わたしを離さないでは、2010年公開のアメリカ・イギリス合作映画。2017年ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロが2005年に発表した同名のSF小説を原作とするドラマ映画。アレックス・ガーランドが脚本を執筆し、マーク・ロマネクが監督、キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイが主演した。岩井俊二氏絶賛!!『去年僕が観た映画で一番後遺症が残った作品。こんな話あるわけないだろうと思いながらも、いったんこのホラ話に乗ってしまうと息も出来ないような世界に連れてゆかれる。出口なし。けど彼らの感受性はあまりにもリアルでピュアなのだ。
わたしを離さないで 映画批評・評価・考察
わたしを離さないで(原題:Never Let Me Go)
脚本:35点
演技・演出:18点
撮影・美術:18点
編集:8点
音響・音楽:8点
合計87点
ストーリー上、すごい鬱映画にして心を打つ映画。若手キャストの演技力が光り、キャリー・マリガンの言葉を発しなくても表情や微妙な仕草で感情を見せられる豊かな表現力を筆頭に、アンドリュー・ガーフィルド、キーラ・ナイトレイの表現力は素晴らしいものだった。絶望的な物語、人生、それが宿命だとあなたは受け入れられますか?
登場人物が達観していて、同じくクローンがテーマの「アイランド」のように生と自由を得るために抗う主人公達の姿勢と対照的で、前者は文学的で後者は映画的なものかと思いました。
※2016年1月15日から3月18日まで、TBS系「金曜ドラマ」枠にて綾瀬はるかの主演でテレビドラマ化された。脚本は森下佳子が担当。原作のイギリスから、舞台を日本に移して翻案。
わたしを離さないで あらすじ(ネタバレ)
「1952年 不治とされていた病気の治療が可能となり 1967年 人類の平均寿命は100歳を超えた」
手術室の前。キャシーは介護人になって9年だが満たされず、「ひずみ」がたまっている。
1978年。思い出すのは緑豊かな自然に囲まれた寄宿学校ヘールシャムだ。キャシー、ルース、トミーの3人は幼い頃から一緒に過ごす。外界と完全に隔絶したこの施設にはいくつもの謎があり、外で生徒が殺されたり、餓死したという。「保護官」と呼ばれる先生に教わり、絵や詩の創作はマダムのギャラリーに送られていた。学校では頻繁な健康診断も買い物の練習も行われる。キャシーはトミーからJudy BridgewaterのSongs after Darkというミュージックテープをもらい、その中の曲“Never let me go”を聴く。絵は重要ではないといい、「明解な説明がなされてない」「あなた方の人生はすでに決められている」「中年になる前に臓器提供が始まる」「大抵は3度目か4度目の手術で短い一生を終える」「自分というものを知ることで“生”に意味を持たせて下さい」と言ったルーシー先生は校長に辞めさせられる。
1985年、18歳になってみんな提供臓器によって施設に別れるのだが、3人はコテージと呼ばれる場所で共同生活を始める。恋人同士となったルースとトミーの傍でキャシーは孤立していく。他から来たクリシーとロッドは真剣な恋だと分かると「提供猶予」があるはずと訊くが噂話だといって落胆させる。海岸沿いでルースは自分の「オリジナル」かもという人を見るが、似てないと否定する。ルースは噂を信じ、ギャラリーに絵を提出していなかったと悔む。キャシーは介護生を申請してコテージを出ていくが、車には「国立提供者プログラム」と書かれている。ルースとトミーも別れ、3人の関係が断ち切られる。
「終了 1994年」。優秀な介護人となったキャシーは1回目か2回目の手術で「終了」になった人々との別れが辛くなる。看護婦は「覚悟していると本当に終了になる」と教える。ルースやトミーと再会を果たし、海岸へ行った時、ルースは嫉妬から2人を別れさせて悪かったと謝り、「提供猶予」が頼めるというマダムの住所を差し出す。昔キャシーがポルノ雑誌を見たのは、性欲からではなく自分のオリジナルを探すためだったことを僕はわかっていたとトミーが話す。3度目の手術でルースは「終了」。数年前からトミーが大量に描き始めていた絵を2人で持参し、マダムを訪ねるが、エミリー校長が出てきて今も昔も「猶予」はなかったし、絵は魂を探るためではなく、魂があるのかを知るためだったという。
【映画の冒頭に戻って】手術台のトミーが見える。トミーが「終了」して2週間後、キャシーにも1カ月後に最初の手術という通知が来て自問する。自分たちと救った人の間に違いがあるのか、“生”を理解することなく命が尽きるのはなぜか?
わたしを離さないで スタッフ
監督:マーク・ロマネク
脚本:アレックス・ガーランド
原作:カズオ・イシグロ
製作:アンドリュー・マクドナルド,アロン・ライヒ
製作総指揮:アレックス・ガーランド,カズオ・イシグロ,テッサ・ロス
音楽:レイチェル・ポートマン
撮影:アダム・キンメル
編集:バーニー・ピリング
製作会社:DNAフィルムズ、フィルム4
配給:20世紀フォックス,フォックス・サーチライト・ピクチャーズ
わたしを離さないで キャスト
キャシー:キャリー・マリガン
トミー:アンドリュー・ガーフィールド
ルース:キーラ・ナイトレイ
エミリー:シャーロット・ランプリング
ルーシー:サリー・ホーキンス
子供時代のキャシー:イゾベル・ミークル=スモール
子供時代のルース:エラ・パーネル
子供時代のトミー:チャーリー・ロウ