時空の旅人(ときのたびびと)Time Strangerは、1986年公開の日本映画。未来からの逃亡者によって、過去へのタイムトリップに巻き込まれた若者たちの姿を描いたアニメ。眉村卓原作の「とらえられたスクールバス」の映画化で(この映画化で本タイトルに改題された)、脚本は「傷だらけの勲章」の大和屋竺、「カムイの剣」の真崎守、竹内啓雄の共同執筆。監督は「はだしのゲン」の真崎守が担当。同時上映は『火の鳥 鳳凰編』。
時空の旅人 映画批評・評価・考察
時空の旅人 Time Stranger
脚本:29点
演技・演出:18点
撮影・美術:18点
編集:7点
音響・音楽:9点
合計81点
原作は、漫画雑誌『希望の友』に1977年1月号より1978年7月号まで連載され、発表当時のタイトルは『とらえられたスクールバス』でしたがアニメ映画の公開に合わせ、映画と同タイトルに改題されて角川文庫から発行されました。ストーリーは小説と映画で大きく異なっています。大まかな内容は同じでもかなり端折ったところは否めませんが、作画が素晴らしく映像の美しさは今観ても素晴らしい作品。
当時もその映像美で話題になった作品ですが、数十年たった今でも素晴らしい映像です。同時上映だった火の鳥 鳳凰編も話題になりました。金曜ロードショーでよく放送されていた記憶があるのですが、今は全くないのが残念です。
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時空の旅人 あらすじ(ネタバレ)
新暦392年、NEO TOKYO。一人の少年がタイムマシンで脱走するところから物語は始まる。
17歳の女子高生、早坂哲子はカメラマンの兄の撮影につき合うため、ロケ用のマイクロバスに乗り込んでいた。兄が車を離れたすきに、奇妙な少年が運転席に駆け込んで、持っていた機械をバスにセットしスイッチを入れた。たまたま居合わせた哲子の同級生、信夫、真一、教師の北もバスに乗り込み、タイムトリップしてしまう。
彼らは1945年の東京大空襲のまっ只中に到着した。哲子は戦火の中で救ってくれた学生服の若者に心魅かれた。バスは再び超時空に飛び出した。少年はアギノ・ジロと名乗り、自分の住んでいた未来が嫌になり、過去へ逃亡してきた未来人だと告げた。しかも、バスに仕掛けたタイムマシンは過去にしか行けず、二度と逆戻りはできないと言う。その時バスのエネルギーが切れかかり、江戸幕末に不時着。
燃料を補給してホッとした彼らを、未来からジロを追って来た逃亡者ハンター、クタジマ・トシトが急襲してきた。やっとの思いでトシトを振り切ってワープした先は、1600年、関ヶ原の戦いのド真中だった。そこで彼らは、徳川家康側近の瀬道仁=セドゥド・ジンと出会う。ジロは彼を未来から来た時間管理局員だと見抜く。ジンは刺客の中に家康を殺し、歴史を変えようと企んだ未来人かいたことを告げると、タイムマシンに乗り消えた。
刺客の生き残り平野兵蔵が仲間に加わり、バスが着いたのは1582年の安土城。本能寺の変が起こる5日前だった。織田信長の歓待を受けることになった一行は、安土城に逗留することになった。哲子は信長の側近、森蘭丸に東京大空襲で出逢った少年の面影を重ねる。二人はいつしか心を通わすようになっていった。信長出兵の日、兵蔵は信長に反逆しようとしていた明智光秀を斬る。本能寺の変を目前に歴史は変ってしまった。だが、ジンがやって来て光秀暗殺の日へワープした。彼はトシトが兵蔵に光秀を討つよう意識操作しているのを目撃する。ジンは兵蔵を斬り、光秀暗殺を阻止。全てはジロを罠にはめて逃亡させ、ハンターの特権を利用して歴史を変えようとするトシトの陰謀だった。本能寺上空で戦いが始まり、ジロがトシトを射った。トシトはアンドロイドで核戦争の犠牲者だった。そのため歴史を変えたがっていたのだ。
哲子たちは年とトシトのマシンで現代に戻るが過去へトリップした記憶は消えていた。哲子の小指には見知らぬ怪我があり、見知らぬ布が巻きつけられている。ホクベンはバスを見て「懐かしい気持ちになった」という。哲子も小指の布を見て同じく懐かしくも切ない不思議な気持ちになるのだった。
時空の旅人 スタッフ
監督:真崎守
脚本:大和屋竺,真崎守,竹内啓雄
原作:眉村卓(『とらえられたスクールバス』より)
製作:りんたろう,丸山正雄,岩瀬安輝
音楽:国吉良一
主題歌:竹内まりや「時空の旅人」
撮影:石川欽一
製作会社:角川春樹事務所
