アナザヘヴンは、2000年4月29日に日本で製作・全国松竹系で公開されたホラー映画。とあるアパートで死体の脳みそでシチューが作られると言う猟奇殺人事件が発生。やがて同様の事件が連続して起こる中、主人公の早瀬マナブは事件を捜査するうち、犯人が人間ではないのでは? と考え始める。上映時間131分。当初は映倫審査によりR15+版指定を受けて公開されたが、上映期間中に死体などの残酷な描写の画面を暗くするなど修正されたPG12版に差し替えられた。映像ソフトはR15+指定のノーカット版。興行収入は6.5億円だった。
アナザヘヴン 映画批評・評価・考察
アナザヘヴン
脚本:28点
演技・演出:16点
撮影・美術:15点
編集:8点
音響・音楽:8点
合計75点
公開時は『ヒドゥン』、『セブン』のパクリだと、非常に叩かれた作品ですが、今日のハリウッド、邦画作品で露骨なパクリが横行していることを考えれば、今作品はインスパイア、オマージュといっていいような気がしています。
飯田監督の作品は、ストーリー構成が悪いのか前半が面白く後半がつまらないシーンが増えていく傾向があります。今作品では、序章は非常にそそられる緊張感があって熱中させてくれるのですが、脚本が雑過ぎるんです。いらないシーンが多いというべきかもしれません。俳優さんが熱演するだけにもったいないです。熱演がギャグに見えかねない過剰な演出もどうなんだろうと後半につれて感じるようになります。そういう演出は『NIGHT HEAD』からそうなんですけど。
飯田監督の代表作であるドラマの沙粧妙子-最後の事件-ではそれがいい方向に出る場合があるのでさじ加減が大事なんでしょうけど、良く調べたら演出は飯田氏じゃなかった。。。。
撮影監督の高瀬氏と美術監督の斎藤氏は、いい感じに仕事されてるだけに、惜しい気がした作品でした。
アナザヘヴン あらすじ
脳みそが抜き取られ料理されるという、猟奇連続殺人事件が発生した。遺体や現場の状況から検屍官の赤城によって、犯人は体重100キロ、握力150キロ以上、しかも料理が得意な人物と目された。事件を担当した捜査一課の早瀬刑事は、犯人像とは似ても似つかないと反対する飛鷹警部の意見を押し切り、事件の3日前に美術館に出かけたまま行方不明になっていた女子大生・柏木千鶴を容疑者として捜索を開始。だが、彼女もまた脳みそがない状態の死体で発見されるのだった。しかし、事件はそれで解決した訳ではなかった。その後、同じような事件が若い会社員・木村敦や警察病院の医師・笹本美奈によって引き起こされる。早瀬は、以前担当した事件の犯人だったキャバクラ嬢の朝子に、真犯人は人間ではない何かだと助言を受けるが、彼女もまたその何かに体を乗っ取られてしまう。そして、その何かとは「悪意」だった。退屈な天国に飽きた悪意は、その姿を水に変えて地上の人々に乗り移り、殺人を繰り返していたのだ。朝子を悪意から助けようとする早瀬。一方、悪意はそんな彼の体に乗り移ろうとする。しかし、飛鷹の咄嗟の機転で液体の悪意にベンジンをかけ、燃やしてしまうのだった。こうして、悪意との戦いに勝った早瀬たち。そんな彼らの上に、雨が降り注ぐのであった……
アナザヘヴン スタッフ
監督・脚本:飯田譲治
原作:飯田譲治,梓河人
撮影:高瀬比呂志
美術:斎藤岩男
編集:阿部浩英
音楽:岩代太郎
主題歌:『gravity』 LUNA SEA (テレビドラマ版も同一)
配給・宣伝:松竹
制作:オメガ・プロジェクト,アナザヘヴンカンパニー
宣伝協力:ギャガ
