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コクリコ坂から|1963年の横浜を舞台に、16歳の少女と17歳の少年の出会いと交流、まっすぐに生きる姿を描く。

コクリコ坂から
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コクリコ坂からは、2011年公開の日本映画。高橋千鶴・佐山哲郎の同名コミックを原作に、「崖の上のポニョ」の宮崎駿が企画・脚本、「ゲド戦記」の宮崎吾朗が監督を担当するスタジオジブリ作品。1963年の横浜を舞台に、16歳の少女と17歳の少年の出会いと交流、まっすぐに生きる姿を描く。

コクリコ坂から 映画批評・評価・考察


コクリコ坂から(英題:From Up On Poppy Hill)

脚本:33点
演技・演出:16点
撮影・美術:19点
編集:8点
音響・音楽:8点
合計84点

太平洋戦争が終わって18年、日本は焼け跡から奇跡の復活を遂げた。
そして、高度経済成長が始まろうとしていた時代に、復活の象徴として、日本は東京オリンピックの開幕を目前に控えていた。
人々は古いものはすべて壊し、新しいものだけが素晴らしいと信じていた。
煙突から吐き出される煤煙。道路をひしめく車の土埃。
人々でごった返す街。工事や建物の解体作業の騒音。
しかし、それでも海は青く、緑は輝き、空は広く、世界は希望に満ちてキラキラと輝いていた。
そんな時代に、横浜にあったある高校で、明治に建てられた由緒ある建物をめぐって小さな紛争が起きていた。古いけれど、歴史と思い出のつまった建物。
それを取り壊すべきか、保存すべきか。
ある高校生の男女が、そんな事件の中で出会い、心を通わせ、助け合って行く。
ふたりが見出した日本の“明るい未来”とは、何だったのか。
16歳の海と17歳の俊の愛と友情を横糸に、建物をめぐる紛争を縦糸に、この物語は、まっすぐに生きる高校生たちの群像をさわやかに描いてゆく―。

宮崎吾朗監督作品で最も評価されている作品です。
ですが今作品、父宮崎駿が企画も脚本も担当しており、親子共作といえるでしょう。全体的に薄味の内容ですが、その背景や空気感が好きだという感じで内容は覚えてられない不思議な作品です。

コクリコ坂から あらすじ(ネタバレ)

1963年(昭和38年)、初夏の横浜。女子高生の松崎海は、海の見える丘に建つ”コクリコ荘”を切り盛りしている。海は、朝鮮戦争で機雷に触れて亡くなった船乗りの父を偲んで毎朝庭に国際信号旗(意味はU旗とW旗で「ご安航を祈る」)を揚げていたが、高校の学級新聞に”旗を上げる少女”の詩が匿名で掲載されると、それが自分のことではないかと胸をときめかせる。

海の高校には、男子文化部の部室棟“カルチェラタン”があり、老朽化による取り壊しの是非が論争になっていた。海は、取り壊し反対の論陣を学級新聞で張っている風間俊と知り合い、2人は淡い恋心を抱くようになる。俊に協力したいと思った海が、カルチェラタンの大掃除を提案すると、高校では女子生徒たちをも巻き込んだ一大掃除作戦が始まる。

ところが、コクリコ荘に下宿していた北斗の送迎パーティで、亡くなった父が友人2人と撮った写真を俊に見せてからというもの、俊は急によそよそしくなってしまう。海が問いただすと、海の父は俊の父と同一人物であり、戸籍を調べたところ、自分たちが兄妹であることが分かったのだという。俊も又、自分の父のものだという同じ写真を持っていたのである。今まで通り、ただの友達でいようと告げられた海は、深く落ち込んでしまう。

やがてカルチェラタンの大掃除が進むと、取り壊しに賛成していた生徒たちまでもが保存を望むようになる。しかし、学校側はそれを意に介することなく、取り壊しを決定する。生徒会長の水沼と共に海と俊は生徒の代表として東京に赴き、学校の理事長に直談判して、綺麗になったカルチェラタンを見学してもらう約束を取り付ける。その帰り道に、例の詩の作者が俊であったことを海は知る。海は気づいていなかったが、俊は毎朝コクリコ荘の前を養父のタグボート船で通っており、海の旗に応答する旗を船に揚げていたのだ。たとえ兄妹でも、俊のことがずっと好きだと海が告白すると、俊も海が好きだと答える。

