ブラック・レインは、1989年公開のアメリカ合衆国の映画。大阪の街を舞台に日米の刑事たちが協力してヤクザと戦う物語を描いた。豪華な日本人キャストでも話題になった。劇場映画作品としては松田優作の遺作である。松田優作は、この映画の撮影の時点ですでに癌に侵されていたが、病をおして撮影に臨んだ(癌の事実を知っていたのは安岡力也のみだった)。しかし、映画公開直後に急死し、この映画がもとで親交を深めたチャーリー役のアンディ・ガルシアはその死を悼んだ。この作品制作中の評判で、松田の次回作にロバート・デ・ニーロ出演、ショーン・コネリー監督作品のオファーが来ていた。
ブラック・レイン 映画批評・評価・考察
ブラック・レイン(原題:Black Rain)
脚本:27点
演技・演出:16点
撮影・美術:15点
編集:8点
音響・音楽:8点
合計74点
監督がリドリー・スコットで、撮影監督がヤン・デボンということもありアクションシーンは見応えがあり、陰影のある映像美は見事なのですが、主演のマイケル・ダグラスのキャラクターが魅力不足で、高倉健、松田優作、若山富三郎のような日本映画代表格の俳優と比較するとかなり見劣りしてしまいます。マイケルの演技がよくないというより、役柄が微妙だったと思われます。アンディ・ガルシアについても同様です。アクションシーンにスタントを使わず、全て本人が演じた松田優作ですが、彼のこれまでの作品と比較すると魅力的だったとは思えません。この映画で松田優作を評価するのなら過去の作品をもっと見たらいいと思います。
ブラック・レイン あらすじ(ネタバレ)
ニューヨーク市警察本部捜査課の刑事ニック・コンクリンは妻と離婚し、その子供の養育費を稼ぐのに日々苦労していた。そして、彼は麻薬密売事件の売上金を横領した嫌疑をかけられ、監察官たちから査問を受けていた。そんなある昼下がり、ニックと、同僚のチャーリー・ビンセントは、レストランに居た日本のヤクザの幹部と子分を、もう一人のヤクザが刺殺する現場に出くわす。追跡の末に男を逮捕するものの、日本国内での犯罪で指名手配されていたため、その男・佐藤浩史を日本に護送することになった。
佐藤を護送する任に就き大阪まで向かう2人だったが、伊丹空港で警察官を装った佐藤の手下たちに佐藤を引き渡してしまう。権限がないにもかかわらず、強引に大阪府警察の捜査に加わろうとするニックとチャーリーだが、刑事部長の大橋警視はそれを許さず、2人の銃を押収した上で刑事部捜査共助課の松本正博警部補を2人の監視役につけた。ニックとチャーリーは松本から佐藤に関する情報を受け取る一方、佐藤のアジトに突入する大阪府警の捜査に強引に参加し、松本は大橋に監督不行き届きを叱責される。ニックは佐藤のアジトからくすねたドル紙幣を燃やし、紙幣が偽札であることを突き止め、松本に知らせようとするが、証拠品を盗んだことを咎められ、険悪な状態に陥ってしまう。
しっくりこないニックと松本の関係を修復しようと、チャーリーがクラブで仲を取り持とうとするが、ニックは佐藤への執着から一人席を外し、クラブ・ミヤコ外人ホステスのジョイスへ情報収集のため近付く。クラブ・ミヤコの帰り道、ふとしたことからニックはチャーリーとはぐれてしまう。チャーリーは自分のパスポートをコートごと暴走族に奪われたことで、佐藤の罠にはまる。そして佐藤は自分を逮捕したことへの復讐として、ニックの目の前で相棒のチャーリーをなぶり殺しにする。ニックは佐藤への復讐を誓い、本格的に佐藤を追うことになる。