製作:アナザヘヴン・フィルムパートナーズ(オメガプロジェクト・ホールディングス,松竹,オフィス・トゥー・ワン,ポニーキャニオン,博報堂,テレビ朝日,ヤン・エンタープライズ,衛星劇場)
アナザヘヴン キャスト
早瀬マナブ:江口洋介
本編の主人公。警部補。かつては犯罪マニアだった。料理はプロ並。父親は警視庁上層部の人間。
大庭朝子:市川実和子
元キャバクラ嬢。違法キャバクラの摘発のため自身が勤めていた店を訪れたマナブに一目惚れし、以降はマナブにつきまとっている。少し頭が弱く、グロテスクなものが平気だったり、超能力を信じたりと一見幼稚な発言ばかりするが、マナブが考えつかないような第六感的な発想を持つ。純粋で全てを受け入れ、誰かが傷つくのを嫌がる。ナニカによる第四の被害者。
笹本美奈:松雪泰子
警察病院に勤務している女医。ナニカによる第三の被害者。赤いポルシェに乗っている。マナブに好意を見せる。マナブの家に駆け込んだ飛鷹と赤城からナニカの憑依を疑われた際に「なんなの!?」と憑依されていない素振り(ナニカが男性やマナブについて学習したと思われる)をするが、マナブの家に置き忘れた大量の鎮痛剤のから袋を朝子に見つけられる。木村敦の犯行に見せかけて大量殺人を起こす。
木村敦:柏原崇
美形だが気弱で女性に興味がない(ゲイにも近いものはある)サラリーマン。自分の先輩2人が柏木千鶴の誘惑に負けて連れられていくのを見て、面倒に巻き込まれないために苦手な酒を飲みながらそのままついて来たが、目の前で2人の先輩を殺害される。しかし自身は純粋さと女性っぽさからナニカに殺害されず、すでに身体に限界が訪れていた千鶴の代わりにナニカに憑依され第二の被害者となる。マナブと飛鷹健一郎に発見された当初は子犬のように震えながら飛鷹を見るなり、狂気じみた高笑いをするが、マナブの髪を優しく撫でて、自分が惚れた脳みそを確かめる。千鶴への憑依時と異なり木村への憑依後のナニカは男女問わず殺害対象とする。ただし木村の美貌目当てについてきた女性を殺害するのもマナブを愛するためであり、ついてきた女性そのものに興味はない。ナニカは木村への憑依後は殺人を犯す前にテレビやビデオから現代の犯罪を学び「人殺しは悪いことかな?」と考えるようになり、さらにマナブから愛されようとして、また愛するがあまりにマナブにキスをする。能の一文を引用するなど、ナニカの憑依以前から美術や文学に造詣があると思わせる描写がある。またナニカの憑依後は千鶴の思考が残っていたため、生花を好む。しばらくの間、木村の身体に憑依するも腫瘍による頭痛と逃走の際に2発の銃弾を撃たれ、満身創痍の身体となり、血塗れでマナブの前から姿を消した。また「撃つぞ!」と警告する飛鷹やマナブに「日本の警察は撃てません」と笑顔で語り、次の瞬間には妖艶な顔で睨みつけた。再びナニカが千鶴と同じく体を酷使し過ぎた事と、ナニカがマナブは男には興味がない事を学んだためにナニカに体を捨てられる。しかし千鶴とは違い、男性の肉体だったため、笹本に寄生したナニカに殺害され、笹本の愛車のトランクで遺体となって発見される。
幕田ユウジ:加藤晴彦
盗聴マニアで警察無線を盗聴している。飛鷹に憧れているが、犯罪レベルの盗聴も行っている。木村の犯行現場である団地にいた。その盗聴技術や一般市民との立場から飛鷹に協力させられるが、マナブの救出などで飛鷹に助力できたことや、飛鷹と直接顔を合わせたことにより刑事を志すようになる。
飛鷹健一郎:原田芳雄
