最強のふたりは、2011年公開のフランス映画。頸髄損傷で体が不自由な富豪と、その介護人となった貧困層の移民の若者との交流を、ときにコミカルに描いたドラマ。フランスでの歴代観客動員数で3位(フランス映画のみの歴代観客動員数では2位)となる大ヒット作となった。日本でも興行収入が16億円を超え、日本で公開されたフランス語映画の中で歴代1位のヒット作となった。
最強のふたり 映画批評・評価・考察
最強のふたり(原題: Intouchables)
脚本:40点
演技・演出:20点
撮影・美術:20点
編集:10点
音響・音楽:10点
合計100点(満点)
事故に遭い、首から下が不自由になった大富豪を、スラム街出身の青年が介護することに……。2012年、日本を含む世界で大ヒットした、フランスのヒューマンコメディ。 2003年にフランスで放送されたTVドキュメンタリーに感銘を受けた監督のエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュが、実在する富豪フィリップ・ポゾ・ディ・ボルゴの体験を映画化。フランスで年間興行収入第1位、日本や北米で史上最もヒットしたフランス映画になるなど、映画史を塗り替えるヒット記録を次々と樹立し、第24回東京国際映画祭で最高賞である東京サクラグランプリを受賞。主人公2人が障害者と健常者の垣根を越えて築く友情がすばらしく、笑わせ、泣かせるツボを押さえた展開は、観る者を感動とともに至福の時間をもたらします。
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最強のふたり あらすじ(ネタバレ)
ひとりは、スラム街出身で無職の黒人青年ドリス(オマール・シー)。もうひとりは、パリの邸に住む大富豪フィリップ(フランソワ・クリュゼ)。何もかもが正反対のふたりが、パラグライダーの事故で首から下が麻痺したフィリップの介護者選びの面接で出会った。他人の同情にウンザリしていたフィリップは、不採用の証明書でもらえる失業手当が目当てというフザケたドリスを採用する。
その日から相入れないふたつの世界の衝突が始まった。クラシックとソウル、高級スーツとスウェット、文学的な会話と下ネタ──だが、ふたりとも偽善を憎み本音で生きる姿勢は同じだった。互いを受け入れ始めたふたりの毎日は、ワクワクする冒険に変わり、ユーモアに富んだ最強の友情が生まれていく。
そんなある日、心配してドリスの経歴を調べた親戚が、宝石強盗で半年服役した前科者だから気をつけるようにとフィリップに忠告する。しかしフィリップは、「彼は私に同情していない。そこがいい。彼の素性や過去など、今の私にはどうでもいい事だ」と、毅然と答えるのだった。フィリップを車の荷台に乗せるのを「馬みたいだ」と嫌がって助手席に座らせたり、早朝に発作を起こした彼を街へ連れ出して落ち着くまで何時間も付き合ったり、意外にもドリスには自然な思いやりや優しさがあった。
だが別れは突然やってくる。ヘマをして仲間にシメられたドリスの弟が、ドリスのもとに逃げ込んで来たのだ。家族のことを真剣に思うドリスを見たフィリップは、「やめにしよう。これは君の一生の仕事じゃない」と提案する。翌朝、名残を惜しむ邸の人々に、陽気に別れを告げるドリス。フィリップは真っ当な介護者を雇い、ドリスは運転手の仕事を見つける。ドリスは自分の人生を始めるが、フィリップは再び孤独に陥っていた。そしてドリスは突然真夜中に呼び出される。いったいフィリップに何があったのか……。
到着すると、ドリスはフィリップを乗せてマセラティで運転する(物語は最初の警察の追跡に戻る)。警察から逃れた後、ドリスはフィリップを海辺に連れて行く。フィリップが髭を剃って着替えると、海沿いにあるカブールのレストランに到着した。ドリスは突然テーブルを立ち去り、フィリップにランチデート頑張ってねと言う。数秒後、エレオノールが到着した。感情的になったフィリップが窓から覗くと、外でドリスが微笑んでいるのが見えた。ドリスはフィリップに別れを告げ、フィリップとエレオノールがおしゃべりをしながらお互いの付き合いを楽しんでいる間、その場を立ち去るのだった。
