遠い夜明けは、1987年公開のイギリス映画。アパルトヘイト政策をとる南アフリカ共和国を舞台に自由な理想社会を叫ぶ黒人男性と彼を支持する白人男性との熱い友情を描く壮大な叙事詩的映画。原作の『遠い夜明け』(Cry Freedom)は、アパルトヘイト政権下の南アフリカ共和国で殺害された最も著名な黒人解放活動家スティーヴ・ビコと南アフリカ共和国の有力紙デイリー・ディスパッチ紙の白人記者ドナルド・ウッズとの交友をベースに書かれている。ウッズは警察の監視下で密かにスティーヴ・ビコの死について調査し、それはウッズが南アフリカ共和国からイギリスに亡命後、出版された。
遠い夜明け 映画批評・評価・考察
遠い夜明け(原題:Cry Freedom)
脚本:34点
演技・演出:18点
撮影・美術:16点
編集:7点
音響・音楽:7点
合計82点
1970年代、アパルトヘイト(人種隔離政策)下の南アフリカで人種差別と闘った白人ジャーナリストのドナルド・ウッズと黒人運動家スティーブ・ビコの信念と友情を描く実話をもとにした重厚な社会派ドラマです。ウッズを演じるケビン・クライン、ビコを演じるデンゼル・ワシントン、名優の演技が見るものに迫ります。監督は「ガンジー」はじめ数々の名作を手がけ、「ジュラシック・パーク」など俳優としても活躍したイギリスの名匠リチャード・アッテンボローです。
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遠い夜明け あらすじ(ネタバレ)
1975年11月24日、南アフリカ共和国ケープ州クロスロード黒人居留地。突然、静寂を打ち破って次々と黒人たちを虫けらのように襲う武装警官の集団。大地は黒人たちの叫び声とともに血で染まって行く。この事実は無視され、平穏無事に公衆衛生が行なわれたという放送が数時間後にラジオから流された。黒人運動家のスティーヴ・ビコ(デンゼル・ワシントン)を白人差別の扇動者だと批判していた「デイリー・ディスパッチ」新聞の編集長ドナルド・ウッズ(ケヴィン・クライン)は黒人の女医ランペーレ(ジョゼット・シモン)に案内されて、ビコを訪れた。ビコは、ウィリアムズ・タウンで公権喪失の宣言を受け拘束下にあったが、何ら臆することもなく、許可地以外の黒人居留地にウッズを案内した。ウッズは自分の新聞社に2人の黒人を雇った。彼は、自分の信じる道を歩き続けるビコに心を揺り動かされた。ビコは幾度となく逮捕され、警察の暴力を受けていたがひるむことなく自分の考えを主張し続け、日に日に支持者を増やしていった。
しかし、ある日、彼が作りかけていた村が覆面の男たちに襲われた。この中に警察署長がいたことを知ったウッズは、クルーガー警視総監(ジョン・ソー)に訴えたが、全ては彼の命令で動いていたのだった。やがてウッズにも監視の眼が向けられ始め、彼の新聞社で働き出していた2人の黒人が逮捕された。その頃、独房に入れられていた黒人男性が自殺するという事件が起こったが、調査の結果、看守が糸で吊ったマペトラの人形を囚人に見せたという事実が判明。このような不穏な動きによって、ケープタウンの黒人学生集会に参加するために旅立ったビコは、途中の検問で逮捕されてしまった。狂気のような拷問の続くなか、1977年9月12日、彼は遂に帰らぬ人となってしまった。
この知らせは人々に涙を溢れさせ、ウッズの心に堅い誓いを立てさせた。自由を求めた闘士ビコの姿を全世界に伝えることを。この頃、彼への弾圧は激しくなり、更に妻や子供たちまでもが危険にさらされ出した。命の保障さえもない状況のなか、彼はビコの死の真相を暴き、英国へ行くことを決意した。
家族以外の人間とは同時に1名以上とは接触できないという厳重な監視の許、ビコとの友情に生きようとするウッズのひたむきな姿に心打たれる妻のウェンディ(ペネロープ・ウィルトン)。ウッズが閉塞状況の中で書いた原稿を国外へ持ち出そうという計画が練られた。そして1977年大晦日。ウッズは不滅のビコの姿を胸に、妻と5人の子どもたちとは別々のルートながら、自由の証を手にするために、壮烈で危険な逃避行に旅立った……。
ウッズに提案された方法は、まず最初に神父に変装し、最も近い隣国のレソト王国まで逃げ込み、そしてそこから飛行機でボツワナまで亡命する計画だった。途中何度もあわやのところを辛くも逃げ切り、無事にボツワナ行きの飛行機の搭乗に成功した。映画はウッズの乗った飛行機が大空に高く飛ぶ後姿を映して終わっており、ラスト直前にはソウェト蜂起への回想シーンが挿入されている。エンディングは「コシシケレリ・アフリカ(アフリカの歌)」をBGMとし、ビコも含めて拘禁中に死亡した反アパルトヘイト活動者たちの氏名と没年および享年、政府発表死因が連続的に表示される。
遠い夜明け スタッフ
監督:リチャード・アッテンボロー
脚本:ジョン・ブライリー
原作:ドナルド・ウッズ
製作:リチャード・アッテンボロー
製作総指揮:テレンス・クレッグ
音楽:ジョージ・フェントン,ヨナス・グワングワ
撮影:ロニー・テイラー
編集:レスリー・ウォーカー
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ,UIP
遠い夜明け キャスト
ドナルド・ウッズ:ケヴィン・クライン
スティーヴ・ビコ:デンゼル・ワシントン
ウェンディ・ウッズ(ドナルド・ウッズの妻):ペネロープ・ウィルトン
ケン:ケヴィン・マクナリー
マンペラ・ランペーレ医師:ジョセット・サイモン
ビコの妻:ジュアニタ・ウォーターマン
カニ神父:ゼイクス・モカエ
クルーガー警察庁長官:ジョン・ソウ
ドン・カード:ジュリアン・グローヴァー
検察官:イアン・リチャードソン
レソト駐在高等弁務官:アレック・マッコーエン
警察署長:ティモシー・ウェスト