らせんは、1998年公開の日本映画。デュアル・ホラームービーを銘打ち、前作に当たる『リング』と同時上映された。かつて1995年の単発ドラマ版『リング』の脚本を担当した飯田譲治が、監督と脚本を担当している。物語は映画独自にアレンジされた部分もあるものの、大筋では原作のストーリーをなぞるものとなっている。遺伝子学の要素が「呪いのビデオ」の謎として効果的に使用されており、前作のオカルトホラー色は後退しSFサスペンスといった雰囲気が強い。さらには前作で得体の知れない恐怖の象徴であった山村貞子についても、「ある人物」と結託して人類抹殺の陰謀を巡らせる「知的な悪女」的な描かれ方をしており、クライムサスペンスの雰囲気も併せ持つ。
らせん 映画批評・評価・考察
らせん
脚本:19点
演技・演出:12点
撮影・美術:15点
編集:5点
音響・音楽:7点
合計58点
序盤の映像的インパクトが強く、出落ちしてしまっている演出が、いかにも飯田譲治監督って感じです。リングに比べて、難解でもあるストーリーが、どんな映画だったっけ?の印象を残す作品で、序盤に登場する真田広之と中谷美紀の印象が強く、主人公である佐藤浩市の影が薄い。
らせん あらすじ
東京都監察医の安藤満男は、不注意から我が子を死なせた自責に苛まれる日々を過ごしていた。ある日、彼は変死した友人・高山竜司の解剖を担当する。死因は、心臓近くの冠動脈に発生した肉腫によって、血流が停止したことによる心不全。解剖が終わり、安藤は胃の内容物に「不審な物」が混ざっていると報告を受ける。その紙片には、暗号らしき数列が書かれていた。
その後暗号を不審に思った安藤は、監察医務院にやってきた高山の元助手・高野舞から、高山は死の直前、記者の浅川和行という男と共に「見ると死ぬ呪いのビデオ」の調査を行っていたことを知る。だが、その浅川も後日に妻子を失い、自らも廃人同様になっていた。やがて安藤は、浅川が遺していた「一連の事件に関する手記」を手に入れ、仲間の医師・宮下と共に調査に乗り出す。
やがて、高山の死体から天然痘ウイルスによく似た未知の伝染性ウイルスが発見され、一連の「呪い」とはこのウイルスが心臓の冠動脈に肉腫を発生させ、1週間で心臓近くの動脈を閉塞させ死に至らしめるというメカニズムが判明するが、その感染ルートは、ビデオを見た者の網膜を通して、体内に入り込み感染するという驚くべきものだった。
さらには高野舞が行方不明になり、その後ビル屋上の排気溝内で「出産直後のような状態」で変死しているのが発見されるが、肝心の出産した赤ん坊は付近になかった。その後、安藤の前に「舞の姉」を名乗る女性が現れるが、彼女こそ、舞の子宮を通じてこの世に再生を果たした山村貞子その人であった。
舞は、高山の遺品を整理した際、彼が遺していた例の呪いのビデオを見てしまったが、たまたま見た日が彼女の排卵日であり、感染したウイルスと卵子が結び付き、貞子すら予想もつかなかった偶然の「受精」により復活を果たすことになったのだ。受精した卵子は僅かな期間で臨月に達し、生まれた貞子は短期間で死亡した時と同じ年齢に成長を遂げていた。しかもこの偶然により、ウイルスは当初とは違った、恐ろしい「突然変異」を遂げていた。
貞子は、安藤に「ある条件」で取引きを提案する。そして安藤は、自分を利用し、貞子の裏で糸を引いていた、この一連の事件の「本当の黒幕」に気付く。
らせん スタッフ
監督・脚本:飯田譲治
エクゼクティブ・プロデューサー:原正人
プロデューサー:河井真也・一瀬隆重・仙頭武則
原作:鈴木光司
撮影:渡部眞
ビジュアル・エフェクト・スーパーバイザー:松本肇
音楽制作:長岡和弘
音楽:LA FINCA(池頼広)
主題歌:HIIH「ゆがんだ時計」
特殊メイク:和田卓也、松井祐一
挿入歌:ジュノ・リアクター
編集:阿部浩英
配給:東宝
らせん キャスト
安藤満男 – 佐藤浩市
高野舞 – 中谷美紀
山村貞子 – 佐伯日菜子
伊熊平八郎 – 伴大介
安藤利恵子 – 加倉井えり
安藤孝則 – 菅原隆一(現・JRA競馬騎手)
宮下 – 鶴見辰吾
小林 – 真鍋尚晃
舟越 – 安達直人
前川警部補 – 小木茂光
解剖助手 – 岡田智宏、上沖俊
警官 – 丹野由之、清水宏
吉野賢三 – 松重豊
浅川玲子 – 松嶋菜々子
高山竜司 – 真田広之
デパートの父親 – 鈴木光司(特別出演)