映画は、物語のモデルとなったフィリップ・ポッツォ・ディ・ボルゴとアブデル・セロウが丘で一緒にいるショットで終わり映画冒頭のパラグライダーのシーンを思い出させた。最後のキャプションには、二人が今でも親しい友人であり続けていることが書かれている。
最強のふたり スタッフ
監督:エリック・トレダノ,オリヴィエ・ナカシュ
脚本:エリック・トレダノ,オリヴィエ・ナカシュ
製作:ニコラ・デュヴァル・アダソフスキ,ヤン・ゼノウ,ローラン・ゼイトゥン
音楽:ルドヴィコ・エイナウディ
撮影:マチュー・ヴァドピエ
編集:ドリアン・リガル=アンスー
配給:ゴーモン,ギャガ
最強のふたり キャスト
フィリップ:フランソワ・クリュゼ
頸髄損傷の富豪。普段の移動では電動車いすを利用している。ドリスが邸宅内の別室にいる時は、“赤ちゃんモニター”と呼ばれる機器で会話のやり取りをしている。堅物な性格なためこれまでに介護人を何人か雇ってきたが全員1週間ほどで逃げ出している。しばしば夜中に幻痛症と呼ばれる発作に苦しむ。趣味は、クラシック音楽や絵画などの芸術を鑑賞すること。怪我を負う前は、スポーツ競技としてパラグライダーを時々楽しんでいた。
ドリス:オマール・シー
スラム街出身の黒人青年。冒頭で意図せずフィリップの介護人となる。日常の介助の他フィリップの外出時の車の運転手も務めるが実は無免許。基本的には雑な言動をしていて不真面目な性格だが、根は悪くなく陽気でくだらない冗談を時々言っている。相手が誰であろうといつもタメ口で話し、自分が思った正直な気持ちをぶつけている。ノリの良い洋楽が好きで「踊れない音楽は音楽じゃない」という持論を持つ。
イヴォンヌ:アンヌ・ル・ニ
フィリップの助手。60歳前後の女性。当初ドリスを「乱暴な人」と評し、不真面目な彼によく口頭で注意していたが徐々に打ち解け始める。規律に厳しい性格だが実は他人の恋愛話が好き。
マガリー:オドレイ・フルーロ
フィリップの秘書、口述筆記などを担当しており、フィリップが言った内容をエレノア宛の手紙を代筆している。才色兼備で色気があり、ドリスから異性として気に入られている。
マルセル:クロティルド・モレ
フィリップの使用人。介護士。毎朝7時頃に邸宅に訪れてフィリップの体のケアや運動機能を衰えさせないリハビリのようなことを2時間ほどしている。フィリップの世話をするようになったドリスに日常の介助の仕方などを教える。
エリザ:アルバ・ガイア・クラゲード・ベルージ
フィリップの娘。16歳。実は養子でフィリップとは血縁関係はない。お嬢様扱いされて裕福な生活を送ってきたため、気が強く小生意気な性格でフィリップ以外の人から指図を受けることを嫌う。ドリスのことを見下している。
バスティアン:トマ・ソリヴェレ
エリザのボーイフレンド。毛量の多い髪型をしており、ドリスから陰で“モップみたいな頭の男”と呼ばれている。
アルベール:クリスティアン・アメリ
フィリップ邸の庭師。薄毛のおじさん。仕事は、フィリップの家の庭の手入れやちょっとした農作物を育てている。ドリスによるとイヴォンヌに気があるとのこと。
アントニー:グレゴリー・オースターマン
フィリップの友人。ドリスが過去に半年間服役していたことを法務省の知り合いから聞き、フィリップに知らせて用心するよう助言する。
ミナ:アブサ・ダイヤトーン・トゥーレ
ドリスの妹。年は日本で言う高校生ぐらい。自身の学校が終わってから母親が仕事から帰宅するまでの間、8人ぐらいいる幼い弟妹たちの面倒を見ている。ドリスが半年も実家に連絡をしないでぶらぶらしていることに不満を感じている。
アダマ:シリル・マンディ
ドリスの弟。年は日本で言う中学生ぐらい。年上の不良仲間がおり、詳細は不明だが何か悪いことをやって留置場に入れられるなど素行が悪い。ドリスから心配されているが、反抗期らしく素直になれず反発している。
エレノア:ドロテ・ブリエール・メリット
フィリップの文通相手。半年間フィリップと手紙のやり取りをしているがお互いに顔を見たことはない。フィリップ宛の手紙はいつも青い封筒に入れており、フィリップからは詩のような言葉で綴られた手紙を受け取っている。