君たちはどう生きるかは、2023年7月14日公開の日本映画。吉野源三郎の小説『君たちはどう生きるか』からタイトルを取っているが直接の原作とはならず、同小説が主人公にとって大きな意味を持つという形で関わり、物語そのものは冒険活劇ファンタジーとなる。宮崎駿が、2013年の「風立ちぬ」以来、10年ぶりに監督を手がける長編アニメーション。前作の公開時に表明した引退を撤回して挑む。タイトルは、宮崎監督が少年時代に読んで感動したという吉野源三郎の著書『君たちはどう生きるか』から引用されているが、原作・脚本は宮崎駿のオリジナル・ストーリーになっている。
君たちはどう生きるか 映画批評・評価・考察
君たちはどう生きるか(英題:How Do You Live? 別題:The Boy and the Heron)
脚本:33点
演技・演出:15点
撮影・美術:19点
編集:7点
音響・音楽:10点
合計84点
2022年12月13日に公開予定日とポスタービジュアルが発表されましたが、以降予告編の公開やCM、新聞広告、公式サイトの開設といったプロモーション活動は全く行われておらず、出演者や主要なスタッフについても公開日までほとんどが非公開となっており、2023年2月下旬に行われた初号試写でも、厳重な箝口令が敷かれました。
公開日となる2023年7月14日に出演者が解禁となり、米津玄師が主題歌「地球儀」を担当したことが判明しました。
宮崎駿監督の集大成という感じで、本人が描きたいものを描いた感じは伝わってきます。ただ、晩年の黒澤映画のような感じでエンタメとは程遠いものです。情報を出さない・プロモーションを一切おこなわないという戦略は、作品の内容的に大コケする可能性を秘めていたことや、ジブリの懐事情もあったのではないかと考えてしまうところもあります。情報を出さないというのは、SNS時代ではありませんでしたが、『ターミネーター2』がその手法で大ヒットした事例があります。プロデューサーとしては、ジブリ映画の固定ファンの動員は見込めても、それ以外の動員を資金難の状態でどうすれば良いのか?という問いに沿った形でのプロモーション戦略だったように思えます。
エンタメであり、表現方法・内容も優れた作品を送り出す新海誠監督作品や、細田守監督作品などに慣れた今の若い世代が果たしてこの映画をどう観たか?感じたのか?オジサン的には気になります。今作品、個人的には宮崎ジブリの終焉を感じました。これは良い意味でも悪い意味でも・・・・
君たちはどう生きるか あらすじ(ネタバレ)
太平洋戦争中の1943年、牧眞人は空襲で実母・久子を失う。3年後、軍需工場の経営者である父親の正一は実母の妹、夏子と再婚し、眞人は母方の実家へ工場とともに疎開する。疎開先の屋敷には覗き屋のアオサギが住む塔がある洋館が建っていた。不思議に思った眞人は埋め立てられた入り口から入ろうとするが、屋敷のばあやたちに止められる。その晩、眞人は夏子によって塔は頭は良かったが本の読みすぎで頭がおかしくなったといわれている大叔父様によって建てられ、その後大叔父様は塔の中で忽然と姿を消したこと、近くの川の増水時に塔の地下に巨大な迷路があることから夏子の父親によって入り口が埋め立てられたことを告げられる。
転校初日、眞人は学校でうまく馴染めず、帰り道で地元の少年らからイジメを受ける。眞人は少年らから殴る蹴るの暴行を受けた際に負った傷をカモフラージュする為に、道端の石で自分の頭を殴ると、出血を伴う大けがを負ってしまう。帰宅後、自室で寝込んでいる最中、アオサギが眞人の部屋に入り込んできたのをきっかけに襲ってくるアオサギに木刀で立ち向かう夢やアオサギに「母があなたを待っている。死んでなんかいませんぜ」と話しかけられ、魚やカエルたちに全身を包み込まれそうになる夢を見る。眞人のけがに正一が校長に怒り狂う一方で夏子は妊娠によるつわりに苦しみ、何度も眞人の顔がみたいと周りに話すが、眞人は夏子にそっけない態度をとってしまう。眞人は使用人に教わりながらアオサギから身を守るため、自作の弓矢を作成する。ある日夏子が森の中へ消えていくのを見かけたが気にも留めなかった眞人だったが、自室で久子が昭和12年に眞人のために残した小説『君たちはどう生きるか』を発見し、読んでいくうちに涙を流してしまう。