海が帰宅すると、アメリカから帰国したばかりの母が待っていた。母によれば、俊は海の兄ではなく、引き揚げ船の事故で亡くなった友人の立花(写真に写っている友人のうちの一人)から父が引き取ってきた子だという。立花の妻は俊を産んで急逝しており、親戚も皆ピカドンで亡くなっていたために身寄りの無くなった俊を、父は自分の子として役所に届け出た。しかし、当時海を身ごもったばかりの両親にも俊を育てる余裕は無く、父の知り合いである俊の養親に譲り渡していたのだ。それを聞かされた海は、母の胸で泣き続ける。

翌日、約束通りにカルチェラタンを訪問した理事長は、生徒たちに共感してカルチェラタンの保存を約束する。喜びに沸く学校に、俊の養父から俊の生い立ちを知っているという人物が近くに来ているという連絡が入り、海と俊は港の大型船に駆けつける。大型船の船長を務めるその人物とは、海の父と俊の父のかつての親友で、写真に写っていた3人めの人物、小野寺善雄だった。小野寺から詳細を聞かされた2人は笑顔で肩を並べる。

そして翌朝、海は今日もいつものように旗を揚げる。今度は父親だけでなく、俊も船の上から見ていることを願いながら。

コクリコ坂から スタッフ

原作:高橋千鶴,佐山哲郎『コクリコ坂から』(角川書店刊)
監督:宮崎吾朗
企画:宮崎駿
脚本:宮崎駿,丹羽圭子
音楽:武部聡志徳間ジャパンコミュニケーションズ
キャラクターデザイン:近藤勝也
作画監督:山形厚史,廣田俊輔,高坂希太郎,稲村武志,山下明彦
美術監督:吉田昇,髙松洋平,大森崇
撮影監督:奥井敦
音響監督・整音:笠松広司
動画検査:斉藤昌哉
色指定:森奈緒美,高栁加奈子
アフレコ演出:木村絵理子
録音:名倉靖
フォーリー:山口美佳
効果助手:松長芳樹,千本洋
編集:瀬山武司
制作担当:古城環
制作デスク:伊藤郷平,吉川俊夫
制作進行:居村健治,三吉弓子,坂本太夫,渋谷美音,橋本綾
演出助手:仲澤慎太郎,清川良介
プロデューサー:鈴木敏夫
製作:スタジオジブリ,日本テレビ放送網,角川書店,博報堂DYメディアパートナーズ,ウォルト・ディズニー・ジャパン,ディーライツ,東宝
特別協賛:KDDI
特別協力:ローソン,読売新聞
制作:スタジオジブリ
配給:東宝

コクリコ坂から キャスト

松崎 海長澤まさみ(幼少期:渡邉葵
本作の主人公。港南学園高等学校2年で、コクリコ荘での家事もこなしている。原作同様「メル」というあだ名で呼ばれるシーンがあるが、映画の中ではその由来は触れられていない。船乗りであった父・澤村雄一郎が生きていた頃からの習慣で、海に向かって毎朝国際信号旗のU旗とW旗を掲揚している。この2字信号は「ご安航を祈る」(I wish you a pleasant voyage.) という意味である。カルチェラタンの存続運動を通じて風間俊と惹かれ合うようになるが、戸籍から俊と兄妹であることが判り、思い悩む。終盤、アメリカに留学していた母親の良子が帰国し、良子から自分と俊の関係の真相を聴き知り、俊とは戸籍上は兄妹ではあるものの、実際には血の繋がりが無いことが判る。

風間 俊岡田准一
本作の準主人公で、港南学園高等学校3年。週刊の学校新聞「カルチェラタン」のチーフで、水沼と共に文化棟「カルチェラタン」存続運動の中心人物となっている。養父は港でタグボート業を営んでいる。朝の登校にボートを利用していたため、海が揚げる信号旗を見ており、返事の信号旗を掲げていた。やがて海とは惹かれ合う仲となるが、兄妹であることが判り、よそよそしくなる。

水沼 史郎風間俊介
俊の親友で、港南学園高等学校3年。生徒会長。カルチェラタン存続運動の実質的な代表者。常に議論渦巻く学生陣を発言一つで纏め上げるだけの統率力を持つ。俊にサインを貰いに来た空と知り合い、親しくなる。

松崎 花竹下景子
海の母方の祖母で、コクリコ荘の管理人。

松崎 空白石晴香
海の妹。港南学園高等学校1年。俊が飛び降りた時の写真にサインをもらうために俊の元を訪れた際に水沼と知り合い、親しくなる。

松崎 陸小林翼
海・空の弟。コクリコ荘で唯一の男性住人。

松崎 良子風吹ジュン
海・空・陸の実母。大学助教授でアメリカ留学中だったが、劇中終盤に帰国し、海と俊の関係について真実を話す。

北斗 美樹石田ゆり子
コクリコ荘に下宿している女医。港南学園高等学校OG。劇中、栄転によりコクリコ荘を去る。水沼の姉とは同級生だった。原作にいた男性獣医「北見北斗」に相当する。

