寒椿(かんつばき)は、1992年公開の日本映画。昭和初期の土佐高知の色街を舞台に、原色の男女が織りなす愛と侠気の世界を描く、宮尾登美子原作の映画化。南野陽子の体当たり演技で話題を呼んだ妓楼「陽暉楼」の中でひっそりと花開く“牡丹”と女衒の岩伍との情愛。
寒椿 映画批評・評価・考察
寒椿(かんつばき)
脚本:35点
演技・演出:17点
撮影・美術:17点
編集:8点
音響・音楽:8点
合計85点
スケバン刑事から5年で大胆な濡れ場を演じるられるようになった南野陽子の女優としての成長が伺える作品です。地味な映画のようで、前半は色恋を描き、後半はハードボイルドな展開でメリハリのあるストーリーになっています。
主演の西田敏行の演技は良いのですが、興行的に地味な印象が拭えなかったように思えます。もっと話題になって良い作品ですし、東映スタッフの技量もよく表れています。終始ケダモノのような演技を続ける高嶋政宏も役柄にあっていて、西田敏行との格の違いを表すのに丁度よい存在でした。
とりあげている題材とは裏腹に作品に漂う品の良さは、南野陽子が持っている透明感と脇を固める俳優が実力者揃いで作品に浮つきを感じませんし、映像も美しいものでした。
寒椿 あらすじ(ネタバレ)
昭和2年、21歳の貞子は女衒の岩伍に買われ、高知の妓楼『陽暉楼』へ身売りされる。永年の女衒稼業を続ける岩伍は、これまで1度も身売りされる娘やその親に同情したことはなかったが、貞子の初々しさには何か心にひっかかるモノがあった。早速「牡丹」という源氏名が付けられた貞子は、女将のみねのもとで芸事の特訓をさせられる。
岩伍は先ず一安心だった。苦界といっても『陽暉楼』なら、それなりの格式もあり客質も上等だ。牡丹も慣れぬ世界で始めは苦労するだろうが、愚にもつかない父親と暮らすよりは幸せになるだろうと、岩伍はこの商売をしてきて初めて心の安らぎを感じる。だが、その一方で岩伍の妻・喜和は、若い娘の身を売買する夫の商売が心痛で、息子の健太郎を連れて家出をしてしまうのだった。しばらくたって牡丹が座敷へ出る日が訪れ、たちまち『陽暉楼』の1番の売れっ子となった。岩伍は我がことのように喜び、事あるごとに励ましの言葉をかけた。だが、牡丹に熱い想いを寄せる力士くずれのヤクザ仁王山は、そんな岩伍に強い憎しみを覚える。それから数日後、仁王山が牡丹をさらって姿をくらます事件が起こる。牡丹の身を心配した岩伍は単身で2人の捜索に旅立つ。やがてある寂しい漁村で2人を見つけ出した岩伍。2人は高知に連れ戻された。仁王山は牡丹をあきらめることで組に戻り、牡丹は財閥の御曹司・多田守宏に見受けされることを承知して『陽暉楼』に戻った。だが、牡丹が心底好いているのは岩伍だけだった。そのことを告白された岩伍は胸が熱くなるが、女衒が売り買いした女を抱ける道理はなかった。そして傷心のうちに見受けされて東京に発つ牡丹。しかし牡丹は満州へ売られ、それを知った岩伍は満州へ向かい牡丹を助ける。そして再会する牡丹と仁王山。そんな2人に再び魔の手が襲いかかり、岩伍は死闘の末、牡丹と仁王山を追っ手から逃がすのだった。
寒椿 スタッフ
監督:降旗康男
脚本:那須真知子
原作:宮尾登美子
企画:日下部五朗
製作:東映京都撮影所
プロデューサー:奈村協,中山正久
撮影:木村大作
美術:内藤昭
音楽:小六禮次郎
歌:倍賞千恵子
録音:伊藤宏一
照明:増田悦章
編集:市田勇
助監督:藤原敏之
スチール:中山健司
配給:東映
寒椿 キャスト
西田敏行:富田岩伍
南野陽子:牡丹(貞子)
高嶋政宏:仁王山
かたせ梨乃:松崎みね
藤真利子:富田喜和
野村真美:小奴
海野圭子:染弥(妙子)
中野みゆき:花勇
浅利香津代:お鹿
岡本麗:お茂
津嘉山正種:山岡源八
三谷昇:庄
笹野高史:桑名勝造
西野浩史:健太郎
黒部進:百鬼勇之助
河原さぶ:撃剣の浜田
荒勢:雲竜
児玉謙次:井上貢
大前均:筆の海
佐々木勝彦:神谷
白竜:多田守宏
段田安則:英次
本田博太郎:小笠原楠喜
神山繁:中岡亮太
高橋悦史:多田宇一郎
萩原流行:田村征彦