その日の夕暮れ、夏子の失踪に屋敷中が大慌てになる中、眞人は使用人の桐子ともに夏子の後を追って洋館の裏口に入り、閉じ込められてしまう。アオサギに偽物の久子を見せられ、それを自らの手で壊してしまい怒った眞人はアオサギに弱点であるアオサギの羽根「風切りの七番」を矢羽根にした矢を放ち、アオサギの嘴を穿つ。するとアオサギは半鳥人の姿から戻れなくなってしまう。塔の最上階にいる謎の人物に命令され、眞人と桐子は「下の世界」へいざなわれていく。
「下の世界」に落ちた眞人はペリカンの大群に襲われ、「我ヲ學ブ者ハ死ス」と刻まれている墓の門を開けてしまうが、通りすがりの船乗り・キリコに助けられ、成り行きでキリコの仕事を手伝う。殺生ができない「下の世界」の住人のためにキリコは魚を殺し、生まれる前の魂たち・わらわらを飛ばす為にも魚の内臓が必要だったのだ。仕事を終え、外へ出た眞人の前で多くのわらわらたちが飛び始めた。それを狙ってペリカンたちがわらわらに襲い掛かり、捕食を始めた。そんな中、舟に乗って現れた少女・ヒミが自らの力を使って花火を打ち上げ、ペリカンたちを撃退させる。わらわらたちも巻き添えになる中、止めろと叫ぶ眞人だったが、ヒミがいないとわらわらたちは上の世界へ行けないとキリコはつぶやき、ヒミに感謝の言葉を投げかける。便所から出た眞人はヒミの力によって瀕死の老ペリカンと出会う。老ペリカンは海には魚がほとんどおらず、わらわらを食べるほかなすすべがない、子孫の中には飛ぶことをしないものもいる、どこまで飛んでも島にしか辿り着かない、などを眞人に語った後、力尽きてしまう。どこからともなくやってきたアオサギを横目に、眞人は丁重に老ペリカンを土葬した。翌日、アオサギを手伝わせて水くみをしていた眞人だったが、アオサギの「夏子の居場所を知っている」という発言から、キリコにアオサギとともに夏子を探しに行くよう提案され、キリコの下を離れる。その際、お守りとして「上の世界」の桐子によく似た人形をお守りとして手渡される。
一方、現実世界では、眞人と夏子、それに加え女中の桐子も一斉にいなくなってしまい、大捜索が行われ、正一が頭を抱える中、ばあやの一人が塔の正体を告げる。塔は大叔父様が一から造ったわけではなく、隕石の落下とともに出現した石の塔を大叔父様が発見し、周りを建物で隠したという。また、久子が生前、神隠しにあったが1年後、同じ姿のままひょっこり帰ってきたエピソードも眞人の父親に話す。
「下の世界」で夏子を探す道中、アオサギの飛行能力を取り戻すために、眞人は自ら穿ったアオサギの嘴の穴をふさぐべく、枝を削ってアオサギにあてがってあげた。アオサギ曰く、夏子は鍛冶屋の小屋の中にいるらしいが、すでに鍛冶屋は人を食うといわれる獰猛な二足歩行のインコの集団に占拠されていた。アオサギが飛んでインコの隙を付いた隙に鍛冶屋の小屋に入った眞人だったが、小屋の中はインコで溢れかえっていた。白いインコに「お待ちしておりました」と告げられ、夏子の元へと案内されるがそれは罠で、眞人はインコたちに囲まれ、殺されそうになる。あと一歩の状況の中、突如上がった火の中から現れたヒミが周りのインコたちを焼き殺した。ヒミのワープする力を使って二人はヒミの家へ移動、そこから夏子がいる石の塔へ向かった。上の世界と同じ塔があると気づいた眞人に対し、ヒミはどの世界にも石の塔は存在していることを教える。夏子がいる産屋への道すがら、眞人の世界へ通じる「132」と書かれたドアを見つける。その直後、インコ軍団に二人は挟まれてしまう。やむを得ずドアノブを握って現実世界へ逃げる。その時、捜索にきた正一と遭遇し、ドアが開いた隙に現実世界に大勢のインコがなだれ込む。インコは現実世界に入ると二足歩行から現実世界の姿になってしまい、正一は眞人がセキセイインコになったと大騒ぎする。
