暴力教室は、1976年公開の日本映画。1955年のアメリカ映画『暴力教室』を参考に製作されたアクション・バイオレンス映画。松田優作が本格的にアクションに挑んだ作品で、松田の原点的作品。また舘ひろしの映画デビュー作品で、若き日の松田優作vs.舘ひろし率いるクールスのスクリーン上の激突がプレミアとなり知名度が高い。主演の松田は、この3年前にテレビドラマ『太陽にほえろ!』で俳優デビューしたが、前の年にドラマ『俺たちの勲章』の九州ロケ先の撮影現場で、予備校生への暴力事件を起こして逮捕され、謹慎処分を受けていた。この作品はその謹慎中の松田と、バイクチームでありロックバンドでもある「本物の不良」クールスとが「はみだし教師役と不良生徒役」という設定で対決するという触れ込みで売り出した。クールスのサブリーダー・岩城滉一は併映の『暴走の季節』に主演し、本作には出演していないが、岩城以外の初代クールスのフルメンバーが総出演している。
暴力教室 映画批評・評価・考察
暴力教室
脚本:15点
演技・演出:17点
撮影・美術:13点
編集:8点
音響・音楽:7点
合計60点
脚本は子供が考えるような幼稚なものなのに、なんというか雄(オス)の魅力や野生が溢れている作品のように見えました。時代劇ですか?と問いたくなるような松田優作の濃すぎる表情がいいんですよね。舘ひろしも純情さとワルさ加減が絶妙というか、ただのワルではない感じ漂っています。ただしレイプは凶悪犯罪です。学生だからといって許される行為ではないのですが、この時代の作品は、こういう演出を安易に持ち出してくるので、そのころの社会の考えが見て取れます。作品としては元映画の『暴力教室』に到底及びませんが、その時代を色濃さが漂う空気感が、古さを感じないというか、新しさを感じとれる作品です。
暴力教室 あらすじ(ネタバレ)
名門私立高校・愛徳学園高校に転任してきた体育教師・溝口(松田)。だが、そこは非行少年グループによる暴力が支配する地獄の学園だった。溝口はリーダー・喜多条(舘)らグループの主要メンバーのいるクラスの担任を任される。さっそく初日の自己紹介でナイフの洗礼を受けるが、溝口は投げつけられたナイフを逆に喜多条に向かって投げ返し、不良たちに正面から対抗する。
体育担当の溝口は喜多条らを徹底的にしごきあげるが、喜多条らグループのメンバーはおかまいなしに授業を抜け出し、校内・校外を問わず無法の限りを尽くす。が、そのたびに溝口と対立。
一方その頃、学園の理事長・石黒(安部徹)は、校長・難波(名和宏)らと結託し、学園の移転に伴う土地売却にからめて巨額の利鞘をとろうと企てていた。この相談を立ち聞きしてしまった理事長の娘・ますみ(結城なほ子)は愕然とし、道をふみはずして夜の町で遊び呆けてしまう。酒、タバコ、シンナーに汚れてゆくますみを偶然見つけた喜多条は、ますみをグループにひきずりこみ、あられもない写真を撮って理事長・石黒に送り届ける。
スキャンダルとなるのを恐れた石黒らは、事態の収拾を図るべく溝口を派遣。溝口はメンバーの暴力を受けながらも写真のネガを取り返すことに成功する。このとき溝口はメンバーの一人の顔面を反射的に殴ってしまうが、あまりの鋭いパンチに疑問を持った喜多条は溝口の過去を調べる。溝口は元プロボクサーであったが、リング上で相手ボクサーを死なせてしまい、リングを去っていたのだ。「だから俺たちみたいなガキは相手にできないってわけか。てめえみたいな人間がいちばん汚らしいんだ」喜多条は溝口をなじるが、溝口は意にも介さない。
どうにもおさまらない喜多条は、溝口の妹・淳子(山本由香利)を犯す。逆上した溝口は翌日学校で多くの生徒や教師が見守る中、喜多条に鉄拳制裁を浴びせる。1対1の対決を望んだ喜多条は仲間の介入を拒否するが、自らが不利と見るや愛用のナイフを取り出し溝口に切りかかる。ここで校長・難波が警察に連絡。溝口は自宅謹慎となり、喜多条は退学となる。
