パーフェクト・ワールドは、1993年のアメリカ合衆国の映画。脱獄犯と人質の少年との交流、そして男を追う警察署長の苦悩を描いた犯罪ドラマ。
パーフェクト・ワールド 映画批評・評価・考察
パーフェクト・ワールド(原題: A Perfect World)
脚本:37点
演技・演出:18点
撮影・美術:15点
編集:8点
音響・音楽:8点
合計86点
泣ける名作映画として名高く、映画好きな人に泣ける映画を聞いたら、挙がってくる作品です。
ちなみに僕でも泣けた映画です。
この作品は、アメリカの田舎の風景を背景に脱獄囚と人質となった少年との逃走劇を描いています。いわゆるロード・ムービーの形式で、逃走中の旅路にさまざまな出来事が起こり、登場人物が演出されることで登場人物たちの性格やトラウマが見えてきます。
ケビン・コスナー演じるブッチは、凶悪犯になってしまった人生を送り、その一方でイーストウッド演じる州警察署長のレッドは、過去にブッチが凶悪犯になるきっかけを与えてしまった事に苦悩しています。少年のフィリップは、親の都合(宗教)で自由を奪われていましたが、ブッチとの出会いで心の自由を手にしていきます。
また、ブッチは幼少期に自身の父親がクズだったこともあり、本人が描く理想の父親像でフィリップに接しているようにも見えます。
ただ、クズだった父親への執着心なのか愛なのか、彼は終始父親へのこだわりを見せます。
この映画は、彼の理想とする世界にいる父親の幻像を追った旅路だったのかもしれません。
パーフェクト・ワールド あらすじ(ネタバレ)
1963年秋のアメリカ合衆国テキサス州。刑務所から脱獄したテリーとブッチは、逃走途中に民家へ押し入り、8歳の少年フィリップを人質に逃亡する。しかし、ブッチはフィリップに危害を加えようとしたテリーを射殺し、二人で逃避行を続ける。自らの父がかつて一度だけ寄越したアラスカ州からの絵ハガキを大事に携行していたブッチは、フィリップを連れてアラスカ(パーフェクト ワールド)を目指す。一方、事件を指揮することになった警察署長ガーネットは、州知事の命令で派遣された犯罪心理学者のサリーと共にブッチを追跡する。
途中で車を乗り換えたブッチは洋服店に立ち寄り、フィリップのために新しい服を買うが、そこで警戒中のパトカーに発見されてしまう。ブッチは車でパトカーを大破させて逃亡しようとし、フィリップは『出てこいキャスパー』の変装衣装を手に躊躇いながらも彼と共に逃亡する道を選ぶ。厳格なエホバの証人の信者である母親の影響でハロウィンなどのイベントに参加できなかったフィリップに対し、ブッチには父親のような感情が芽生えていく。同じ頃、ブッチの追跡に失敗したガーネットは応援が到着するまでの間サリーと語り合い、保安官時代にブッチを車泥棒の罪で4年間少年院送りにした理由を聞かれる。ガーネットは、「ブッチの父親が暴力を振るう危険な男であり、少年院にいる方が彼にとって安全だった」と説明する。
畑の中で野宿していたブッチとフィリップは、近隣の農家マックに見付かり、彼の家で一晩過ごすことになる。マックの妻、孫と打ち解けたブッチとフィリップは、ラジオで正体を知ったマックに対して「騒がなければ黙って出て行く」と告げる。ブッチは朝になり約束通り家を出ようとするが、マックが孫に暴力を振るう姿を見て激怒し、彼を殴りつけて銃で脅し「孫に”愛している”と言え」と迫る。ブッチはマック一家を縛り上げマックに危害を加えようとするが、それを止めようとしたフィリップに銃で撃たれ負傷する。ブッチは銃を捨てて飛び出したフィリップを追いかけ、野原の中で彼に追い付く。そこにガーネット率いるテキサス警察とFBIが到着し、周囲を取り囲む。
ガーネットはフィリップを解放するように求め、それに対してブッチは「母親にフィリップをハロウィンに行かせろ」という条件で彼を解放しようとする。現場に到着したフィリップの母親は要求を受け入れ、ブッチはフィリップを解放する。ブッチはその場から逃げようとするが、彼が射殺されることを危惧したフィリップは、二人で警察に投降しようとする。それを見たガーネットは丸腰でブッチの元に向かい、ブッチは別れの品として父親からもらった絵ハガキをフィリップに渡そうとする。しかし、その仕草を「銃を取り出そうとしている」と判断したFBI捜査官が発砲し、ブッチは射殺される。激怒したガーネットとサリーはFBI捜査官を殴りつけ、フィリップは母親に連れられてヘリコプターに乗り込み、ブッチの遺体を悲しげに眺めていた。
