コマンドーは、1985年にアメリカ合衆国で公開されたアクション映画。本作品は、前年(1984年)の『ターミネーター』の悪役を演じたアーノルド・シュワルツェネッガーが、転じて屈強で勧善懲悪のヒーローを演じたヒット作。シュワルツェネッガーはビルドアップされた肉体と、それを存分に活かしたアクションを披露し、この作品で正義の味方としてのイメージを確立すると共に、アクションスターの地位を不動のものとした。
コマンドー 映画批評・評価・考察
コマンドー(原題:Commando
脚本:30点
演技・演出:16点
撮影・美術:14点
編集:9点
音響・音楽:7点
合計76点
この映画のベースにあるのは、マーク・L・レスター監督が全世界に衝撃を与えた学園バイオレンス・アクション「処刑教室」の拡大版とも言えるし、脚本のスティーヴン・E・デ・スーザは、このあと、ダイ・ハードを手掛ける。気の利いたセリフは彼の才能のところが大きい。また、この作品の次に製作のローレンス・ゴードンとジョエル・シルバーは「プレデター」を手掛けることになる。この作品からシュワルツェネッガーしかり、彼らの時代となっていく。
数々の名セリフが生まれ、日本でもカルト的人気を誇る映画に成長。最強の父親の代名詞的な作品となっているため映画好きがよく今作品を引用することがある。長年の人気ぶりを考察する限り、アクションよりもセリフとシュワルツェネッガーの父親像がファンから愛されているように思われる。
コマンドー あらすじ(ネタバレ)
かつて精鋭部隊・コマンドーの指揮官として名を馳せたジョン・メイトリックスは軍を退役し、愛娘・ジェニーと山荘での静かな生活を送っていた。ある日、二人が暮らす山荘をメイトリックスのかつての上司・カービー将軍が訪れ、メイトリックスにコマンドーの元隊員たちが次々と殺害されていることを伝え、護衛として山荘に部下を残してゆく。しかしカービーが去った直後、謎の武装集団が山荘を襲撃。護衛たちは殺害されジェニーが連れ去られる。メイトリックスは必死に追跡を試みるが失敗し、彼もまた武装集団に拘束される。
犯人は、過去にコマンドー部隊の工作により失脚したバル・ベルデ共和国の独裁者・アリアスの一味で、その中にはメイトリックスのかつての部下で、一味に殺害されたはずのベネットも加わっていた。メイトリックスに恨みを持つベネットは、アリアス一味に協力して自分の死を偽装し、カービー将軍がメイトリックスに接触するのを待っていたのだった。そして、ジェニーの命と引き換えに、メイトリックスは現バル・ベルデ大統領の暗殺を強要される。
やむなくメイトリックスは、一味の監視の下バル・ベルデへ向かう旅客機に乗り込む。しかし、一瞬の隙を突いて同行の見張りを殺すと離陸直後に飛行機の前輪格納室から脱出し、すぐさまジェニーが捕らわれているアリアスの拠点を突き止めるべく隠密行動を開始する。飛行機がバル・ベルデに到着するのは11時間後、その時間内に拠点を突き止められず、自分が飛行機から脱出したことが一味に知れればジェニーは殺される。
空港でバル・ベルデ便の離陸を監視していた一味の1人・サリーを追うメイトリックスは、サリーに口説かれていた客室乗務員・シンディに目をつけ、脅迫に近い手段で強引に協力を求める。初めのうち、シンディは粗野なメイトリックスの態度に不信を抱くが、成り行きで行動を共にする内に、愛娘への思いを語る彼の言葉を信じるようになる。メイトリックスはシンディに助けられながら拠点の位置を突き止め、軍放出品店を破って武器や装具を調達、いったんは駆けつけた警察に逮捕されるが護送車から脱走し、一味の水陸両用機(グラマン・グース)を奪ってアリアスの拠点である孤島に辿り着く。
そして、メイトリックスは完全武装して孤島に乗り込み、大挙して襲い掛かるアリアスの軍勢を一人で殲滅し、自ら銃を取ったアリアスをも倒した。しかし、最後に残ったベネットはジェニーを人質にとり、メイトリックスと対峙する。メイトリックスはベネットを挑発して一騎討ちに持ち込み、苦戦の末に勝利しジェニーを救出する。その後、救援に来たカービーはメイトリックスに軍への復帰を要請するが、メイトリックスはこれを断り、ジェニーとシンディを伴い水上機で島を飛び去ってゆく。
