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冷たい熱帯魚|ふとしたはずみから極悪非道な男に取り込まれ、深い闇の世界へと落ちていく主人公の姿を鮮烈に描き出す衝撃の問題作。

映画 冷たい熱帯魚
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冷たい熱帯魚は、2010年公開の日本映画。園子温監督、脚本によるエロ・グロ描写が多いホラー・サスペンスで、1993年に起こった埼玉愛犬家連続殺人事件をベースとした物語。ふとしたはずみから極悪非道な男に取り込まれ、深い闇の世界へと落ちていく主人公の姿を鮮烈に描き出す衝撃の問題作。本作は映倫規定において、R18+(18歳未満は観覧禁止)に指定されている。

冷たい熱帯魚 映画批評・評価・考察


冷たい熱帯魚(英題:Cold Fish)

脚本:30点
演技・演出:13点
撮影・美術:15点
編集:8点
音響・音楽:8点
合計74点

この映画のベースになった実際の事件で、「ボディを透明にする」と呼んだ残虐な遺体の処理方法は実際に行われていて、遺体は風呂場で解体され骨・皮・肉・内臓に分けられた上、肉などは数センチ四方に切断。骨はドラム缶で衣服や所持品と共に、灰になるまで焼却され、それらは全て山林や川に遺棄された。遺体を埋めても骨は残ることから、焼却してしまうことを考案。しかし、遺体をそのまま焼くと異臭が発生するため、解体して骨のみを焼却したという。燃え残りが出ないよう、1本ずつじっくり焼くという念の入りようだった。映画でもこのシーンに強いこだわりがあり、リアリティがある映像となっていることからグロいグロすぎる描写が多数登場。

吹越満とでんでん、黒沢あすか、渡辺哲、諏訪太朗の演技力はベテランの安定感と園監督の演出で狂気性が溢れ出していて非常に見応えがあった。しかし、主人公の妻役、神楽坂恵はエロ要員で抜擢されたように見え、おっぱい揉まれるシーン以外これという魅力が無く、違和感だらけだった。映画は序盤(後期)~終盤(前期)までは、かなり熱量が高くなるほど見入ってしまうが、ラストの娘のリアクションにドン引き(つまらないという意味で)してしまい、選択肢が複数あるなかで、最もつまらないエンディングになってしまった。

この映画のベースになった事件を調べると、映画内容以上に狂気が溢れていて身が震えるほど怖かった。共同脚本の高橋ヨシキ氏のポスタービジュアルが素晴らしい。日本映画のポスターデザインはすべて彼に頼めばいいと思う。

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冷たい熱帯魚 あらすじ

2009年1月14日水曜日午後9時11分。どしゃぶりの雨の中を一台の車が走っていた。車内には、小さな熱帯魚屋を経営する社本信行(吹越満)とその妻、妙子(神楽坂恵)の2人。娘の美津子(梶原ひかり)がスーパーマーケットで万引きしたため、店に呼び出されたのだ。その場を救ってくれたのは、スーパーの店長と知り合いの男、村田幸雄(でんでん)。村田は同業の巨大熱帯魚屋、アマゾンゴールドのオーナーだった。帰り道、強引に誘われ、3人は村田の店へと寄る。そこには村田の妻・愛子(黒沢あすか)がいた。村田は、美津子にアマゾンゴールドで働くように勧め、翌日から美津子は女子従業員たちに交じって勤務をスタートさせる。継母である妙子が嫌いだった美津子は、住み込みで働く“新生活”を素直に受け入れていた。しかし、無力なのは社本だ。恩人である村田の強引さに引っ張られるばかりで、全く為す術がない。しかも彼はアマゾンゴールドの裏側で、恐るべき事態が進行していることをまだ何も知らなかった。数日後、村田に“儲け話”を持ちかけられ、呼び出された社本。そこには顧問弁護士だという筒井(渡辺哲)と、投資者のひとり、吉田(諏訪太朗)がいた。門外漢の高級魚のビジネス話に大金融資を逡巡していた吉田だったが、堅実そうな社本の存在も手伝い、契約書に押印。だが直後、吉田は殺される。愛子が飲ませたビタミン剤に毒が入っていたのだ。「俺に逆らった奴は、みんなこうなっちまうんだよ」と社本を前に吠える村田。豹変した村田と愛子に命じられるまま、社本は遺体を乗せた車を運転し、山奥にある怪しげな古小屋に辿り着く。村田と愛子は、風呂場に運んだ死体の解体作業を慣れた手つきでやってのける。細切れにされた肉と内蔵が詰め込まれたビニール袋、そして骨の灰。何も知らない妙子と美津子を人質に取られた社本は、それらの処分に加担することになる。やがて社本は、村田の暴走と共に地獄を体験してゆく……。

