ファイヤーフォックスは、1982年公開のアメリカ合衆国の映画。音速の6倍で飛行し、レーダーに影すら残さないソ連の戦闘機ミグ31を、アメリカ空軍の一軍人が盗むまでを描くクレイグ・トーマスのベストセラー小説(パシフィカ)の映画化。作中に同名の戦闘機が登場する。原作のクレイグ・トーマスは、1976年のベレンコ中尉亡命事件にヒントを得て、この小説を一気に書き上げた。映画の製作に当たっては、アメリカ空軍・アメリカ海軍も協力しており、東西冷戦時代という背景の濃い作品のひとつである。
ファイヤーフォックス 映画批評・評価・考察
ファイヤーフォックス(原題:Firefox)
脚本:36点
演技・演出:15点
撮影・美術:13点
編集:8点
音響・音楽:8点
合計80点
アメリカ空軍・アメリカ海軍も協力しており、東西冷戦時代という背景が濃い作品で、主人公がソビエト連邦が開発した新型戦闘機ファイヤー・フォックスを潜入し強奪するまでを描いています。
物語の大部分は単身でソ連に潜入してKGBの追ってを逃れるもので、これはこれで見応えがある。後半の黒づくめのパイロットスーツ姿で戦闘機を奪取するシーンは、ドキドキハラハラ感があり、かなり面白い!
また、特撮が今見ると今一つなものの、音速機のスピード感は良く出ています。ソ連のエースパイロットが操るファイヤーフォックス2番機とのドッグファイトにおいて主人公の機体が失速した時、2番機に決定的な撃墜のチャンスがあったのにも拘らず攻撃せずに失速回復を待ち、再びドッグファイトを挑んでくるなど、イーストウッドは、彼の往年の西部劇とも共通するフェア精神も込め、政治家の対立と対照させています。
後にイーストウッドは、「この2人は、異なった状況にいたら友人になれただろう。」と述べています。このシーンもかなり好きで、リピートで鑑賞したくなる映画。
※本作の主役メカであるソビエト空軍の架空の新型戦闘機で、実在するMiG-31 フォックスハウンドとは無関係。マッハ6という最高速度をはじめ、東西陣営の軍事バランスを大きく損なうスペックを持つ。完璧なステルス性、パイロットが思考するだけで各種ミサイルや航空機関砲などの火器管制が行える思考誘導装置を有しており、スイッチや操縦桿やボタンを使用するよりも迅速かつ的確に操作できる。この思考誘導装置はロシア語にしか感応しないBMI技術で動作制御するものであるため、「ロシア語で考えろ」という台詞もそれを示したものである。開発はモスクワ東方1000km付近にあるビリャースク基地にて行われていた。名称からミグ設計局製の機体と思われる。
クリップドデルタ翼を持つ無尾翼機で、長い機首に可変後退機能を持つカナードを有する。推力50,000ポンドのエンジンを2基装備し、高度12万フィートでも戦闘が可能な性能を持つ。機関砲は2基を胴体下部に、ミサイルは胴体内のウェポンベイに装備。また、パイロットは与圧服を着用する。劇中には1号機と2号機が登場し、開発に関与していたパラノヴィッチ博士やセメロフスキー博士の助けを得てミッチェル・ガントが強奪した1号機を、正規パイロットであるヴォスコフ中佐が操縦する2号機が追跡した。
劇中、ファイヤーフォックス1号機がミサイル巡洋艦から発射されたミサイルの撃墜や2号機を撃墜する際に機体後部から発射したものはミサイルではなく、対ミサイル妨害装置のフレアである。しかしながらイーストウッド扮するガント自身は劇中終盤、「rearward missile」=「後部ミサイル」と呼んでおり、字幕、TV吹替共に「後部ミサイル」と訳されている。そのため、「なぜ1号機と2号機は後方につかれたときにすぐ使わなかったのか」という矛盾を生んでいる。劇中中盤、バラノヴィッチ博士は機体の装備の説明時、「rear defence pod」=「後部防御装置」と言っており、「炎の爆発によってミサイルを倒す」と英語では説明している(日本語字幕ではここもミサイルとしてしまっている)。ガントの「rearward missile」の発言は、執拗に追尾する2号機に対し「後ろ向きに発射出来るミサイルはないのかよ?」とぼやいただけで、日本語字幕の「後部ミサイルを発射しろ」は誤訳である。2号機が撃墜された正しい理由は、ガントが苦し紛れに放った1号機のフレアを偶然エアインテークに吸い込んでしまったからであり、原作と続編である『ファイアフォックス・ダウン』において詳しい説明特がなされている。