マナブの同僚。ベテラン刑事で脳みそ料理を見ても冗談を飛ばせるほど表面的には冷静を装えるプロ。口は悪いが事件を追う情熱は人一倍で、犯人を追うためなら自身が足を怪我していても捜査を行い、市民の安全のためにマナブに木村を撃つよう指示している。超能力や超常現象は「刑事が一番信じてはいけないもの」としている。
両角刑事:井田州彦
坂木とバディを組む刑事。笹本に憑依したナニカに投げ飛ばされて、棚に全身を強打した時の痛みで涙を流していたのを笹本から抜け出したナニカが憑依したと勘違いしたマナブと飛鷹に右足と右耳を撃たれる。
柏木千鶴:岡元夕紀子
女子大生。第一の被害者。アポロ像を見ているのを最後に行方不明となった。普段はおとなしく地味で真面目な女性だったが、ナニカに憑依されてからは猟奇的な性質になり服装も派手になり男性に快楽を求めるようになる。料理好きや生花好きなこと・指紋が小さいことから当初は猟奇殺人の加害者は女性と思われたが、怪力とも評される非常に強い力が加わらないと不可能な手口から警察は、加害者が女性であるとの説を否定したが、朝子は「料理が全部花嫁学校で作る基本的なもの」と加害者が若い女性であることを指摘する。ナニカが体を酷使し過ぎたせいで木村たちに初めて会ったバーでついに目から血を流してしまい、さらに木村の先輩たちに暴力を振るった際に足が捻れるほどの大怪我をしたため、ナニカに見切りをつけられ、脳みそが空っぽのまま遺体で発見される。
坂木警部:六平直政
警部。飛鷹と仲が良い強面。しかしグロテスクなものに弱い。超常現象は信じないタイプで、ビルから飛び降りた木村が生きていたことに対し「嘘だろ!?」と絶叫する。
赤城幸造:柄本明
検死官。年老いているが仕事はベテラン。飛鷹より冷静。今まで一番酷いと感じた事件は「男性器を口に入れられた男性」の遺体が見つかった事件としている。いつも死んだものばかり見ているため「たまには生きたものと接したい」という理由から熱帯魚を飼っている。
熊倉刑事:康喜弼
池上検死医:塩屋俊
田口鑑識:諏訪太朗
溝口鑑識:山本密
大野慎次:阿藤快
第一の事件のアパートの住人。精肉店を経営しており、店でシチューも作っている。シチューは味に定評があり本人もそれを誇りに思っている。猟奇殺人事件の真犯人ではなかったが、容疑者に挙げられた際には怒りから暴れるなどの行動を取る。
大野和子:大島蓉子
大野慎次の妻。
田宮寛典:芦川誠
木村の先輩にあたるサラリーマン。料理を作っている千鶴の邪魔をし、首をへし折られて殺された。
横山敬吾:向井智紀
木村の先輩にあたるサラリーマン。千鶴に殺されかけるが、命からがら逃げだした。
友枝智:荒川良々
千鶴の犯行の7人目の犠牲者となった男性がボランティアで行っている障害者スクールに通う青年。男性を「先生」と呼び慕っていた。霊能力があり、亡くなった「先生」に呼ばれて部屋を訪れたがそこへマナブと飛鷹も現われたため部屋の押入れに隠れていた。「先生」の存在をマナブと飛鷹は知覚できなかったが、智から見た視点では回帰現象が起き、智には「先生」の部屋で起きた出来事が知覚できており、「先生」が千鶴を「チーちゃん」と呼び、「先生」が無理矢理襲われ、「先生」の脳が酢の物に調理にされるが、チーちゃんは「先生は悪いことを考えていないから美味しくない」と言っていたことなど、「先生」の言葉を自身を通じて警察に話し、また「先生」が描いた千鶴の似顔絵が見つかるきっかけとなる。
大家の中村:つじしんめい
ホテルのマネージャー:信太昌之
ニュースキャスター:真鍋由
アシスタント:乾貴美子
コメンテーター:京極夏彦
コメンテーター:綾辻行人
アナウンサー:武田肇