撃し、レブンを殺害、ワースに致命傷を負わせる。出口に続く部屋をくぐったカザンを追おうとするものの、穴をくぐろうと半身を乗り出した瞬間にワースに足を掴まれて足止めされ、移動を開始した部屋の隙間に挟まれ寸断されて死亡した。
ハロウェイ:ニッキー・グァダーニ
中年独身女性。職業は精神科の開業医。博愛主義的な理想を持ち、正義感を振りかざしてキューブに閉じ込められた不条理に立ち向かう。その性格ゆえに独善的で無神経な言動の目立つクエンティンとの折り合いが悪くなっていく。最終的に命綱を付けてキューブの外壁を伝って下に降りる術がないかを探りに行ったとき、弾みを付けた反動で命綱が緩んでしまい、とっさに手を伸ばして腕を掴んできたクエンティンに見殺しにされて落下死した。
レブン:ニコール・デ・ボア
数学科の女子学生。退屈でつまらない毎日を送っていた若者であったが、突然キューブに放り込まれてパニック状態に陥る。クエンティンのリーダーシップに助けられ、徐々にやる気を持ち始める。各部屋に刻まれた番号に気付き、キューブの暗号解読に天才的な才能を発揮する。ワース、カザンと協力し独裁者と化したクエンティンの追跡を逃れつつ出口にたどりついたものの、追いついてきたクエンティンに背後から杭で刺され死亡した。
レン:ウェイン・ロブソン
小柄な初老の男性。7つの刑務所から脱獄し、“アッティカの鳥”の異名を持つ。目の前のことだけに集中し、無駄なことは一切考えない主義。部屋の入り口から靴を投げ入れてトラップを見分ける方法を編み出すが、その方法が通用しない仕組みの罠の部屋に当たってしまい、油断して部屋に入ったため、噴出した硫酸に顔を溶かされて死亡した。
ワース:デヴィッド・ヒューレット
無気力な独身男性。脱出に真剣味がなく胡散臭い雰囲気から、クエンティンに自分たちをここへ閉じ込めた者が差し向けたスパイではないかと疑われる。物語の後半で自分がキューブ外壁の設計者であることを暴露、外壁は一辺が130mの立方体であること、そして出口は一つしかないことを語り、レブンにキューブ脱出への大きな情報を与える。そしてカザン、レブンと協力して出口に繋がる部屋へとたどり着くが、クエンティンの襲撃に遭い、致命傷を負わされる。済んでのところで外を出ようとするクエンティンの足を掴んで足止めし、移動する部屋の隙間で寸断させて報いた後、そのままキューブに取り残されて落命した。
カザン:アンドリュー・ミラー
途中から参加した青年。他のメンバーから発見されるまでずっと部屋から動かなかったらしい。行動上の特徴からコミュニケーションでの障害を持ちつつ、数学的な能力に秀でていることからサヴァン症候群を持っていると考えられる。周囲の状況に適応する事が困難であるが故に何度もメンバーの足を引っ張るが、ハロウェイが献身的にサポートする。終盤に彼が因数分解の暗算を瞬時にやってのける才能の持ち主(参考:サヴァン症候群)であることが判明。暗号解読の切り札として活路を切り開いた。共に出口にたどり着いたレブン、ワース、追いかけてきたクエンティンが死亡したことにより、唯一の脱出者となった。
オルダーソン:ジュリアン・リッチングス
オープニングに登場するスキンヘッドの男性。物語冒頭でただ独りキューブの中で目覚め、事情も分からぬまま内部を移動しようとしたところ、折り畳み式の網状のワイヤーナイフの罠にかかり、サイコロステーキのようにバラバラに切り刻まれて死亡した。わずか数十秒間のこのシーンで「部屋にはトラップが仕掛けられており、むやみに動くと危険である」という設定を強烈に印象付けている。