配給:東宝
時空の旅人 キャスト
早坂哲子:村田博美
西暦1986年の東京に住む高校2年生で、真一や信夫からは「テコ」と呼ばれている。戦国時代では「哲子姫」と呼ばれ、信長からはその美しさを称して「天女」と呼ばれる。兄のマイクロバスに乗っていたところ、アギノ・ジロのタイムスリップに巻き込まれてしまう。タイムスリップ先の西暦1945年で危ない所を山本に助けられ、その恩に報いるために、山本に生まれ変わる(と哲子が信じている)蘭丸を救うため本能寺に向かう。信夫に好意を寄せられているが全く気付いていない。蘭丸に好意を寄せている。
アギノ・ジロ:戸田恵子
新暦392年のNEO・TOKYOに住む17歳の少年。旧暦(西暦)の「忌まわしい過去」について知ってしまい、当局に記憶を消されそうになったため逃亡。自分の目で旧暦の歴史を見るために時間調整装置を奪いタイムスリップし、その途中で出会った哲子たちを巻き込んでしまう。当初は哲子たちと険悪な状態だったが、タイムスリップを繰り返す過程で打ち解けた。当初は原作同様に言葉遣いが片言だったが、途中から流暢に話している。
長谷川真一:岩田光央
西暦1986年の高校2年生。哲子の友人でパソコン部に所属している。信夫を茶化すなど、お調子者の一面を持つ。機械の扱いが得意で、時間調整装置の操作を担当しており、アギノ・ジロとは特に親しくなった。
山崎信夫:熊谷誠二
西暦1986年の高校2年生。哲子の友人でラグビー部に所属しており、哲子や真一からは「ノブッチョ」と呼ばれている。哲子に好意を寄せているが、その想いを伝えられずにいる。皆を守るためにクタジマ・トシトや平野兵蔵に戦いを挑むなど、勇ましい性格をしている。
北勉:青野武
西暦1986年の教師。哲子たちの通う高校の教師で、哲子たちからは「ホクベン先生」と呼ばれている。自分にぶつかって来たアギノ・ジロを注意しようとしてタイムスリップに巻き込まれてしまう。子供の頃に東京大空襲を経験しており、自分たちがタイムスリップしたことを皆に自覚させた。原作のように腕っ節が強い設定は無い。西暦1868年でクタジマ・トシトに捕まってしまうが、西暦1600年の関ヶ原の戦いの際に信夫と平野兵蔵に助け出される。
セドウド・ジン:津嘉山正種
新暦392年の時間管理局員。家康配下の忍びや信長の茶人として戦国時代に潜伏。歴史の改変を目論むクタジマ・トシトを追っている。
クタジマ・トシト:井上真樹夫
新暦392年の時間管理局員。旧暦時代に逃亡したアギノ・ジロを追い掛けるが、本心は追跡を口実に旧暦時代にタイムスリップして歴史を改変することであり、信長に天下を取らせるために本能寺の変の阻止を目論む。
森蘭丸、戦時少年:堀川亮
山本
西暦1945年の第一中学校に通う男子学生。空襲に巻き込まれた哲子たちを助ける。「山本」とは学生服の名札に書かれていたもので、本当の名前は不明。哲子たちがバスに乗り込んだ際に名乗ったが哲子は聞く事ができなかった。クレジットでは「戦時少年」と表記されている。
森蘭丸
西暦1582年の武将。信長に小姓として仕え、哲子たちを歓待する。信長と共に本能寺に行き、光秀の謀反に遭う。哲子に好意を寄せる。
森坊丸:鳥海勝美
お婆:野本礼三
島左近:池水通洋
石田三成、赤武者:平野正人
徳川家康、オルガンチーノ、隊長:北村弘一
赤武者:堀秀行、大森章督、田中亮一
女中、未来の教師:阿部道子
平野兵蔵:阪脩
西暦1600年の武将。自らを「近江牢人」と名乗り、哲子たちからは「兵さん」と呼ばれる。関ヶ原の戦いに西軍として参加し島左近と共に家康暗殺を図るが、セドウド・ジンに阻まれ失敗する。敗走中にクタジマ・トシトに襲われていた哲子たちを助け、そのまま一緒に西暦1582年にタイムスリップする。原作における平野 兵助に相当するが、映画では自らの意志ではなくクタジマに意識操作されたことで光秀の暗殺を図る。
明智光秀:金内吉男
西暦1582年の武将。信長から接待役を命じられ、哲子たちを歓待する。朝廷との関係を巡って信長と対立しており、朝廷を蔑ろにする信長に対し謀反を起こす。
織田信長:横内正
西暦1582年の武将。クタジマ・トシトからは「乱世の王者」と称されている。「ミライ国の住人」と名乗る哲子たちを安土城に招き歓待し、共に本能寺に向かう。自分を前にして緊張する北勉を気遣う好人物として描写されているが、その一方で重臣の光秀や秀吉に対し不信感を募らせている面も描写されている。