隙をついて「下の世界」に戻った二人は夏子のいる産屋に着き、眞人は夏子に元の世界に戻るよう訴えるが、夏子にひどく拒絶されてしまう。周りを取り囲む石の影響で産屋を追い出され、眞人とヒミは気絶し、警吏のインコたちによって二人は捕まってしまう。
眞人は夢の中で大叔父様と邂逅し、「下の世界」の均衡は石でできた積み木を使って自分がとっていること、眞人に自分の後をついてほしいことを語る。目覚めた後、調理場で捕まっていた眞人はインコに変装したアオサギに助けられる。「下の世界」の王の座を狙うインコ大王とその手下たちに捕まったヒミは大叔父様の下へ塔の上へ連れていかれ、眞人とアオサギは塔の外壁からインコ大王たちを追っていく。外壁の窓から侵入した眞人たちだったが、インコ大王に足場の階段を切り落とされ、二人は落下してしまう。大叔父様の下に到着したインコ大王は大叔父様と眞人たちが産屋に入るという禁忌を犯したと告げる。
階段の瓦礫から抜け出した眞人たちも大叔父様の下へ向かうが、そのあとをインコ大王が尾行する。道中の屋敷でヒミと再会した眞人は二人で大叔父様の下へ向かう。自分の下へたどり着いた眞人に対し大叔父様は「ここに13個の穢れていない石がある。3日に一つずつ積み上げて世界のバランスを取る自分の役目を引き継いで欲しい」と眞人に頼む。大叔父様曰く、自らの血を引継ぎ、悪意のない人間しかこの仕事は出来ないとのことだった。しかし眞人は自分の石で殴ってできた傷を指して「自分は悪意のある人間だ。この世界にとどまるより、キリコ、ヒミ、アオサギのような友達を元の世界で作りたい」と大叔父様に話す。その様子を見て怒ったインコ大王がこの世界の均衡を保つ積み木をでたらめに積んだせいで積み木は崩れ、「下の世界」は崩壊を始める。塔へたどり着いたキリコによって救われた夏子と眞人たちは合流する。眞人はヒミに自分たちの世界へ来るよう訴えるがヒミは眞人のお母さんになると告げ、ヒミが眞人の実母・久子の少女時代の姿であることが判明する。夏子もヒミと会い、別れを告げた後、眞人と夏子、アオサギは「132」のドアから、ヒミとキリコはヒミの少女時代につながるドアから元の世界に戻る。
「下の世界」の崩壊により避難してきたインコたちやペリカンたちも眞人たちの世界に出現し、塔は崩壊する。アオサギに「まだ向こうのことを覚えてんですかい」と問われた眞人はポケットの中の桐子の人形や大叔父様の下へ向かう最中で拾った石に気付く。「じき忘れていく」という言葉とともにアオサギは眞人の前から姿を消す。そして眞人のポケットの中からこの時代の桐子が現れる。
2年後、戦争が終わり夏子は子どもを産み、眞人には弟ができる。一家が東京に戻ることになり、眞人が自室から出ていくシーンで物語は終わる。
君たちはどう生きるか スタッフ
原作・脚本・監督:宮﨑駿
作画監督:本田雄
美術監督:武重洋二
音楽:久石譲
主題歌:米津玄師「地球儀」
制作・製作:スタジオジブリ
プロデューサー:鈴木敏夫
配給:東宝
君たちはどう生きるか キャスト
牧眞人:山時聡真
覗き屋のアオサギ:菅田将暉
若き日のキリコ:柴咲コウ
ヒミ(少女時代の久子):あいみょん
夏子:木村佳乃
ばあやたち:竹下景子,風吹ジュン,阿川佐和子,大竹しのぶ
老ペリカン:小林薫
インコ大王:國村隼
大叔父様:火野正平
牧正一(眞人の父):木村拓哉(特別出演)