パーフェクト・ワールド スタッフ
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ジョン・リー・ハンコック
製作:マーク・ジョンソン,デビット・バルデス
製作総指揮:バリー・レヴィンソン
音楽:レニー・ニーハウス
撮影:ジャック・N・グリーン
編集:ジョエル・コックス,ロン・スパング
製作会社:マルパソ・プロダクションズ
配給:ワーナー・ブラザース
パーフェクト・ワールド キャスト
ブッチ・ヘインズ:ケビン・コスナー
脱獄犯。正義感が強く、フィリップとグラディスに理不尽な暴力を振るったテリーを制裁した。ただし脱獄犯という立場から物資が不足しており、窃盗をすることもあった。サラ曰く、8歳で人を初めて殺した。自分の子供時代の体験から子供に暴力をふるう大人を過剰に嫌う。その時の態度はフィリップにさえも(決して暴力をふるわず言葉尻も苛烈ではなかったものの)厳しく、怖がられた。これにより極限状態に陥ったフィリップに発砲され、これらの要因で警察の介入を許し、皮肉にも自分の末路につながってしまった。
レッド・ガーネット:クリント・イーストウッド
警察署長。ブッチの素性を知りながらも犯罪者として疑っていたが、最終的にブッチの謝罪を認めて誤解からブッチを射殺したボビーを殴り飛ばした。
フィリップ・ペリー:T・J・ローザー
ブッチとテリーが強盗に入った家で出くわした少年。8歳。素朴な少年だがブッチに付き合う形で軽犯罪をすることもあった。服屋でハロウィンの服を買ったがこれが決め手で一時的ながらも追走を許してしまった。ブッチを慕っているがマック一家に対する凶暴(と思うには十分)な仕打ちを見たことでブッチに発砲してしまう。恐怖から逃げ出したものの、そんな自分を恨まずに許してくれたことで再度慕うようになる。
サリー・ガーバー:ローラ・ダーン
犯罪心理学者。知事の依頼でガーネットの元にきた。作中でブッチの心理を知るためか、ブッチになりきる演技をした。警察の人間では一番ブッチに理解を示しており、ブッチを包囲した際には交渉のためにブッチに近づいたガーネットを除けば唯一ブッチの行動や仕草に悪意がないのを分かっていた。
テリー・ピュー:キース・ザラバッカ
ブッチと一緒に脱獄した男。ブッチとは最初から反りが合わなかった。フィリップに凶暴な仕打ちをしたことでブッチに射殺される。
ボビー・リー:ブラッドリー・ウィットフォード
FBI捜査官。判断を誤りブッチを射殺した。
トム・アドラー:レオ・バーメスター
ガーネットの同僚。基本は真面目だが下品な言葉を言うこともある。中立的な考えの持ち主でブッチが誤解から射殺をされた際には「ブッチが撃たれるような行動だった」と射殺したボビーの行動を認めていた。
グラディス・ペリー:ジェニファー・グリフィン
フィリップの母親。厳格で息子の教育や友人関係に厳しい。ただし息子に向ける愛情は本物でブッチに強盗をされた際には必死に庇う言動をした。後にブッチとフィリップを包囲した際にも真剣に訴え、ブッチのフィリップに関する譲歩も全て受け入れた。
ブラッドレイ:レイ・マッキノン
追走車の運転手。
マック:ウェイン・デハート
農家。クリーブランドへの暴力をブッチに咎められる。
ロッティ:メアリー・アリス
マックの妻。
クリーブランド:ケヴィン・ジャマール・ウッズ
マックの孫。フィリップと仲良くなる。
ボブ・フィールダー:ジョン・M・ジャクソン
ブッチ達が道中で出会った家族の父。車は新車で非常に大事にしている。検問を免れるために利用され、車も奪われる。
ボブの奥さん:コニー・クーパー
フッジェス:ダリル・コックス
ポール・サンダース:ブルース・マッギル
アイリーン:リンダ・ハート