ナチュラル・ボーン・キラーズは、1994年公開のアメリカ合衆国の映画。永遠の愛を誓い、殺人を繰り返すカップルの逃避行を描いたヴァイオレンス映画の問題作。欧米各国で年齢制限公開や上映禁止となったことも話題を呼んだ。暴力そのものの描写は極めてあっさりとしており、殺人や暴力を娯楽として消費していく現代アメリカ社会、及びメディアに対する痛烈な諷刺に主題が置かれている。タランティーノは脚本を書いたが、オリバー・ストーンによる、タランティーノの意図とは異なる大幅なストーリーの変更に強い不満を示し、激怒したと言われている。
ナチュラル・ボーン・キラーズ 映画批評・評価・考察
ナチュラル・ボーン・キラーズ(原題:Natural Born Killers)
脚本:33点
演技・演出:17点
撮影・美術:17点
編集:8点
音響・音楽:7点
合計82点
タランティーノは不満だったかもしれないが、タランティーノ色は失われておらず、大半のシーンは彼のエッセンスを感じるものだった。ただ、彼の監督作品やロバート・ロドリゲスとのコンビ作品と比較すると、かなり異なったメッセージを感じてしまう作品になっている。そこはオリバー・ストーン監督のカラーが反映されたものだと思えるし、ストーン監督とタランティーノがうまく融合できるはずがないでしょ。と素人目からも思うわけです。また、前年に『幸福の条件』でゴールデンラズベリー賞最低助演男優賞 受賞したウディ・ハレルソンの解脱というか演技者としての覚醒した作品となります。
この作品の前と後では、彼は全く違う俳優になっています。また、共演にトミー・リー・ジョーンズ、トム・サイズモア、当時薬物中毒だったロバート・ダウニー・Jrの演技も見ごたえあります。当時の若手女優で演技力がずば抜けていたジュリエット・ルイスの演技も見ものですし、彼女ほど極端な配役が与えられる女優は一握りでした。
映画のようなカップルの模倣犯は全米各地で多発しました。特に1995年に、犯行前に同作のビデオを繰り返し見ていた若者カップルが、ミシシッピ州とルイジアナ州で次々と発砲した事件では、銃撃を受けながら助かったコンビニ店員の女性パッツィ・バイヤースが、監督のオリバー・ストーンと映画会社のタイム・ワーナーに対して、犯罪を誘発したとする損害賠償の支払いを求める訴えを起こしました。この銃撃事件で友人を失ったベストセラー作家のジョン・グリシャムがアドバイスしていました。1999年、最高裁は訴訟は可能であるとの判断を示しましたが、2001年3月、オリバー・ストーンらに暴力を引き起こした明白な根拠はないとして、訴えは棄却されています。
ナチュラル・ボーン・キラーズ あらすじ(ネタバレ)
片田舎の名もない町のハイウェイ沿いのレストラン。客もまばらな店に、ミッキー(ウディ・ハレルソン)とマロリー(ジュリエット・ルイス)の2人が立ち寄る。ジュークボックスに合わせて踊るマロリーを卑猥な仕種ではやし立てる地元の中年男たち。突如マロリーは彼らに襲いかかり、強烈なパンチを食わせ、ミッキーの銃が火を吹く。楽しむようにいあわせた者を惨殺した2人は、レジの金を掴むとただ1人だけ生かしておいた女に「ミッキーとマロリーがやったと言え」と告げる。
マロリーは幼い頃から父親(ロドニー・デンジャーフィールド)に性的虐待を受け、母親(エディ・マクラーグ)は黙って見ているだけだった。ある日、マロリーは肉屋の配達人だったミッキーと出会う。互いにひと目惚れした2人は父親の車を盗んで旅立つがあえなく捕まり、ミッキーは刑務所へ。強制労働の最中に竜巻に乗じて脱走したミッキーはマロリーの家へ向かい、2人で父親の頭を金魚鉢に沈め、母親をベッドに縛って火を放つ。やっと自由を手にした2人はルート666をひた走る。傷つけた手の平を合わせて血を分かち合い、永遠の愛を誓った。道を教えてくれた警官を射殺したり、町で拾った女の子をモーテルの部屋に監禁してその前で行為に耽る2人は、いつしかマスコミによって英雄に崇められる。52人を殺した彼らに憧れる若者は後を絶たなかった。