冷たい熱帯魚 スタッフ

監督:園子温
脚本:園子温高橋ヨシキ
製作:杉原晃史
プロデューサー:千葉善紀木村俊樹
音楽:原田智英
撮影:木村信也
編集:伊藤潤一
製作会社:日活
配給:日活

冷たい熱帯魚 キャスト

社本信行(しゃもと のぶゆき):吹越満
『社本熱帯魚店』の店主。気弱で大人しい性格で、自分の思っていることをあまり口にしない。妙子と美津子の家族3人で仲良く過ごすことを夢見ているが未だ叶っていない。趣味は星を見ることで、作中でも地元のプラネタリウムに何度か行っている。幸雄から「海外から輸入した高級熱帯魚の養殖で儲けませんか」と話を持ちかけられる。しかし直後に目の前で幸雄が殺人を犯すところを見てしまい、自身も犯罪に巻き込まれていく。

村田幸雄:でんでん
『アマゾンゴールド』という熱帯魚店を経営。『社本熱帯魚店』よりも広い店内にたくさんの水槽が並び、約3,000種類の魚を所有している。信行から「ちょっとした水族館みたい」と言われる。仕事柄、非常に明るくおしゃべり好きで気さくなおじさん。子供の頃、はらきり山にある教会のような建物で暮らしていたことがあるが、作中では寂れている。愛車は赤いフェラーリ。ますだの店で美津子が万引きしたのを目撃してかばったことから社本家と関わりを持つ。しかし本性を現すと、巧みな話術と暴力によって徐々に信行たちの心を侵食し始める。

村田愛子:黒沢あすか
幸雄の妻。30代ぐらいの若い妻で幸雄よりだいぶ年下。露出度の高い服や派手な色の服を着ている。熱帯魚店の従業員たちを仕切っているが、本人は熱帯魚に興味がない。当初、幸雄と同じく社本家には猫を被っていたが徐々に声を荒らげたり気性の激しい性格を露わにする。幸雄が他人を殺すことやその後の処理にも慣れていて共に犯罪に手を染める。

社本妙子:神楽坂恵
信行の後妻。料理は苦手なのか、レトルト食品やインスタントで家族の食事の準備を済ませる。かなり大雑把な性格だが、信行によると経営する店の熱帯魚の世話などはちゃんとしているとのこと。喫煙者だが、美津子に嫌がられるために自宅で吸う時は外で吸っている。後妻ということで美津子に後ろめたさを感じている。また、うだつが上がらない熱帯魚店の生活に内心不満を感じている。

社本美津子:梶原ひかり
信行の長女。実母は3年前に亡くなってまだ日が浅いうちに信行が妙子と再婚したことを快く思っていない。特に後妻となった妙子のことは母親とは認めておらず嫌っている。素行があまり良くなく、家族と家で食事途中に彼氏とデートに出かけたり、作品の冒頭あたりにますだの店で万引きしている。作中ではほどなくして幸雄の店で働き始める。

筒井高康:渡辺哲
幸雄の顧問弁護士。強面の男。幸雄の高級熱帯魚の養殖への投資話に乗ってもらえるように吉田を誘う。幸雄に隠れて愛子と体の関係を持つ。

オオクボヒロシ:裴ジョンミョン
筒井の部下。明るい茶髪にメガネをかけて、チャラチャラした服装をした若者。筒井の車の運転などを任されている。

吉田アキオ:諏訪太朗
幸雄のビジネスパートナー。血気盛んな弟分たちと違い穏やかな人物。それなりに資産がある。投資契約を交わして金銭を受け渡した後、幸雄により殺される。

(役名不明):三浦誠己
吉田の弟分たちのリーダー。吉田が失踪したため、最後に会った幸雄に話を聞きに店にやってくる。吉田を兄貴と慕う。威圧的な態度で幸雄を問い詰める。

(役名不明):阿部亮平
吉田の弟分たちの一人。リーダーや仲間数人と共に幸雄の店にやってきて、幸雄たちを脅して居場所を聞き出そうとする。仲間ともども気性が荒く血の気が多い。