広小路 幸子柊瑠美
コクリコ荘に下宿している、油絵画家を目指す美大の3年。21歳。メガネとハネたボブカットが特徴。黒髪美人だが、生活はズボラで大喰らいである。海との関係は良好で、海がタメ口で会話できるほどの間柄。部屋の窓が海側に面しており、風間が挙げていたタグボートの旗にいち早く気づいていた。

友子(ともこ)
花が雇った家政婦で、彼女の身の回りの世話の他、海が学校へ行っている間の家事全般を引き受けている。友子のお給金は花が出している。

澤村 雄一郎岡田准一
海・空・陸の実父。戦後は船乗りをしていたが、朝鮮戦争の際に国連軍の兵員輸送に従事し、乗り組んでいたLSTの触雷沈没で死亡した。海が毎日欠かさず旗を揚げているのは、父である彼が自分の帰るべき家であることが判るようにするためである。元・海軍軍人で、立花・小野寺とは海軍時代からの親友同士。3人で写った写真が海と俊の元に残されており、俊はその写真の澤村を実父だと思っていた。朝鮮戦争に出向く前、親友である立花が事故で死亡し、立花の実子で身寄りがいなくなってしまった赤ん坊の俊を引き取り、自身の実子として出生届を出した。俊が戸籍上、海の実兄となっていたのはそのためである。しかし澤村も経済的に貧しく、自身が船乗りである一方妻がまだ学生で養育が困難と考え、やむなく船乗り仲間である風間明雄に俊を託し、養子に出した。

風間 明雄大森南朋
俊の養父。子供を早くに亡くし、それ以降も子供に恵まれなかったため、船乗り仲間だった澤村の申し出を受けて俊を養子に迎えた。澤村とは軍人時代からの知り合いではないため、俊の生い立ちについての詳細は知らず、澤村が俊の実父だと思っていた模様。

立花 洋風間俊介
俊の実父。故人。澤村・小野寺と海軍時代からの親友だった。俊の出生時に妻を亡くし、その直後に自身も海の事故により死去した。親族もピカドンの影響で俊の養育ができる状態ではなかったため、親友であった澤村が俊を実子として迎え、出生届を出した。

小野寺 善雄内藤剛志
良子・明雄の知人で、海の実父である澤村雄一郎と、俊の実父である立花洋とは海軍軍人だった頃の親友。写真に映った親友3人組の中で、劇中時点まで生存している唯一の人物。偶然横浜に寄港した際、俊の複雑な生い立ちを説明するよう依頼を受け、船に俊と海を迎え、出航時間を伸ばしてまで詳しく話して聴かせた。最後は立派な青少年に育った海と俊に逢えたことを涙ながらに喜んだ。

徳丸理事長香川照之
港南学園高等学校を経営する法人の理事長。会社を経営する実業家でもあり、非常に多忙であるが、若者の主張に理解を示す頭の柔らかい人物であり、綺麗にしたカルチェラタンを見るために自身の予定を変更してまで学校を訪れ、カルチェラタン存続を即決した。豪放磊落な性格の人格者。モデルはスタジオジブリ初代社長であり、学校法人逗子開成高等学校の理事長を務めていた徳間康快。

徳丸ビル受付係藤巻直哉
徳丸ビルの受付係にいる男性。急を要するためにアポを入れずに直訴に来た海たち3人を門前払いすることなく話を聴き、社長室が4階に在ることを案内する。

徳丸理事長の秘書伊藤綾子
アポなしで直訴に来た海たち3人に社長は多忙なので逢えないかもしれないが、それでも良いなら待つようにと伝える。事務的で冷たい印象を与える女性だが、3人のために茶を入れて持ってくるなど、最低限のことはしてくれた。

悠子手嶌葵
海の学友。

信子冠野智美
海の学友。

全校討論会壇上の発言者桝太一
カルチェラタン取り壊し賛成派の学生。挙手をせずに発言に割り込んだ俊に苦言を呈するが、後に海の発案で全校生徒を総動員してのカルチェラタン大清掃をすることとなり、その過程でカルチェラタンが奇麗になるにつれて存続派に鞍替えし、徳丸による鶴の一声でカルチェラタン存続が決まった時には涙を流して喜んだ。

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