そんな彼らを、有名犯罪者を捕らえて名声を手に入れ、ベストセラーを書きたいと考える暴力刑事ジャック・スキャグネッティ(トム・サイズモア)と、2人をスターに仕立てて独占インタビューを行い、視聴率を上げようと画策するTV番組キャスターのウェイン・ゲール(ロバート・ダウニー・ジュニア)が追っていた。道に迷ったミッキーとマロリーはインディアンの呪術師の老人の小屋に泊めてもらうが、悪夢にうなされたミッキーは誤って老人を撃ち殺す。初めて後悔した2人は逃げる時にガラガラ蛇に噛まれ、町のドラッグストアに駆け込むが、スキャグネッティら警察に包囲され、ついに逮捕される。
2人が別々の独房に入れられた刑務所は、嗜虐的な所長ドワイト・マクラスキ-(トミー・リー・ジョーンズ)によって日夜、囚人たちへの虐待が行われていた。2人の逮捕から1年後、所長と本人の許可によりゲイルによるミッキーのインタビューが監獄内からの独占生中継で行われることになった。「殺人こそが純粋な行為だ」とうそぶくミッキーは、メディアへの痛烈な批判を語る。一方、所内にいあわせたスキャグネッティはマロリーの独房を訪れ、彼女に性行為を強要する。TV中継は所内の娯楽室でも流れており、見ていた囚人たちの興奮が高まった末に暴動へと発展。ミッキーは隙を見て警備員の銃を奪うと、マロリーの元へ急ぎ、スキチャグネッティを殺す。再会した2人は、愛を確かめ合った。暴動で所内は大混乱となり、ミッキーとマロリーは殺戮を開始する。人質のはずのゲールもこれに加わった。脱出した2人は惨めに命乞いするゲールを殺し、いずこともなく消えた。
ナチュラル・ボーン・キラーズ スタッフ
監督:オリバー・ストーン
脚本:デヴィッド・ヴェロズ,リチャード・ルトウスキー,オリバー・ストーン
原案:クエンティン・タランティーノ
製作:ジェーン・ハムシャー,ドン・マーフィ,クレイトン・タウンゼント
製作総指揮:アーノン・ミルチャン,トム・マウント
音楽:ブレント・ルイス
撮影:ロバート・リチャードソン
編集:ハンク・コーウィン,ブライアン・バーダン
製作会社:リージェンシー・エンタープライズ
配給:ワーナー・ブラザース
ナチュラル・ボーン・キラーズ キャスト
マロリー・ノックス:ジュリエット・ルイス
ミッキー・ノックス:ウディ・ハレルソン
ウェイン・ゲール:ロバート・ダウニー・Jr
ジャック・スキャグネッティ:トム・サイズモア
エド・ウィルソン:ロドニー・デンジャーフィールド
ドワイト・マクラスキー:トミー・リー・ジョーンズ
ネイティブ・アメリカン:ラッセル・ミーンズ
マロリーの母親:エディ・マックラーグ
キャヴァナー:プルイット・テイラー・ヴィンス
メーベル :オーラン・ジョーンズ
ロンドンボーイ:ジャレッド・ハリス
アール:ラニー・フラハーティ
ウォーデン・ウリッツワー議員:エヴェレット・クイントン
ソニー:リチャード・ラインバック
ロジャー:カーク・ベルツ
ガソリンスタンド店員:バルサザール・ゲティ
グレース・マルベリー:アシュレイ・ジャッド
ケビン:シーン・ストーン
イミル・レインゴールド博士:スティーヴン・ライト
デイル・リグレー巡査:デイル・ダイ
デボラ:マリア・ピティロ
ダンカン:ジョー・グリファシ
デイビット:エヴァン・ハンドラー
スパーキー:ルイス・ロンバルディ
議員:マーシャル・ベル
警察官:ピーター・クロンビー
カウボーイ保安官:レッド・ウェスト
ドラッグ屋:グレン・チン
アントニア・チャベス:メリンダ・レナ