地獄の黙示録は、1979年公開のアメリカ合衆国の映画。1960年代のベトナム戦争下のジャングルを舞台に1人のアメリカ軍将校暗殺を命じられた大尉が4人の部下と共に目撃する戦争の狂気を描く。ジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』を原作に、物語の舞台をベトナム戦争に移して翻案した叙事詩的映画(エピックフィルム)。1979年度のカンヌ国際映画祭で最高賞であるパルム・ドールを獲得。アカデミー賞では作品賞を含む8部門でノミネートされ、そのうち撮影賞と音響賞を受賞した。それ以外にもゴールデングローブ賞の監督賞と助演男優賞、全米映画批評家協会賞の助演男優賞、英国アカデミー賞の監督賞と助演男優賞などを受賞している。
2019年4月28日、公開40周年を記念してトライベッカ映画祭において『地獄の黙示録 ファイナル・カット』(Apocalypse Now Final Cut)が上映された。このバージョンは同年8月15日にアメリカの劇場で一般公開され、8月27日にはホームメディアが発売された。
地獄の黙示録 映画批評・評価・考察
地獄の黙示録(原題:Apocalypse Now)
脚本:37点
演技・演出:18点
撮影・美術:19点
編集:8点
音響・音楽:8点
合計90点
フランシス・フォード・コッポラ監督が手掛け、第32回カンヌ国際映画祭でパルムドールに輝くと同時に賛否両論を呼んだ「地獄の黙示録」。ベトナム戦争が題材で、戦争映画として迫力満点だが、撮影当時のコッポラの混乱を受けて難解な作品となったとされます。2001年、初公開版より約30分長い“特別完全版”が作られましたが、コッポラ監督が初公開から40年後、映像のリマスターなどを施して再編集した“最終版”が地獄の黙示録 ファイナル・カットになります。“特別完全版”から兵士たちがプレイメイトたちと密接になる場面などが削除されています。
おもしろい今作誕生の経緯
映画の原案は、1902年に出版されたジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』(原題:Heart of Darkness )です。当初は、1970年代初頭に、同じ南カリフォルニア大学の映画学科に在籍していたジョージ・ルーカスとジョン・ミリアスが共同で進めていた企画でした。
原題『Apocalypse Now(黙示録を今)』は当時のヒッピーたちの反戦スローガン「Nirvana Now(涅槃を今)」に対するあてつけです。しかし、当時はベトナム戦争が行われていた最中であり、その企画は通りませんでした。後にルーカスが『スター・ウォーズ』を製作するにあたり、作品の権利をフランシス・フォード・コッポラに譲り渡したのが始まりです。
コッポラは映画化にあたり、『闇の奥』以外にもさまざまな作品をモチーフにしました。映画中でT・S・エリオットの『荒地』(原題:The Waste Land)や『うつろな人間たち』(原題:The Hollow Men )の一節が引用されていたり、ジェームズ・フレイザーの『金枝篇』(原題:The Golden Bough)から「王殺し」や「犠牲牛の供儀」のシーンが採用されるなど、黙示録的・神話的イメージが描かれています。この他、監督の妻エレノアの回想録によると、コッポラは撮影フィルム編集の合間、三島由紀夫の『豊饒の海』四部作を読み続けたそうです。
コッポラは、映画の製作初期段階から、音楽をシンセサイザーの第一人者である冨田勲に要請していました。しかし、契約の関係で実現には至らず、結局監督の父親であるカーマイン・コッポラが音楽を担当しました。このあたりの事情は、『地獄の黙示録 特別完全版』 サウンドトラック盤のライナーノーツで、コッポラ自身が詳細に語っています。
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地獄の黙示録 あらすじ(ネタバレ)
