愛のむきだしは、2009年公開の日本映画。20年ほど前に園子温監督が知り合った「盗撮のプロ」の実話を基に製作され、自身の体験や取材を組み込んだ3時間57分に及ぶ純粋かつ壮絶な恋愛叙事詩。この作品のメインとなる若い3人(ユウ(西島隆弘)、ヨーコ(満島ひかり)、コイケ(安藤サクラ)に共通していることは、親からの愛がほぼ完全に欠如していることであり、その愛を穴埋めするために変態行為、暴力、宗教等に走っている。盗撮、パンチラ、レズビアン、勃起などのキーワードがたびたび登場するためR-15指定である。
園子温監督の23作目の作品で、2008年の第9回東京フィルメックスにおいて観客の投票によって選出される「アニエスベー・アワード」を受賞。2009年の第59回ベルリン映画祭に出品され、「カリガリ賞」「国際批評家連盟賞」を受賞した。第83回キネマ旬報ベスト・テンにおいて、主演の西島隆弘が「新人男優賞」、助演の満島ひかりが「助演女優賞」をそれぞれ受賞し、日本映画ベスト・テンでは第4位であった。第64回毎日映画コンクールでは「監督賞」に園子温、「スポニチグランプリ新人賞」に西島隆弘、満島ひかりがそれぞれ選ばれた。また『映画芸術』誌上の批評家による2009年度ベストテンで第1位になった。
愛のむきだし 映画批評・評価・考察
愛のむきだし(英題:Love Exposure)
脚本:30点
演技・演出:17点
撮影・美術:13点
編集:4点
音響・音楽:9点
合計73点
メインの3人の輝きが凄く、それぞれが個性的であり超人的であり変態的でもあり、面白いんだか、エロいんだか、怖いんだか、キモいんだか、いろいろな感情が目まぐるしく湧いてくる作品でした。
AAAの西島隆弘の純粋さと変態さが微妙なさじ加減で成立していて、変態ではなく純粋に感じられるのは彼の特性だと思う。満島ひかりにしても、安藤サクラにしても持ち味が存分に発揮されている。安藤サクラについては本当に怖い人なのではないかと思えてくるほどだった。アクションシーンがどっかで見たような感じがしたのは気のせいではなく、アクションデザインが坂口拓だったからかと後で納得した。「Versusヴァーサス」な感じがどこかしてた。
ともかく長い作品で、ここはいらないだろと思えるシーンも多かったけど、最初と最後は良かったなぁ~と思える作品だった。
愛のむきだし あらすじ
クリスチャンの家庭に生まれた男子高校生の本田悠(通称:ユウ、配役:西島隆弘)は、優しい神父の父テツ(渡部篤郎)と2人で幸せな生活を送っていた。幼くして亡くした母親の「いつかマリア様のような人を見つけなさい。」という言葉を忘れずに。
後に、父テツに愛人カオリ(渡辺真起子)ができ、聖職者でありながらもカオリに没落していく。しかしその愛人カオリも去り、ショックのためか父の性格は一変する。ユウはテツから毎日「懺悔」を強要されるが罪を何も思い出せず、父との繋がりを失いたくないがために、しまいに様々な罪作りに励んだ。その中でひとつ、父に許されることのないキリストの教えに反する罪があった。それは、女性の股間ばかりを狙う「盗撮」。
ユウはテツにヘンタイと殴られるが、これこそが愛だと感じる。そしてユウは盗撮の様々な技術を身につけるが、ついに父から懺悔を拒否されるに至った。父への執着心を愛と感じ取る感性が、ユウを盗撮のプロに仕上げていくが、それでもユウは全く性欲を感じなかった。
