私を抱いてそしてキスしては、1992年公開の日本映画。エイズ感染者の女性が、恋人やジャーナリストに励まされながら懸命に生きていく姿を描く人間ドラマ。──私が、エイズ!? これは、エイズに感染したごく普通の女性の苦悩と絶望、その中で生まれた愛と友情を真摯に描いた一篇である。 日本映画で初めて厚生省(当時)の推薦を受けた作品です。家田荘子の原作を南野陽子が読み、東映に企画を持ち込んだのが映画化のきっかけ。これを受け、東映は最初3人の脚本家にシナリオを書かせたが一貫性がなく時間も長くなったため、佐藤純彌に相談した。佐藤が2時間弱にシナリオをまとめて家田荘子に見せると「OK」が出たため、佐藤が監督をすることになった。南野は企画・立案者としての責任感から自ら8キロの減量に挑み、赤井英和とのハードなベッドシーンを含む鬼気迫る熱演を見せている。
私を抱いてそしてキスして 映画批評・評価・考察
私を抱いてそしてキスして
脚本:20点
演技・演出:15点
撮影・美術:13点
編集:7点
音響・音楽:6点
合計61点
脚本については、感染者の誤解を招くような表現やジャーナリストの取材の描き方に強引なところがあり、もう少し配慮する必要があったのではと思います。
当時は、現在よりもHIV、エイズについての理解が進んでいない世の中であり、偏見や知識不足だったことが原因だと思います。偏見や知識不足の社会的問題を描いている映画なのに、そこを整理されていないのは残念な部分かと思います。今も先進国で突出して感染者が増え続ける日本なので一過性の啓蒙活動で終わらず続けていく必要がある問題です。
『寒椿』で女優として覚醒した南野陽子が可憐で美しいのはもちろん、赤井英和が売れ始めた頃で、まだ初々しく爽やかです。
私を抱いてそしてキスして あらすじ(ネタバレ)
旅行代理店に勤めるOL・合田圭子は、ある日突然自分がエイズ感染者である事実を知る。学生時代の恋人が、海外での大事故による輸血が原因で感染していたのだ。
そんな彼女の前に、津島美幸というジャーナリストが現れた。美幸は感染者が受けている差別や偏見の実態を取材し、マスコミを通じてエイズに対する真の理解を得ようとしていた。
圭子には感染事実を知り、気落ちしている時に出会った高野晶という恋人がいたが、彼女は晶に自分が感染者であることを告白できずにいた。自殺未遂の果てに圭子は遂に打ち明けるが、晶はその事実を受け止めることが出来ず、彼女の許を去っていく。
会社も辞め、深く傷ついていた圭子のもとを美幸は何度も訪ねていく。最初は拒否する圭子だったが、美幸の真摯な態度に徐々に心を開いていった。だが美幸自身の中にも感染者に対する偏見があることに気づく。
そんなある日、圭子は自分が妊娠していることを知る。子供もまた感染しているのではないかと不安にかられる彼女の前に、晶が戻ってきた。そして2人で子供を育てよう、抱いて、キスしてあげようと誓い合う。子供は無事生まれ、感染もしていなかった。
圭子はそれから数カ月後に逝ってしまった。だがそれは精一杯充実した人生だったと美幸は考えるのだった。
私を抱いてそしてキスして スタッフ
監督:佐藤純彌
脚本:田部俊行,麻生かさね,高橋洋
原作:家田荘子
企画:黒澤満,坂上順
企画協力:井波洋
プロデューサー:小島吉弘
撮影:池田健策
美術:小澤秀高
音楽:渡辺俊幸
主題歌:来生たかお
録音:柿沼紀彦
照明:増川弘邦
編集:西東清明
助監督:鳥井邦男
スチール:加藤光男
ナレーター:檀ふみ
配給:東映
私を抱いてそしてキスして キャスト
南野陽子:合田圭子
赤井英和:高野晶
南果歩:津島美幸
三浦友和:久留米和夫
太川陽介:田辺謙一
田村高廣:樺山茂樹
平田満:萩原卓郎
三谷昇:小山内洋一
吉行和子:佐々木佳子
柳沢慎吾:小林篤
堂ノ脇恭子:常本かおり