ケープ・フィアーは、1991年公開のアメリカ合衆国の映画。1962年に公開された『恐怖の岬』のリメイクである。憎悪と復讐心を蓄えた服役中の男とその復讐相手である担当弁護士及びその家族を描くサイコスリラー映画。ロバート・デ・ニーロをはじめ、ニック・ノルティ、ジュリエット・ルイスら演技派俳優が共演。
ケープ・フィアー 映画批評・評価・考察
ケープ・フィアー(原題:Cape Fear)
脚本:29点
演技・演出:17点
撮影・美術:16点
編集:8点
音響・音楽:8点
合計78点
復讐が生きがいになってしまった男のストーカー具合を大胆に描いたのが今作。絶賛されるレビューも多い作品ですが、個人的には、登場人物の誰にも感情移入できません。作品の狙いでもあると思いますが、今作品には純粋な正義や人徳、モラルといえるようなものが全く存在しません。主演のロバート・デ・ニーロ演じるマックス・ケイディよりニック・ノルティが演じるサム・ボーデンの方が徳がなく狭量な男、弁護士でありながら、やることなすこと卑怯極まりない人物です。そこでマックスは本当に裁かれるべき人間は誰だ!?と義憤を燃やし執拗な復讐を行おうとします。ただし、マックスも刑務所生活で完全に壊れてしまったのか、その異常性は映像のとおりです。芸術性を保ちながら異常性を描かしたらマーティン・スコセッシほど表現に富んだ監督あまり見かけません。今作品、スピルバーグのアンブリンなのに全く夢も希望もありませんでした。
製作総指揮の一人にはクレジットなしでスティーヴン・スピルバーグも含まれています。製作会社はスピルバーグのアンブリン・エンターテインメントです。当初は彼が再映画化権を取得、自分で監督しようと考えていたが、最終的にはスコセッシが撮ることになりました。スピルバーグはマーティン・スコセッシに『シンドラーのリスト』を監督して欲しいと依頼していましたが、スコセッシがこれはスピルバーグ自身が監督すべき映画だと応え、代わりに本作の演出を引き受けました。
ケープ・フィアー あらすじ
マックス・ケイディが刑務所から出所したその日、空には不吉な暗雲が垂れ込めた。そして彼の心の中にも、同じようなドス黒い思いが満ちていた。
14年前、マックスは当時16歳の少女に暴行を働いた罪で逮捕され、法廷で裁かれた。強姦ではなく暴行として判決が下った。犯した罪に比べ軽微に済んだとも言えたが、彼は弁護に手抜かりがあり、もっと減刑されていたはずだと考え、実刑が確定したことに不服を感じていた。そこでマックスは刑期を勤めながら、読み書きを習い、法律を学び、自らを弁護する手続きをとって社会復帰を試みてきた。しかしそれらが無駄に終わり、なお続く屈辱的な境遇を呪ったとき、心の中に一人の男への復讐の念が芽生えた。それは裁判のとき、自分を庇わなかった弁護士のサム・ボーデンである。
性犯罪を憎む、公選弁護人のサムは、マックスよりもむしろ無残に傷つけられた少女の方に思い入れ、依頼人の罪が重くなるように立ち回った。少女が性的に素行不良だったという証言も、少女の不利になると考え握りつぶした。マックスはそれを知り、許されざる裏切りと考えた。サムに対する復讐の念は、いつしか身体中に彫りこまれた刺青の文字そのままに、彼の心にも深く、強く刻み込まれた宿願となった。
刑期を終え、ついに自由を手に入れたマックス。彼は平和に暮らすサムとその家族の前に姿を現し、さっそく行動を開始する。当初は軽い嫌がらせ程度であったが、次第に嫌がらせはエスカレートしていき恐怖を感じたサムは家族を守ろうと奔走するが、マックスの力を押しとどめることはできず、やがてその恐ろしい本性に打ちのめされていく。
ケープ・フィアー スタッフ
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:ウェズリー・ストリック
製作:バーバラ・デ・フィーナ
製作総指揮:キャスリーン・ケネディ,フランク・マーシャル,スティーヴン・スピルバーグ(クレジットなし)
音楽:バーナード・ハーマン,エルマー・バーンスタイン
撮影:フレディ・フランシス
編集:セルマ・スクーンメイカー
配給:ユニヴァーサル映画,UIP
ケープ・フィアー キャスト
マックス・ケイディ:ロバート・デ・ニーロ
凶悪な暴行魔。肉体に入れ墨を彫っている。葉巻を吸っており、本人曰く、葉巻を吸うことが唯一の悪習。妻と娘がいたが捕まったことで妻からは縁を切られ、娘には死んだことにされている。14年間服役したが、その間、自分の弁護をまともにしなかったサムを恨み、刑務所内で体を鍛え、読み書きと法律を学び、出所後、お礼参りとしてサムも認めるほどに法に触れない様々な形でサムに嫌がらせをし、ダニエルにもネイディーンという偽名を使って近づく。刑務所にいたころに男の囚人に強姦された。先述の勉強漬けの生活からか、フランクな態度とは裏腹に、非常に機知に富んだ言い回しをし、カーセクからも尾行に気付かれたことで「頭が切れる」と評された。服役中に農場を経営していた母が亡くなり、その遺産として3万ドルをもらったことから、出所後にしては羽振りがよかった。当初は先述した通り、自分がやったという証拠を掴ませず、表立っても法に触れない程度の頭を使った緻密な行動であったが、サムとカーセクの雇った暴漢三人に襲われてからは暴力的になり、ついには殺人をおかすようになった。逃げたボーデン一家を追い戦うが、敗れて死亡する。
サム・ボーデン:ニック・ノルティ
弁護士。マックスが起こした暴行事件の裁判で彼の弁護を担当したが、レイプ犯罪を憎むあまり、被害者にも問題があった事をもみ消す。その結果、マックスは有罪となり服役、彼の恨みを買う事になる。犯罪を憎み、法を尊重する立場の人間でありながら、自身も浮気癖があるなど、人として難のある一面があり、後述のローリー以外の女性とも不倫したことがある。ピアノも嗜んでいる。
リー・ボーデン:ジェシカ・ラング
サムの妻。グラフィックデザイナー。喫煙者。可愛がっていた犬をマックスに殺害されてしまい、終盤ではマックスに犯されてしまう。サムからはレイと呼ばれている。
ダニエル・ボーデン:ジュリエット・ルイス
サムの娘。愛称はダニー。高校生で現在、15歳。両親の不仲に辟易しており、情緒不安定になっている。問題を次々に起こし、退学寸前にまで追い込まれている。演劇に興味がある勤勉家であり、かなりの本を読んでいる。母親いわく、デザイナーの才能がある。マックスに惹かれていたが、終盤で本性がわかり拒絶した。
クロード・カーセク:ジョー・ドン・ベイカー
私立探偵だが、犯罪者としての側面もあり裏の世界にも顔が利く。元警察の人間のようで、父親も警官で20年務めていた。サムの依頼でマックスを様々な形で遠ざけようと画策するが、いずれも失敗、次第に暴力で解決を図るようになり、最後はマックスを不法侵入に対する正当防衛で殺害しようと試みたが、逆にマックスの罠にはまり、もみ合っているうちに自分が持っていた拳銃の誤射により死亡。
エルガート:ロバート・ミッチャム
リー・ヘラー:グレゴリー・ペック
ローリー・デイヴィス:イリーナ・ダグラス
トム・ブロードベント:フレッド・トンプソン
裁判長:マーティン・バルサム
グラシエラ:スリー・モンテロ
フルーツスタンドの客:チャールズ・スコセッシ