しかし転機が訪れた。ユウが探し続けていた「マリア」との出逢いがあった。その女性は、罰ゲームで女装していたユウ(通称:サソリ)の目の前で、不良少年たちの大群をカンフーで叩きのめしていた、女子高校生の尾沢洋子(通称:ヨーコ、配役:満島ひかり)。ユウはヨーコに、生まれて初めて恋に落ちた。さらにヨーコも、共に不良少年たちと戦ってくれた、サソリに恋をした。
2人は初めて恋心を知ったのだった。ユウはヨーコを想うと勃起が止まらない。ヨーコもサソリを想えば胸が痛くなり、初めてオナニーを覚えた。
数日後、突然、テツはカオリと再会し、「一緒に暮らし、神父をやめて結婚する」と語るが、そのカオリには連れ子がいた。それがヨーコだった。ヨーコはサソリに恋をするも、その正体が兄ユウだとは気がづかず、ユウを毛嫌いする。ユウの混乱は加速度を増し、想いを押し殺すようにして盗撮を続けていた。
その頃、膨大な会員数を誇り、営利を貪って、高層ビルまでを所持する悪の教団「ゼロ教会」という謎の新興宗教団体が世間を賑わせていた。教祖の右腕の女・コイケ(安藤サクラ)は何を企んでいるのか、ユウとユウの家族に近づき始めた。しまいにコイケは、ヨーコに自分がサソリだと思わせ、その後、家族丸ごと洗脳した。家族の不信感を払拭できず、家を出て行くユウは、新興宗教団体「ゼロ教会」との戦いを挑むことになった。
新興宗教団体「ゼロ教会」の信者のコイケは、父親からの虐待と復讐の過去があった。愛を足りずして取る行動は、学校での流血を伴う暴虐であった。ヨーコは浮気性の父親への嫌悪感が原因の男性不信に陥っていた。その衝動が、懐かしい家族の風景を自らの手で壊した。
ユウは新興宗教団体「ゼロ教会」に洗脳されたヨーコの心を取り戻すべく全身全霊を傾ける。
愛のむきだし スタッフ
原案・脚本・監督:園子温
エグゼクティブプロデューサー:横濱豊行,河井信哉
コー・エグゼクティブプロデューサー:梅村宗宏,松岡周作
アソシエイトプロデューサー:諸橋裕
プロデューサー:梅川治男
音楽:原田智英
ラインプロデューサー:鈴木剛
撮影:谷川創平
美術:松塚隆史
照明:金子康博
録音:永口靖
編集:伊藤潤一
スタイリスト:松本智恵子
アクションデザイン:坂口拓
アクション監督:カラサワイサオ
特殊造形・特殊メイク:西村喜廣,石野大雅
整音:小宮元
VFXディレクター:馬場革
キャスティング:石垣光代
助監督:森倉研弥
制作担当:戸田格
アシスタントプロデューサー:須藤麻衣子,千田一義
製作経理:佐藤尚子
企画:オメガ・プロジェクト
製作協力:アン・エンタテインメント
配給・宣伝:ファントム・フィルム
宣伝協力:パンドラ
製作プロダクション:ステューディオ スリー
製作:「愛のむきだし」フィルムパートナーズ(オメガ・プロジェクト、ステューディオ スリー)
愛のむきだし キャスト
本田悠(通称:ユウ) – 西島隆弘
尾沢洋子(通称:ヨーコ) – 満島ひかり
コイケ – 安藤サクラ
カオリ – 渡辺真起子
本田テツ – 渡部篤郎
タカヒロ – 尾上寛之
ユウジ – 清水優
先輩 – 永岡佑
クミ – 広澤草
ケイコ – 玄覺悠子
ユウの母 – 中村麻美
コイケの父 – 板尾創路
BUKKAKE社・社長 – 岩松了
ロイドマスター – 大口広司
親友の神父 – 大久保鷹
司教 – 岡田正
霊感絵画の客 – 倉本美津留
暴走族リーダー – ジェイ・ウエスト
暴走族幹部 – 綾野剛
クラブ店員 – 深水元基
救済会の神父 – 吹越満
ミヤニシ – 古屋兎丸
ヨーコの父 – 堀部圭亮
0教会先生 – 宮台真司