鉄男(てつお)は、1989年公開の日本映画。制作費1,000万、4畳半のアパートで廃物のSFXと少数のスタッフで制作。ローマ国際ファンタスティック映画祭のグランプリを受賞。制作時点では海外での上映は考えてなかったが、東京国際ファンタスティック映画祭のプロデューサーの小松沢陽一が海外の映画祭に持って行ったことで、一般公開1作目にして国際的に高く評価され、後の海外映画祭における多数の新世代の日本映画評価への先鋒となる。クエンティン・タランティーノ、ギレルモ・デル・トロ、ジェームズ・ワン&リー・ワネル、ギャスパー・ノエ、ダーレン・アロノフスキーといった映像作家も塚本フリークを公言している。
鉄男 映画批評・評価・考察
鉄男
脚本:10点
演技・演出:16点
撮影・美術:16点
編集:8点
音響・音楽:10点
合計60点
1960年代後半のテイストながらも1989年と比較的新しい作品になります。当時、規格外の今作品を見て戦慄が走りましたが、改めて見ると石川忠の音楽が映像以上に凄いことに気づきました。とてもカッコいいというか古さを感じない新しい音でした。曲調がターミーネーターの作曲者のブラッド・フィーデルと似ていますが、石川忠の方が荒々しくパンチが利いています。脚本はあってないようなもので、演出主体の作品だと思います。チンコドリルの破壊力は凄まじいものがあり、しばらくチンコがドリルだったらどうしよう~という悪夢に震え上がります。悪趣味ではありますが、画期的な作品だったと思います。
今作品は Huluで見ました。
タイトルは大友克洋の漫画『AKIRA』の登場人物「鉄雄」に由来しているという説があるが、『鉄男』の製作を開始した当時『AKIRA』の中の「鉄雄」は未だ鉄になっていなかった、と塚本晋也自身、雑誌のインタビューで語っている。
諸星大二郎の漫画『生物都市』との類似点が指摘されており、実際に塚本晋也自身も『生物都市』を過去読んでいたが、制作段階では作品の存在自体を忘れていた。そのため指摘を受けてから類似点に気付いた。
鉄男 あらすじ(ネタバレ)
金属へのフェティシズムに憑かれたやつは、金属による肉体改造を行った直後に自動車と激突し、メタルサイキストとなった。ある朝、サラリーマンが目を覚ますと、頬に金属のトゲのようなニキビができていた。その男がプラットホームで電車を待っていると、隣のOL風の女が金属で膨張した腕を振りかざして襲ってきた。男は逃げたが、やがて自分の腕も金属化し、無意識のうちに女を殴り殺していた。激しい痛みを伴いながら、男の体は次第に金属に侵触されていく。顔面も半分は金属に被われ、ドリル化したペニスは恋人の肉体を引き裂き、快楽を貪った。やつは交通事故に会い、脳に金属片が刺さっていたのだ。そして轢き逃げしたのが、サラリーマンと恋人のカップルだった。やつは復讐を果たすため、金属テレパシーで放ったイメージで男を弾き飛ばした。しかし、金属と完全に融合したはずのやつの体に異変が起こった。体内に組み込まれた金属棒が錆びて腐り始めたのである。やつは最後のエネルギーを振り絞り、逆に鋼鉄の塊と化した男は反撃に転じた。しかし、やつと男は憎悪と愛情の背反したパワーで融合し、ひとつの巨大な金属の怪物となった。「こうなったら世界中を鋼鉄化し、錆び腐らせてやろう」と怪物は夜明けの都市を疾走し始めた。
鉄男 スタッフ
監督:塚本晋也
脚本:塚本晋也
音楽:石川忠
撮影:藤原京,塚本晋也
編集:塚本晋也
鉄男 キャスト
男:田口トモロヲ
普通のサラリーマンだったが、”やつ”の仕業により体全身が金属に覆われていく。
やつ:塚本晋也
“男”の車に轢かれ、頭に金属棒が刺さってしまったことで、金属を人間の体に同化させ、意のままに操るNEW WORLDの能力を身につける。ゼッケン番号は”×”。
女:藤原京
“男”の恋人。
眼鏡の女:叶岡伸
読書好きの平凡なOLだったが、”やつ”に操られ男を襲う刺客となる。
医者:六平直政
頭に金属棒が刺さった”やつ”の身体を診察した。
謎の浮浪者:石橋蓮司
“やつ”の目的を邪魔するかのように、”男”を襲った謎のホームレス。