お早ようは、1959年公開の日本映画。子どもたちを主人公に、東京郊外の新興住宅地での隣近所の人間模様やテレビをめぐる家族のやり取りなど、庶民の日常をナンセンスで軽妙なユーモアで描く。
お早よう 映画批評・評価・考察
お早よう
笠智衆・杉村春子・三宅邦子・佐田啓二・久我美子はじめ、当時の日本映画の名優たちが共演。子どもたちのおそろいの服や鮮やかな赤の配色など、小津監督ならではのカラー映像や構図、演出も魅力的。
デジタルリマスター版
それぞれ現存する35mmオリジナルネガフィルムの4Kスキャニング[4K=4096×3112ピクセル]を経て、デジタル技術を駆使した丁寧なリマスター修復を実施。パラ消し、揺れ止め、濃度ムラや染み、傷の除去、画面の歪み補正、切断や欠損箇所の修復など、元小津組スタッフの監修を得て、小津安二郎監督の製作意図を忠実に再現しています。小津監督が好んだアグファカラー(ドイツ製フィルム)の特性、特に赤系統の発色の再現性を重視するなど、小津組スタッフの監修により、小津が意図した色彩が鮮やかに蘇りました。
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お早よう あらすじ(ネタバレ)
東京の郊外….小住宅の並んでいる一角。
組長の原田家は、辰造、きく江の夫婦に中学一年の子・幸造、それにお婆ちゃんのみつ江の四人暮し。原田家の左隣がガス会社に勤務の大久保善之助の家。妻のしげ、中学一年の善一の三人。大久保家の向い林啓太郎の家は妻の民子と、これも中学一年の実、次男の勇、それに民子の妹有田節子の五人暮し。林家の左隣・老サラリーマンの富沢汎は妻とよ子と二人暮し。右隣は界隈で唯一軒テレビをもっている丸山家で、明・みどりの若い夫婦は万事派手好みで近所のヒンシュクを買っている。そして、この小住宅地から少し離れた所に、子供たちが英語を習いに行っている福井平一郎が、その姉で自動車のセールスをしている加代子と住んでいる。林家の民子と加代子は女学校時代の同窓で、自然、平一郎と節子も好意を感じ合っている。
このごろ、ここの子どもたちの間では、オデコを指で押すとオナラをするという妙な遊びがはやっているが、大人たちの間も、向う三軒両隣、ざっとこんな調子で、日頃ちいさな紛争はあるが和かにやっている。ところで、ここに奥さん連中が頭を痛める問題が起った。相撲が始まると子供たちが近所のヒンシュクの的・丸山家のテレビにかじりついて勉強をしないのである。民子が子どもの実と勇を叱ると、子供たちは、そんならテレビを買ってくれと云う。啓太郎が、子供の癖に余計なことを言うな、と怒鳴ると子供たちは黙るどころか、「大人だってコンチワ、オハヨウ、イイオテンキデスネ、余計なこと言ってるじゃないか」と反撃に出て正面衝突。ここに子供たちの沈黙戦術が始まった。
子供たちは学校で先生に質問されても口を結んで答えないという徹底ぶり。この子供たちのことを邪推して近所の大人たちもまた揉める。オヤツをくれと言えなくて腹を空かした実と勇は原っぱにおヒツを持出して御飯を食べようとしたが巡査に見つかって逃げ出し行方不明となった。
間もなく子供たちは駅前でテレビを見ているところを、節子の報せで探しに出た平一郎に見つかった。家へ戻った子供たちは、そこにテレビがおいてあるのを見て躍り上った。停年退職した富沢が電機器具の外交員になった仕事始めに月賦でいいからと持込んだものだった….
お早よう スタッフ
監督:小津安二郎
脚本:野田高梧,小津安二郎
製作:山内静夫
音楽:黛敏郎
撮影:厚田雄春
編集:浜村義康
製作会社:松竹大船撮影所
配給:松竹
お早よう キャスト
福井平一郎:佐田啓二 – 失業中の青年。英語の翻訳のアルバイト。
有田節子:久我美子 – 会社勤めの若い女性。姉・民子の家に居候。
福井加代子:沢村貞子 – 平一郎と同居している姉。自動車の営業。
林敬太郎:笠智衆 – 定年退職を数年後に控えた中年男性。
林民子:三宅邦子(大映) – 敬太郎の妻。節子の姉。加代子の同窓。
林実:設楽幸嗣 – 敬太郎と民子の長男。中学生。
林勇:島津雅彦(若草) – 敬太郎と民子の次男。小学生。
丸山明:大泉滉 – 林家の隣人。近所で唯一のテレビ所有者。
丸山みどり:泉京子 – 明の妻。近所の主婦たちから白眼視されている。
大久保しげ:高橋とよ – 林家の隣人。
大久保善之助:竹田法一 – しげの夫。
大久保善一:藤木満寿夫 – 善之助としげの息子。中学生。
富沢汎:東野英治郎(俳優座) – 林家の隣人。定年退職して職探し中。
富沢とよ子:長岡輝子(文学座) – 汎の妻。
原口きく江:杉村春子(文学座) – 林家の隣人。
原口みつ江:三好栄子(東宝) – きく江の母。助産婦。
原口辰造:田中春男(東宝) – きく江の夫。婿養子。
原口幸造:白田肇 – 辰造ときく江の息子。中学生。
伊藤先生:須賀不二夫 – 実の担任。
押売りの男:殿山泰司
防犯ベルの男:佐竹明夫 – 押売りの男の仲間。
おでんやの女房:櫻むつ子