川尻進:坂田雅彦
刑事。吉田の失踪について調査する。また、村田の周りでこれまでに30人ほどの行方不明者がいるとのことで、それらについて聞き込みするため信行に接触する。

さわだゆうこ:瀬戸夏実
『アマゾンゴールド』で働く従業員の一人。美津子の世話役を担当。6人ほどの若い女性従業員と共に寮に住み込みで働いている。愛子によると「みんな事情のある子たちばかりで社会復帰をさせるために頑張っている」とのこと。彼女たちは店名の入ったタンクトップに迷彩柄のホットパンツという格好で接客している。

美津子の彼氏:山根和馬
美津子の家の前まで車で迎えに来て、電話で呼び出して二人でデートに出かける。サイドを刈り上げて中央部は金髪の髪型をしている。

ますだ:芦川誠
スーパーの店長。店内で美津子が万引きしたため、両親を呼び出す。幸雄とは顔見知りで仲が良い。熱帯魚好きらしく幸雄のピラルクーの話に興味を持つ。

(役名不明):古藤ロレナ
(役名不明):中泉英雄

冷たい熱帯魚 予告編


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冷たい熱帯魚 原案になった殺人事件について

埼玉愛犬家連続殺人事件について
1993年(平成5年)に日本の埼玉県熊谷市周辺で発生した殺人事件。マスコミ報道が先行した事件であり、被疑者の映像が連日映し出された上、完全犯罪を目論んだ残忍な結末が明らかになるなど異常性の高い事件であった。
埼玉県熊谷市にある元夫婦、SKが経営するペットショップ「アフリカケンネル」は詐欺的な商売を繰り返しており、顧客らとの間でトラブルが絶えなかった。代表的な例として「子犬が産まれたら高値で引き取る」とうたい、犬のつがいを法外な価格で販売し、子犬が店に持ち込まれると、難癖を付けて値切るというもの。
経営する元夫婦SKは、アラスカン・マラミュートのブリーダーとして名が知られていた。しかし、バブル崩壊後の売り上げの減少に加え、豪華な新犬舎兼自宅の建設などにより、借金がかさみ、店の経営に行き詰まった。トラブルの発生した顧客らを、知り合いの獣医師から譲り受けた犬の殺処分用の硝酸ストリキニーネを用いて毒殺し、計4人が犠牲となった。
遺体は店の役員山崎永幸方の風呂場でバラバラにされた上、骨はドラム缶で焼却された。それらは群馬県内の山林や川に遺棄され、「遺体なき殺人」と呼ばれた。
SKは公判で、互いに相手が主犯だと主張したが、浦和地裁(現:さいたま地裁)は検察側の主張を全面的に認め、元夫婦が対等の立場で共謀し、犯行に及んだと認定(1件はSの単独犯行と認定)。2001年(平成13年)3月21日、元夫婦に求刑どおり死刑判決を言い渡した。
2005年(平成17年)7月11日、東京高裁は一審死刑判決を支持し、SK元夫婦の控訴を棄却。SK元夫婦は上告したが、2009年(平成21年)6月5日、最高裁は上告を棄却。1審・2審の死刑判決が確定した。

第一の事件
行田市に住む産業廃棄物処理会社役員Aは、犬を買うために「アフリカケンネル」を訪れたことからSと知り合い、親交を深めるようになっていった。当時、兄が経営する会社が傾いていたことから、新商売を模索していたAは、Sが勧める犬の繁殖ビジネスを手掛けることになり、「アフリカケンネル」からローデシアン・リッジバック(en:Rhodesian Ridgeback)のつがいを計1100万円で購入、うちメス犬を入手した。ところが、知人から犬の相場が数十万円であることや、高齢で繁殖に適さないことを知らされ、Sに騙されたことに気づいた。また、メス犬が逃げ出し、繁殖が不可能になったことから、残るオス犬のキャンセルと代金の返還を求め、トラブルとなった。当時、「アフリカケンネル」は金銭的に窮しており、SKAに金は返せないと判断し、謀議の上、A殺害を決意した。
1993年4月20日夕方、「金を返す」と言って熊谷市内のガレージに呼び出したAと、大型ワゴン車内で談笑中に、Sが硝酸ストリキニーネ入りのカプセルを栄養剤と偽って飲ませ、殺害した。その後、ガレージに戻った山崎に対し、Sは遺体を見せつけた上、「お前もこうなりたいか?」「子どもは元気か?元気が何より」などと、山崎やその家族に危害を加えることを示唆して脅し、片品村の山崎方に遺体を運び込ませた。Sはそのまま遺体の解体作業に取り掛かる一方、山崎に対しては、ガレージに残されたAの車を、都内に運ぶよう指示した。
山崎は熊谷に戻った後、Kと合流して2台の車で東京へ向かい、Aの車を東京駅の八重洲地下駐車場に放置、Aが自ら失踪したかのように偽装した。この偽装工作の最中、K山崎に対し「うまくいったの?」「あんたさえ黙っていれば大丈夫」などと言い、事情を全て知っているような素振りであった。
熊谷でKと別れた後、再び山崎が片品に戻ると、既にAの遺体は解体されており、原型をとどめていなかった。21日早朝、Sの指示で骨や所持品をドラム缶で焼却。肉片などを川場村の薄根川に、焼いた骨灰や所持品を片品村の国有林に遺棄した。
一般に、一連の事件の動機は「犬の売買をめぐるトラブル」と言われるが、それが直接の動機になったのはこのA事件だけである。