コマンドー スタッフ
監督:マーク・L・レスター
脚本:スティーヴン・E・デ・スーザ
原案:ジョセフ・ローブ三世,マシュー・ワイズマン,スティーヴン・E・デ・スーザ
製作:ジョエル・シルバー,ローレンス・ゴードン
音楽:ジェイムズ・ホーナー
主題歌:パワー・ステーション「We Fight For Love」
撮影:マシュー・F・レオネッティ
編集:マーク・ゴールドブラット
製作会社:シルバー・ピクチャーズ
配給:20世紀フォックス
コマンドー キャスト
ジョン・メイトリックス:アーノルド・シュワルツェネッガー
優秀なコマンドー部隊隊長(現地指揮官)として各国を転戦し活躍したが、若くして退役する。最終階級は大佐。妻はジェニーを産んだ後に亡くなっている。その後は林業で生計を立てながら山奥の小さな家で娘と平和に暮らしていた。アリアスの一味に襲撃され、娘を人質にされて現大統領暗殺を強要されるも、ただ一人で娘奪還に向け行動する。電話ボックスを持ち上げて投げ飛ばす、大勢の警備員をあっという間にのしてしまう、横転した車を立て直す、車に跳ねられても飛行機から落ちても全く無傷等人間離れした屈強な肉体と行動力を持ち、拳銃からマシンガン、ロケットランチャー、ナイフなどあらゆる武器を使いこなし、格闘戦術も強く、自動からセスナの操縦もこなす等大勢の兵士相手をも圧倒する実力者。それだけではなく敵の心理面を読み取る戦術や洞察力にも優れている。ディアズとの交渉場面では right? と聞かれたのに対して対義語の wrong! で答え、これは「断る!」などの意味となるが、テレビ朝日版や吹替の帝王版では、「OK!」となっている。原語では娘であるジェニーとの会話の中で東ドイツ出身らしきことが示唆されている。
ジェニー・メイトリックス:アリッサ・ミラノ
メイトリックスの娘。11歳。料理もこなすが、手作りのサンドイッチには「聞かないほうがいい」具材が挟まれていた。子供らしい明るく無邪気な性格だが、アリアス一味に脅されても強気に言い返す程気が強く、誘拐されるも脱出を図るなど父譲りの勇敢さと聡明さを持つ。なおジェニーの母は、ジェニーを産んだ際に亡くなっている。
シンディ:レイ・ドーン・チョン
旅客機の添乗員。勤務予定の飛行機便がキャンセルとなり、空港ロビーで偶然サリーに口説かれたために、メイトリックスと行動することになる。当初は反抗するが、メイトリックスが娘のためにサリーを追跡していることを知り、彼に協力する。飛行士訓練学校に通っており、軽飛行機ではあるが飛行機の操縦経験もある。愛車はサンビーム・アルパイン。
アリアス:ダン・ヘダヤ
バル・ベルデの元大統領であり、拷問によって大勢の人間を殺した男。メイトリックス率いるコマンドー部隊の策により失脚し、姿をくらましていたが、ベネットやクック、自身を支持する部下を従え、再び大統領に返り咲こうと企む。バル・ベルデの現大統領ベラスケスの暗殺をメイトリックスに行わせようと考え、ジェニーを人質に取り暗殺を強要する。その後娘を取り戻しに島に、そして邸宅内に乗り込んできたメイトリックスに単身応戦するものの、一瞬の隙をつかれ射殺される。
ベネット:ヴァーノン・ウェルズ
元コマンドー部隊の一人で、メイトリックスのかつての部下。最終階級は大尉。楽しんで人を殺す凶暴な性格が原因で、バル・ベルデ現大統領ベラスケスから国外退去処分を受け、メイトリックスにも部隊を追い出された。その後は漁師をしていたが、その恨みをいつか晴らそうと考えていた折にアリアスに10万ドルで雇われ、彼の計画に加担。自分もメイトリックスの元部下として何者かに殺されたと思われるよう罠を仕掛け、メイトリックスを捕らえることに成功する。心底ではプロの兵士としてメイトリックスの実力を恐れており、アリアスにそのことを指摘されると素直に認めていた。メイトリックスが島に乗り込んできた際にはジェニーを人質にとり一度は優位に立つが、挑発に乗せられてナイフでの一騎討ちに応じ、その果てにメイトリックスに鉄パイプで背後のボイラーごと貫かれる。
