マスクは、1985年公開のアメリカ合衆国の映画。頭蓋骨形成異常疾患(ライオン病)と呼ばれる奇病を持った実在の人物ロッキー・デニスの生涯を描いたヒューマン・ドラマ映画。難病を抱える息子を支えたのは明るく力強い母の愛情だった…。16歳でこの世を去った少年の実話を基に、親子愛を描いたヒューマン・ドラマの秀作。主人公の母フローレンス役のシェールがカンヌ映画祭女優賞を受賞。第58回式典でアカデミーメイクアップ賞を受賞し、シェールとストルツはそのパフォーマンスでゴールデングローブ賞にノミネートされました。
マスク 映画批評・評価・考察
マスク(原題:Mask)
脚本:34点
演技・演出:17点
撮影・美術:15点
編集:8点
音響・音楽:8点
合計82点
今はマスクといえば、1994年公開のジム・キャリーの『マスク』のイメージが強いかと思いますが、かつては金曜ロードショーなどで放送された今作『マスク』の印象も残ってる方もいらっしゃるのでは?と思います。感動ポルノという言葉が生まれる前から、障害を持つ主人公の映画が多く製作されていたように思います。しかし、当時の映画作品達が描いていたものは感動ポルノではなく、リアルがそこにあったと思います。苦しみと強さ、境遇・葛藤など生々しく描かれています。自分に置き換えれば恐怖も感じ、それでも生きようとする強い主人公の姿に胸が苦しくなります。僕には、感動とともに恐怖もそこにあった。そういう映画でした。
マスク あらすじ(ネタバレ)
15歳のロッキー・デニス(エリック・ストルツ)少年はその日、シニア・スクールの入学手続をしに行くため、母ラスティ(シェール)の帰りを待っていた。彼の姿は普通の少年と変わらないが、顔は、マスクでもかぶっているかのように奇妙だった。目は極端に広がり、鼻には鼻柱がなく、普通の人の2倍もある縦長の顔をしていた。彼の夢は親友のベン(ローレンス・モノソン)とオートバイでヨーロッパ大陸を走ることで、そのためにおこづかいを預金していた。一方、母のラスティは古い道徳概念にとらわれない、ある意味での自由人である。ドラッグと男に明けくれ、周囲にはバイクに生きるアウトサイダーたちがいた。ロッキーは、そうした母の身を案じていた。その日もバイク仲間に送られてラスティが帰って来た。ロッキーは、彼らからも愛されており、特にガー(サム・エリオット)は父親のような存在だった。学校に着いた二人は、さっそく人々の好奇の目を感じた。特殊教育学校をすすめる校長に、ラスティは怒りを込めてロッキーの優秀さを語り、入学の許可を得た。彼の病名は頭蓋骨形成異常、俗にライオン病と呼ばれるもので、カルシウム分泌の異常が原因だった。幼い時から病院との往復をくり返している彼であったが、成績はいつもトップクラスだった。
母のドラッグぶりがますます激しくなり、ロッキーは、やめさせようと、あらゆる努力をした。卒業を間近にひかえたある日、校長が愛情深げに盲人のサマー・キャンプに参加するようにとロッキーにすすめた。しかし母のことが気になっていた彼は、それを断った。いよいよ、卒業式の日、バイク仲間からロッキーに思いがけないプレゼントがあつた。冷蔵庫を開けると、中にスーツが下っていたのだ。喜ぶロッキー。彼は優等生として壇上で賞状を手にした。母も、バイク仲間も狂喜乱舞した。母のドラッグは相変わらず続き、さすがに愛想がつきたロッキーは、盲人のサマー・キャンプに参加することにした。そこで彼は盲目の美少女ダイアナ(ローラ・ダーン)と出会った。頭痛に苦しむこともあったが、ロッキーは、ダイアナと馬に乗ったり楽しい時を過ごした。だが、キャンプの最終日、ダイアナを迎えに来た両親の狼狽ぶりに、2人は気まずい思いを経験した。そんな頃、ラスティはロッキーに告げた「私ヤクをやめたわ」。ダイアナの両親の差し金で電話をしても彼女を出してもらえないいらだちと、ベンがヨーロッパには行かないと言い出したことで気落ちしたロッキーは、自然とダイアナのいる街へと足を向けていた。乗馬クラブで再会する2人。しかし死は突然ロッキーを襲った。ダイアナと別れて家に戻った翌朝、学校からの電話で、ラスティはロッキーが欠席しているのを知り、彼の部屋を開けた。話しかけても既に息絶えたロッキーは無言だった。ロッキーの16歳の生涯は終った。夕暮れの墓地にたたずむラスティの姿があった。