狂うような暑さのサイゴンの夏。ブラインドの降りたホテルの一室で、ウィラード大尉(マーティン・シーン)は空ろな視線を天井に向けていた。505大隊、173空挺隊所属、特殊行動班員である彼に、それからまもなく、ナ・トランの情報指令本部への出頭命令が下った。本部では3人の男が彼を待ちうけており、そのうちの1人がウィラードに、今回の出頭目的を説明した。それは第5特殊部隊の作戦将校であるウォルター・E・カーツ(マーロン・ブランド)を殺せという命令だった。
カーツはウェストポイント士官学校を主席で卒業し、空挺隊員として朝鮮戦争に参加、数々の叙勲歴を持つ軍部最高の人物であったが現地人部隊を組織するという目的でナン川上流の奥地に潜入してからは、彼の行動が軍では統制できない異常な方向へと進んでいった。情報によると彼はジャングルの奥地で原地人を支配し、軍とはまったく連絡を絶ち、自らの王国を築いている、というのだ。そのアメリカ軍の恥である錯乱者カーツを暗殺しなければならない、というのが軍の考えだった。この密命を受けた若い兵士ウィラードは、4人の部下、クリーン(ローレンス・フィッシュバーン)、ランス(サム・ボトムス)、シェフ(フレデリック・ホレスト)、チーフ(アルバート・ホール)を連れ、巡回艇PBRに乗り込んだ。
まず、ウィラードは、危険区域通過の護衛を依頼すべく、空軍騎兵隊第一中隊にキルゴア中佐(ロバート・デュヴァル)を訪ねた。ナパーム弾の匂いの中で目覚めることに歓びさえ感じているキルゴアは、花形サーファーであるランスを見ると彼にサーフィンを強要した。ワーグナーの“ワルキューレの騎行”が鳴り響く中、キルゴアの号令で数千発のナパーム弾がベトコン村を襲った。
キルゴアのもとを発った彼らは、カーツの王国へとPBRを進めた。河岸に上陸するたびにウィラードに手渡される現地部隊からの機密書には、カーツの詳細な履歴と全行動が記されており、読めば読む程ウィラードには、軍から聞いたのとは別の人物であるカーツが浮び上ってきていた。王国に近づいたころ、クリーンが死に、チーフも死んだ。
そして、王国についた時、ウィラードはそこで、アメリカ人のカメラマン(デニス・ホッパー)に会い、彼から王国で、“神”と呼ばれているカーツの真の姿を聞かされる。カーツは狂人なのだろうか。それとも偉大な指導者なのだろうか。ウィラードにもわからなかった。そして遂にカーツとの対面の日がきた。テープレコーダーや本に囲まれたカーツの元にやってきたウィラードは、軍の命令に従い、“神”と呼ばれる人間カーツを殺すのだった。
地獄の黙示録 スタッフ
監督:フランシス・フォード・コッポラ
脚本:ジョン・ミリアス,フランシス・フォード・コッポラ,マイケル・ハー(ナレーション)
原作:ジョゼフ・コンラッド『闇の奥』
製作:フランシス・フォード・コッポラ
音楽:カーマイン・コッポラ,フランシス・フォード・コッポラ
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
編集:リチャード・マークス,リサ・フラックマン,ジェラルド・B・グリーンバーグ,ウォルター・マーチ
製作会社:アメリカン・ゾエトロープ
配給:ユナイテッド・アーティスツ(1979年),ミラマックス(2001年),日本ヘラルド映画(1980年、2001年),KADOKAWA(2020年)
地獄の黙示録 キャスト
ウォルター・E・カーツ大佐:マーロン・ブランド
ビル・キルゴア中佐:ロバート・デュヴァル
ベンジャミン・L・ウィラード大尉:マーティン・シーン
ジェイ・“シェフ”・ヒックス:フレデリック・フォレスト
ランス・B・ジョンソン:サム・ボトムズ
タイロン・“クリーン”・ミラー:ローレンス・フィッシュバーン
ジョージ・“チーフ”・フィリップス:アルバート・ホール
ルーカス大佐:ハリソン・フォード
報道写真家:デニス・ホッパー
コーマン将軍:G・D・スプラドリン
CIAエージェント:ジェリー・ジーズマー
コルビー大尉:スコット・グレン
マイク:ケリー・ロッサル
負傷兵:ロン・マックイーン
配給係の軍曹:トム・メイソン
キャリー:シンシア・ウッド
テリー:コリーン・キャンプ
サンドラ:リンダ・カーペンター
ローチ:ハーブ・ライス
ジョニー:ジェリー・ロス
ユベール・ド・マレ:クリスチャン・マルカン
ロクサンヌ・サロー:オーロール・クレマン
パイロット:R・リー・アーメイ