フランクリン・カービー将軍:ジェームス・オルソン
メイトリックスのかつての上官。階級は陸軍少将。メイトリックスに戦闘訓練を施した。メイトリックスのかつての部下たちが次々と殺されていることを伝え、警護の兵を付ける。しかし、これこそがアリアスの策であり、敵にメイトリックスの居場所を教える結果となる。裏で行方をくらましたメイトリックスが行った蛮行の後始末をしていたが、軍放出品店から武器を強奪したことまでは収拾できなかったようで、これから始まることを”World War III(第三次大戦)”と表現する。当初はリチャード・クレンナが演じることになっていた。
サリー:デヴィッド・パトリック・ケリー
アリアスに雇われた男。女好きで、シンディを口説こうと執拗に付きまとう。メイトリックスを飛行機に乗り込ませるときに「娘の面倒は俺がしっかりみててやるよ」と挑発する。それが彼の怒りを買い、結果的には命取りになる。空港でメイトリックスを乗せた飛行機が飛び立つのを確認し、次に偽造パスポートの調達に向かったショッピングモールでメイトリックスの姿を目撃。すぐにアリアスたちに報告しようとするもメイトリックスに阻まれ逃走を試みる。カーチェイスの末に車を横転させられた挙句、利き手ではない力の加減が不安定な腕で絶壁で宙吊りにされる。メイトリックスには空港で挑発した際に「最後に殺す」と言われていたものの、必要な情報を聞き出されると「あれは嘘だ」の一言とともに崖下へ落とされた。
クック:ビル・デューク
アリアスに雇われた元グリーンベレーの兵士。メイトリックスのかつての部下(ローソンとフォレスタル)を殺し、ベネットの偽装死にも加担する。サリーが泊まっていたモーテルを訪れた際、手掛かりを得るために忍び込んでいたメイトリックスと戦うが、運の悪さもあり、突き飛ばされた拍子に、倒れていたテーブルの脚が胸に突き刺さって絶命。
ディアズ:ゲイリー・セルヴァンテス
アリアス一味のひとり。クックとともに元コマンドー隊員を殺害する。山荘を襲撃し、部屋にとどまってメイトリックスにジェニーを拉致したことを伝え協力を求めるが、一味の車を発見したメイトリックスに問答無用で頭を撃ち抜かれ射殺される。
エンリケス:チャールズ・メシャック
アリアスの部下。メイトリックスの見張りとしてバル・ベルデ行きの旅客機に乗り込むが、隣席のメイトリックスに不意をつかれて首の骨を折られ、寝ているように細工される。飛行機がバル・ベルデに到着した際、彼の遺体が現地の部下に発見され、メイトリックスの逃亡がアリアス側に露呈する。サリーとは軍隊時代からの仲。
ローソン:ドリュー・シュナイダー
メイトリックスの元部下。退役後はレスリーという女性と結婚し暮らしていた。しかし清掃員に扮したクックとディアズにより銃殺される。
フォレスタル:マイケル・デラノ
メイトリックスの元部下。退役後は車のセールスマンとして働いていた。客を装ってやってきたクックが展示車を走らせ逃走する際にはねられ、死亡する。
ケイツ警備員:ウォルター・スコット
メイトリックス達が立ち寄ったショッピングモールの警備員。シンディがメイトリックスからサリーをここまで連れてくるよう頼まれた際、サリーがいた店内にたまたまいたケイツにシンディが助けを求めた。その後ビッグスにも応援を求めメイトリックスに職務質問するも、彼からのされてしまう。
ビッグス警備員:グレッグ・ウェイン・イーラム
メイトリックス達が立ち寄ったショッピングモールの警備員。ケイツから応援を求められた際に客の女性らと話をしており、彼女らにカッコいいところを見せると宣言するも、メイトリックスにのされてしまう。
沿岸警備艇レーダー迎撃士官:ビル・パクストン