第二の事件
江南町に住む稲川会系暴力団の組長代行Bは、Sと親交を有し、「アフリカケンネル」で顧客とトラブルが発生した際に仲裁役を務めるなど、Sの用心棒的な存在であった。Aの失踪後、Sに疑惑を向けたAの家族との会議に同席したことから、SAを殺害したのではないかと察知し、Sに多額の金銭などを要求するようになった。やがて、新犬舎の土地建物の登記済証を要求されたSとKは、このままでは全財産を取られてしまうと危惧し、Bを殺害することを決意した。その際、Bと常に行動を共にしている運転手のCも、口封じのために殺害しなければならないとの結論に達した。
1993年7月21日夜、SK山崎の運転する車でB方を訪れた。SKがB方に上がり、山崎はB方前に停めた車の中で待機していた。B方内では、SKBの要求に応じる振りをし、登記済証をBに渡して油断させた上、硝酸ストリキニーネ入りのカプセルを栄養剤と偽ってBCに飲ませた。Bは間もなく倒れたが、Cはしばらく薬効が現れなかったので、Sらは時間稼ぎのために「救急車を呼ぶ」と言って、Cを誘導のために表通りに走らせた。その後、SK山崎の車に乗り込み、さらに表通りにいたCを乗せ、「Bが女を呼んでいる」と言って山崎に車を出させた。江南町内の荒川堤防沿いの人けのない道路を走行中、突然助手席のCが苦しみだし、フロントガラスにひびが入るほど激しく苦悶した後、絶命した。
B方に戻ってBの遺体を車に積んだ後、3人は2台の車に分乗し、片品村の山崎方へ向かった。山崎方に運び込まれた遺体は、風呂場でBCの順に解体された。SKが共同で解体し、山崎は包丁を研ぐなどして協力した。S山崎に解体作業を見せつけて脅し、また、Kは演歌を鼻歌交じりに歌いながら解体していたという。22日早朝、解体が終わると、Kは熊谷へ戻り、S山崎が骨や所持品の焼却に取り掛かった。肉片や骨灰などは、川場村の薄根川、片品村の塗川や片品川に遺棄した。

第三の事件

行田市に住む主婦Dは、次男が「アフリカケンネル」で働くようになったことからSと知り合い、親密な関係になった。しかし、新犬舎の建設や、Bの強請などにより、「アフリカケンネル」が経営難に陥っていたことから、Sは自分に信頼を寄せるDに「アフリカケンネル」の株主になるよう持ちかけ、出資金を詐取することを画策した。だが、いずれ株主話の嘘は露見し、そうなれば出資金ばかりでなく、過去に販売した犬の代金(アラスカン・マラミュート6匹、計900万円)の返還をも求められかねないことから、金を詐取した後でDを殺害することを決意した。また、Dとの交際を煩わしく思うようになっていたことも、動機の一つとされる。
1993年8月26日午後、Sは行田市内でDを車に乗せ、出資金の名目で、当時のD家のほぼ全財産である270万円を詐取した後、硝酸ストリキニーネ入りカプセルを服用させ殺害した。Dは最後までSを信じていたという。Sから(A事件と同じ熊谷市の)ガレージに呼び出された山崎は、後から車で現れたSにまたしても遺体を見せつけられ、迫られて遺体を片品村の自宅に運搬した。SAらと同様にDを解体したが、山崎の著書によれば、その際Sは屍姦を行ったという。解体後は骨や所持品を焼却。27日未明、全て同村の塗川に遺棄した。
この事件では、全面自供した山崎にはDと面識がなく、遺体となったDと初めて対面した。そのため、山崎が被害者と面識があり、殺害の直前・直後に現場に居合わせたA事件、BC事件と比較すると、立証が難しかった。また、Kが関与していた疑いは強いものの、山崎の目撃証言などからは立証できず、Sの単独犯行とされた。