ファイヤーフォックス あらすじ(ネタバレ)
ソビエト連邦が、それまでの戦闘機を凌駕する高性能な新型戦闘機「MiG-31 ファイヤーフォックス」を開発したとの情報がNATOにもたらされる。これに衝撃を受け、軍事バランスが崩れることを恐れたNATO各国は対抗すべく戦闘機の開発を検討するが、間に合いそうもない。そのため、その技術を機体もろとも盗み出すことを決定し、ロシア語をネイティブで話し、考えることができる元米空軍パイロット、ミッチェル・ガントに白羽の矢を立てたのであった。
ガントはヘロインの密売人に変装してソ連に入国し、協力者のウペンスコイと接触する。ウペンスコイはガントが成りすましていた本物の密売人を殺害してKGBを撹乱するが、ガントが駅構内でKGB職員を殺害してしまい、二人は騒ぎが起きる前に駅を脱出する。ガントはウペンスコイの相棒に成りすましてMiG-31の開発者バラノヴィッチ博士がいる基地に向かうが、既にウペンスコイの相棒はコンタルスキー大佐の部下に逮捕されており、彼は二人を尾行するようにKGBに命令する。ウペンスコイは途中でガントを車から降ろしてKGBを引き付け、ガントは基地に潜入してバラノヴィッチ夫妻と接触する。バラノヴィッチから明日MiG-31の飛行訓練が実施されることを聞かされ、彼がMiG-31の二号機を爆破する間に一号機を奪取するように助言される。
ガントは、MiG-31パイロットのヴォスコフ中佐からパイロット・スーツを奪い奪取の準備を進めていたが、ガントの正体がアメリカのスパイだと気付いたコンタルスキーは基地内の捜索を開始する。しかし、直前になって書記長が飛行訓練の視察に来ることが判明して、基地内は対応に追われる。バラノヴィッチが予定通りに二号機を爆破するが、直後に夫妻は射殺される。その混乱の中、ガントは一号機を奪い脱出し、基地の周辺で脱出を見届けたウペンスコイは拳銃で自決する。
MiG-31を奪われた書記長はウラジミロフ将軍に追跡を命じ、復旧した二号機に乗り込んだヴォスコフが出撃する。ガントは手筈通りに飛行経路を偽装して追跡の目をくらまして北極海に向かい、氷原を滑走路代わりに潜水艦から給油を受ける。一方、ウラジミロフはガントの作戦に翻弄される書記長を説得して、ヴォスコフはガントを追い北部に向かう。給油を終えたガントはソ連国外への脱出を図るが、ヴォスコフが追い付きドッグファイトを展開する。ガントはヴォスコフの二号機を撃墜することに成功し、無事に国外へと脱出する。
ファイヤーフォックス スタッフ
製作・監督 :クリント・イーストウッド
原作:クレイグ・トーマス
脚色:アレックス・ラスカー,ウェンデル・ウェルマン
撮影:ブルース・サーティース
音楽:モーリス・ジャール
協力:アメリカ国防総省,アメリカ空軍,アメリカ海軍,アメリカ海兵隊
提供:ワーナー・ブラザース,マルパソカンパニー・プロ
ファイヤーフォックス キャスト
ミッチェル・ガント:クリント・イーストウッド
ケネス・オーブリー:フレディ・ジョーンズ
バックホルツ:デイヴィッド・ハフマン
パヴェル・ウペンスコイ:ウォーレン・クラーク
セメロフスキー:ロナルド・レイシー
コンタルスキー大佐:ケネス・コリー
ウラジミロフ将軍:クラウス・ロウシュ
ピョートル・バラノヴィッチ博士:ナイジェル・ホーソーン
書記長:ステファン・シュナーベル
ユーリ・アンドロポフKGB議長:ヴォルフ・カーラー
ブラウン将軍:トーマス・ヒル
ラニエフ少佐:クライヴ・メリソン
ヴォスコフ中佐:カイ・ウルフ
ナタリア・バラノヴィッチ博士:ディミトラ・アーリス
ウォルターズ:オースティン・ウィリス
シーアバッカー艦長:マイケル・カリー
フライシャー海軍少佐:ジェームス・ステイリー
ロジャース将軍:ウォード・コステロ
クトゥゾフ空軍元帥:アラン・ティルヴァーン