事あるごとに反発し合うニックと松本だが、やがて捜査を進めていくうちに信頼関係が生まれていく。捜査を進めるうちに、偽札製造を巡る抗争が背景の事件であり、それが親分である菅井と、元子分で新興勢力の佐藤との抗争でもあることが判明していく。ニックと松本は再び佐藤のアジトを捜索し、クラブ・ミヤコのホステスの影が見えるようになり、彼女を尾行する。銀行の貸金庫から”ある物”を取り出し、尾行をまく工作をするもののニックにあっさりと見破られ、空港でのニセ警官の一人を見かけ、その男を尾行することにする。ニックは佐藤と菅井の会談現場を目撃し、佐藤を後一歩まで追い詰めたものの、大阪府警に邪魔された上、取り逃がしてしまう。その上、ニック自身勝手な行動をしたということでアメリカへ強制帰還させられることになり、松本も停職処分を受ける。
佐藤への復讐を諦めきれないニックは出発直前の飛行機から脱走し、松本のいる家へ向かい、再び捜査をしようと持ちかけるが、「組織人として、これ以上は協力できない」と断られてしまう。そこでニックは、ジョイスから菅井に接触するための情報を得た後、佐藤逮捕のための協力を菅井に申し出る。菅井は佐藤と手打ちになったことを理由に申し出を断るが、「個人である自分が、相棒の復讐のために勝手に佐藤を抑える」と条件を付けたことで、ニックを手打ちの会談場所である郊外の農場に連れ出す。ニックは周囲の森に身を隠すが、そこに松本が現れ協力を申し出る。そこでニックは、佐藤が周囲に子分を配置して菅井を殺そうとしていることを知る。
佐藤は手打ちの場で菅井を襲い、それを合図に子分たちが菅井の子分と銃撃戦になる。ニックも会談場に乗り込み、逃走する佐藤を追跡する。ブドウ畑で佐藤を追い詰めたニックは、格闘戦の末に佐藤を逮捕して松本と共に大阪府警に連行し、2人は大橋から表彰される。松本はニックを空港まで見送り、彼の息子宛てに土産を手渡し、ニックもお返しに松本の息子宛ての品を手渡し、搭乗口に向かう。松本がニックの土産を開けると、箱の中には行方不明になっていた偽札の原板が入っている。それに驚いた松本がニックを呼び止めると、ニックは彼に向かってサムズアップをして帰国していく。
ブラック・レイン スタッフ
監督:リドリー・スコット
脚本:クレイグ・ボロティン,ウォーレン・ルイス
製作:スタンリー・R・ジャッフェ,シェリー・ランシング
製作総指揮:クレイグ・ボロティン,ジュリー・カーカム
音楽:ハンス・ジマー
主題歌:グレッグ・オールマン「I’ll be Holding On」
撮影:ヤン・デ・ボン
編集:トム・ロルフ
配給: パラマウント映画, UIP
ブラック・レイン キャスト
ニック・コンクリン:マイケル・ダグラス
チャーリー・ビンセント:アンディ・ガルシア
松本正博警部補:高倉健
ジョイス(クラブ・ミヤコのホステス):ケイト・キャプショー
佐藤浩史(菅井の元子分):松田優作
大橋(大阪府警察本部刑事部長):神山繁
オリヴァー(ニックの上司):ジョン・スペンサー
片山(佐藤の子分):ガッツ石松
梨田(佐藤の子分):内田裕也
菅井国雄:若山富三郎
菅井の用心棒:安岡力也
菅井の用心棒:プロフェッサー・タナカ
吉本(佐藤の子分):國村隼
菅井の子分:島木譲二
佐藤の情婦(クラブ・ミヤコのホステス):小野みゆき
松本の息子:ケン・ケンセイ
フランキー(賭けレースの元締め):ルイス・ガスマン
クラウン(ニューヨーク市警察本部監察官):リチャード・リール
大橋の部下:阿波地大輔佐々五郎伊吹太郎
農夫に変装した刺客:アル・レオン
手打ちの場のヤクザの組長:林彰太郎
指詰めの刀を持ってくる組長:小幡利城
ニックにうどんの食べ方を教える女性:津島道子
橋の上のホームレス:田口哲