ただでさえぴりぴりしているグループのバイクを、数学教師・坂本(室田日出男)が酔ったはずみでけとばしてしまい、報復としてグループのリンチを受ける。危険を感じた幹部は、生徒会長であり剣道部主将でもある新田(南条弘二)をたきつける。彼は剣道部を中心とする体育会系メンバーで特別高等警察のような親衛隊組織を結成、悪さをするグループに対し片っ端から制裁を加える。
一方、ますみから理事長の汚職について聞かされた女教師・花房(安西マリア)は、学園幹部の不正を糾弾すべく立ち上がるが、自他共に認めるサラリーマン教師の同僚教員は相手にしない。ビラをつくって抗議をしようとする花房の前に新田が立ちはだかる。校長・難波に抗議をする新田。彼もまた、学園幹部に対し不信感を抱く。花房は自宅で謹慎している溝口を訪れ、「頼りになるのはもうあなただけ」と協力を依頼するが、溝口は日本酒をあおるばかりで取りつく島もない。
淳子に送ってもらい帰路に就く花房だったが、ふたりを正体不明の覆面の集団が襲う。彼らはグループのトレードマークであるヘビのイラストがプリントされたジャンパーを着ていた。花房は草むらに数名に押し倒されて犯され、必死に逃げる淳子はトラックにひかれ重体に陥る。
事件のことを聞かされたグループのメンバーは「俺たちやってねえのに」といぶかしがる。喜多条は病院を訪れ、淳子の病室に入ると、無理矢理犯した罪の意識にただ立ちつくすばかり。妹の枕元にいた溝口は逆上し、病院の廊下で喜多条に雨霰と拳を浴びせる。そんな中、淳子は息をひきとる。
花房と淳子を襲った覆面の男たちは、グループの仕業と見せかけようとした体育会系グループだったことをつきとめた喜多条たちは、報復すべく学校に向かおうとする。が、そこへ現れる溝口。「妹は死んだ。ガキの出る幕じゃねえ。おとなしくうちに帰って寝な。これは俺個人の問題だ」そう言い残し、溝口は単身学園へ乗り込み、辞表をたたきつけた後、校長・難波に襲いかかる。すかさず新田を中心とする体育会系グループの妨害にあい叩きのめされる溝口だが、そこへ喜多条らがバイクに乗って登場し加勢する。新田が理事長たちの不正を知りながら、学園を守るのが自分の義務だと信じ敢えて従っていたことを知った喜多条らは、新田たち体育会系グループと死闘を演じ、これをたたき伏せる。一方難波を追いつめた溝口は、難波の日本刀攻撃に苦戦するが、最後には必殺のパンチを難波に浴びせ勝利する。乱戦の影響で炎につつまれる学園。無数の警官が到着。溝口と喜多条は、互いにふしぎな絆で結ばれたことを感じ取り、共に警官隊に向かって歩を進める。
暴力教室 スタッフ
監督:岡本明久
企画:安斉昭夫,坂上順
脚本:神波史男,奥山貞行,岡本明久,福湯通夫
撮影:中島芳男
音楽:菊池俊輔
美術:中村修一郎
編集:田中修
製作会社:東映東京撮影所
配給:東映
暴力教室 キャスト
溝口勝利:松田優作
喜多条仁:舘ひろし
溝口淳子:山本由香利
花房悦子:安西マリア
新田勲:南条弘二
石黒ますみ:結城なほ子(前芸名=東島祐子)
数学教師:室田日出男
たいやき屋の主人:佐藤蛾次郎
難波校長:名和宏
教頭:河合絃司
石黒理事長:安部徹
不良グループのメンバー:クールス
喜多条の父:丹波哲郎
岩崎満雄:津森正夫
田島正夫:高品正広
土屋耕作:松本智正
藤巻博:酒井努
小田切文夫:小林稔侍
山本:山田光一
三国:平井一幸
長岡:山本緑
唐沢泰子:田中久子
警察署長:相馬剛三
取調官:五野上力
料理屋女中:伊藤慶子
看護婦:村松美枝子
トラック運転手:青木卓司
その他:神太郎,原田君事,亀山健也,沢田浩二,横山繁,山浦栄,宮地謙吾,栗原敏,溜健二,星純夫,秋みちる,沢本ミミ,富岡淳子,山中登枝恵,佐川二郎