未解決の事件
Sの周辺では1984年にも秩父市などで少なくとも3人の男女が失踪している。埼玉県警はSらの供述に基づき、遺体の捜索を行ったものの発見できず、立件されていない。なお、この他にも数名の失踪者や変死者がいるが、ここでは一般紙等で関連を報道された3件のみを記す。
2月11日 – 秩父市の暴力団員Eが失踪。Sの兄貴分で、金銭トラブルがあった。Sが資産家の娘であるKと結婚する際、協力すれば報酬を支払うとEに持ちかけたSであったが、実際には支払わず、トラブルになったという。2月11日、「ちょっと出てくる」と言って、自宅に迎えに来た車に乗って出掛けたまま失踪した。周囲には「近く、でかい金が動く」などと話していたという。
5月8日 – 秩父市のトラック運転手Fが失踪。FSが秩父で経営していたペットショップの店員をしていたことがある。SFの名義で店の看板を作ったことから、代金の取り立てに遭い、Sに立て替えた看板代金の返済を要求していた。近所のガソリンスタンドでSからの電話を受け、返済を約束されて出掛けたまま失踪した。
6月上旬 – 深谷市のスナック経営者Gが失踪。Sの知人である元自衛官の妻元自衛官Gの高級外車を勝手に売却するなど、夫婦間で金銭などをめぐるトラブルがあった。周囲の知人らが気付かぬ間に失踪した。元自衛官の証言によれば、夫婦喧嘩で殴って死なせてしまい、Sに遺体の処理を依頼したという。この事件については、Sは死体損壊・遺棄にのみ関与したとみられている。
元自衛官は警察の調べに対し、EGの死体損壊・遺棄に関与し、Sが解体した遺体を、自分が荒川に遺棄したことを証言(F事件への関与は否定)。その供述を元に、1995年4月、捜索が行われた。しかし、11年の歳月が流れていたことに加え、遺棄現場とされる冠水橋の(旧)押切橋が1991年に取り壊された際、川底が浚われたことから捜索は難航。5月には遺体の解体・焼却現場とされる熊谷市の旧犬舎も捜索したが、目ぼしい物証は発見できず、未解決事件となった。
しかし公判では、SKが「Eだって殺してから10年経つけど、未だに警察は迎えに来ない」との認識を共有し、A殺害を決意したと認定され、未解決事件へのSKの関与を示唆した。証人出廷した元自衛官の「Sの指示でEの遺体を焼却、遺棄した」との証言も信用できるとされた。

映画の主人公(演:吹越満)のモデルになった人物:山崎永幸
ブルドッグのブリーダーであり、「アフリカケンネル」の役員。群馬県片品村で貨車を改造した住居(通称「ポッポハウス」)に住んでいた。ドッグショーの会場でSと知り合い、Sの経営哲学を学ぼうとして「アフリカケンネル」を訪れるうち、誘われて同社の役員となった。だが、実質はSの運転手や手伝いをしていたにすぎなかった。
A事件の際、Sから脅迫を受け、遺体を運搬したほか、自宅を遺体の解体場所として提供し、死体損壊・遺棄の犯行に加担した。自宅が山奥にあり周囲に人家がなかったこと、妻(先妻)と離婚して一人で暮らしていたことなどから、犯行に適した場所だった。Sに怯えながらも、B・C事件、D事件でも同様に手伝った。Sの脅迫に恐怖し、自身や家族に危害が加わるのを恐れたという。また、物証がほとんど残っておらず、仮に自首しても、Sの犯行が立証できるかどうか不安を抱いていたという。
捜査段階では事件の解明に全面的に協力していた。しかし、検察官との密約の存在を公判で証言。検察官が約束を反故にしたとして、Sらの裁判では証言拒否の構えを見せた。
懲役3年の実刑判決が確定し、服役。1998年(平成10年)8月28日に満期出所している。その後、実名で事件の顛末を記した本を出版した。「山崎」は逮捕時結婚していた妻の姓を称していたもので、旧姓は「島」。SKからは「島」と呼ばれていた。本出版後離婚しペンネームを「志麻永幸」名義に変更した。