マスク スタッフ
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ
脚本:アンナ・ハミルトン=フェラン
製作:マーティン・スターガー
音楽:デニス・リコッタ
撮影:ラズロ・コヴァックス
編集:バーバラ・フォード
配給:UIP
マスク キャスト
ロッキー・デニス:エリック・ストルツ
実は「ロッキー」は通称で、本当の名前は「ロイ」である。別の学校からノース・アヴェニュー中学校の9年生(日本の中学3年生にあたる)に転入してきた。赤毛の天然パーマのような髪型をしている。優等生で特に数学・科学・歴史が得意。多少の偏見にも負けない明るい性格でお喋り好きで優しい少年。嫌な気分になると自分の部屋で大きめの音で好きな曲をかけて気分を落ち着かせる。ゴールデンリトリバーの白い子犬に「スクリーチ」と名づけて飼い始める。趣味は野球カード集めで、特に大好きな1955年当時のブルックリン・ドジャースの選手を集めている。ひと回り以上年上のバイク好きの男たちと仲良し。お金を貯めてオートバイでヨーロッパの国々を旅行するのが夢。
フローレンス・デニス:シェール
ロッキーの母。作中では「ラスティ」と呼ばれている。難病を抱えるロッキーを他の子供と同じように育てている。ロッキーに対しては愛情深いが、時々行動が行き過ぎることもある。また、基本的に短気でちょっとしたことで機嫌を損ねやすい性格。家では犬以外にも金魚や猫などのペットを飼育している。薬物を常用していて、ロッキーから注意されるが中々やめられない。
ガー:サム・エリオット
フローレンスの元恋人。親子関係はないがロッキーの父親のような存在。ロッキーと仲が良く頼れる人物。バイクに乗ったりバイクをいじったりするのが好きで、バイク仲間たちとも仲がいい。ロッキーが5歳ぐらいの頃に、バーで働いていたフローレンスに出会って親しくなる。その後一緒に暮らしてはフローレンスとケンカをして出て行き、しばらくしてよりを戻してまた一緒に暮らすという生活を繰り返している。
ダイアナ・アダムス:ローラ・ダーン
サマーキャンプに来ていた盲目の女の子。ロッキーから好意を寄せられる。「生まれつき目が見えないため、色の概念がよく分からない」と語ったことからロッキーが物の感触を通して色による違いを教える。家に馬を1頭飼っていて馬が好きで、スピードはゆっくりだが乗馬もできる。
エベリン:エステル・ゲティ
ロッキーの祖母。フローレンスの母。ロッキー母子が引っ越す前は一緒に住んでいた。エイブがフローレンスに余計なことを言って機嫌を損ねないかとヒヤヒヤしている。
エイブ:リチャード・ダイサート
ロッキーの祖父。フローレンスの父。過去にフローレンスには、いい学校に行っていい会社に入ってくれることを望んでいたが、願いが叶わなかったこともあり、あまり仲が良くない。
ベン:ローレンス・モノソン
ロッキーと同じ年ぐらいの親友。父親と一緒に暮らしていたが、作中の冒頭でロッキーのいる町に戻ってきた。お金を貯めてロッキーと一緒にヨーロッパ旅行することを楽しみにしている。最近野球カードを集めだしたがロッキーのお目当てのカードを持っていたため、価値をよく知らないまま交換する。
ベイブ:ミコール・メルキュリオ
ベンの母。夫とは不仲なため別居中。夫についてベンは「最高の父親」と言っているが「私には最低(の夫)」と返している。ベンと共にバイク仲間の集会に参加している。
レッド:ハリー・ケリー・Jr.
バイク仲間の年長者でリーダー。いつも数人の仲間たちを引き連れて、ハーレーダビッドソンなどのバイクで共に行動している。自身を含めて仲間たちは、ロッキーも大切な仲間のように接している。